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上場が維持されたオリンパス株

2012年3月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

長年にわたる損失隠しが明るみにでたオリンパスの株式が特設注意市場銘柄に指定され、上場は維持されることになった。東証の判断自体は不当なものとは言えないが、今後、制度の改善が求められる点もある。

特設注意市場銘柄への指定

 金融資産の運用失敗で抱え込んだ多額の損失を隠蔽してきたことが明るみに出たオリンパスの株式が、2012年1月20日、東証の特設注意市場銘柄に指定された。東証の規則は、「有価証券報告書等に虚偽記載を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認める場合」は上場を廃止すると定めているが、オリンパスのケースは、この規定に抵触しないと判断され、上場が維持されることになったのである。
 特設注意市場銘柄制度は、2007年11月に導入されたもので、上場廃止基準に該当する恐れがあると認められた後、最終的には該当しないものと判断された場合等で、内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められる場合に指定される。この指定を受けると、1年ごとに内部管理体制の状況等について記載した内部管理体制確認書を東証に提出しなければならず、指定から3年を経過しても改善の見込みがない場合には上場が廃止される。
 これまでに下の表に示す10社(オリンパスを除く)が指定を受け、そのうち3社は内部管理体制等が改善されたとして指定を解除される一方、5社は経営破綻や買収等で上場廃止となっている。直ちに上場廃止とすべきほどには重大な影響を及ぼしたとまでは言えないが、虚偽記載を行った、いわばグレーな会社に内部管理の改善を促すための仕組みと言ってよいだろう。

東証の判断は不当でない

 オリンパスによる損失隠しは、同社が内視鏡など医療用光学機器では世界のトップシェアを占める有名企業であることに加え、日本の上場企業では珍しい英国人社長が、この問題を追及しようとして就任半年後に突然解任されたという発覚の経緯から、社会的にも大きな注目を集めた。
 それだけに、同社の株式は上場廃止となっても不思議ではないといった見方もなされ、特設注意市場銘柄への指定という東証の判断に対しては、批判的な意見もみられる。
 過去には、西武鉄道、カネボウ、ライブドアなどが、虚偽記載を行いその影響が重大であるとして上場廃止となっている。他方、日興コーディアルグループやIHIは、かなり大きな金額の虚偽記載を行ったが、上場が維持された。
 こうした過去の事例をみると、西武鉄道とカネボウの場合は、虚偽記載がなければ上場廃止となっていたはずという事情があった。また、ライブドアは、経常赤字を黒字と偽っていた上、大規模な株式分割を行っていたことで、虚偽記載発覚後の取引急増により、東証の取引システムが停止しかねない事態を引き起こした。
 これに対してオリンパスの場合、経営トップが損失隠しを主導したことや長期にわたって継続していたことなど悪質な面がある一方で、利益水準や業績トレンドを長期的に見誤らせるといった重大な影響は及ぼさなかったと言える。今回の東証の判断は、決して不当なものとは言えないだろう。

今後の検討課題

 もっとも、虚偽記載の重大性という上場廃止基準をめぐっては、不明確だといった批判も根強い。少なからぬ事例の積み重ねにより、東証の判断基準はかなり明確になってきているとも言えるが、上場廃止決定に対する不服申立制度の創設など、より納得性を高めるための工夫が必要かも知れない。
 また、特設注意市場銘柄制度についても、一部指定銘柄が指定の対象となった場合にはTOPIXの算出対象から除外するなど、より制裁的な要素を強めることも検討に値するのではないだろうか。オリンパスの場合、1千万円の上場契約違約金を科されたが、この点についても、1千万円という固定金額ではなく、事案の悪質性に応じてより大きな金額を科すことを検討する余地がある。
 ちなみに、今回のオリンパスをめぐっては、一部の外国人機関投資家から虚偽記載による上場廃止はグローバル・スタンダードから外れているといった主張がなされ、上場維持を求める意見が寄せられた。確かに上場廃止は現在の株主に不利益を蒙らせるが、問題企業の上場廃止は将来の投資家を保護するための措置である。海外の取引所の上場廃止基準では取引所による幅広い裁量が認められ、虚偽記載も廃止理由となり得るのが実態である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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