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混ぜるな危険!

2012年2月号

須貝悠也

 バレンタインデーの時期である。日本では女性が男性にチョコレートなどを贈る習慣があるが(※1)、一方でホワイトデーに3倍返しでお礼をすべしという風説も囁かれる。これを“そうか”と鵜呑みにする前に、次の問題が意味するところを考えてほしい。
  「3人で食事をしたところ、料金は3万円であった。3人はそれぞれ1万円を支払ったが、会計係は料金に誤りがあり、正しくは2万5千円である事に気付いた。そのまま5千円を返せばよかったのだが、魔が差した会計係は2千円を懐に入れ、残りの3千円を3人に返した。ここで状況を整理すると、結局客の3人は各9千円支払った事になるので、合計2万7千円。これに会計係が盗んだ2千円を足すと、2万9千円。さて、残りの1千円はどこに消えた?」
 これを一読して“おや、確かに…”と思ってしまう人も少なくないようだ(筆者も当然その一人であった)。無論、少し考えれば分かる通り、この問題にはまやかしがある。これは当初支払われた3万円の内訳を考える問題だが、まず(A)「料金を支払った3人の客」の立場で考えてみよう。この時、3万円の内訳は「請求された料金2万7千円+返金された3千円」となり、おかしな点は何もない。次に(B)「料金を受け取った店」の立場で考えると、内訳は「飲食代の正しい料金2万5千円+会計係が盗んだ2千円+返金した3千円」で、ここにもおかしな点は見当たらない。こうして考えると、問題文は「請求された料金2万7千円+会計係が盗んだ2千円」となっていて、(A)(B)双方の立場の考え方をごちゃ混ぜにしている事が分かるだろう。混ぜてはいけない2つの異なる立場を混ぜ合わせてしまったために、不条理な結論が導かれてしまった訳である。
 以上の話から1つ教訓を得るとすれば、「物事を考える際、基準とする立場とは異なる立場の考え方が混じっていないか注意を払うべし」という事だろう。こうした考え方の誤謬を犯してしまう事は、実のところ少なくないのかもしれない。例えば「過去のデータを用いた実証分析から、投資手法Xを10年間続けると高確率で高いリターンを得る事ができる」という話があったとしよう。もし、ここであなたが“半年間だけこの手法を試そう”と考えるならば、投資手法Xが拠り所とする(A)「10年間費やして投資する」という立場と、あなたの(B)「半年間だけ投資する」という立場とを混ぜ合わせてよいのかどうか、今一度検討してみるべきかもしれない。
 最後に冒頭の話に戻ろう。さて、(A)3倍返しを考えた人と(B)ホワイトデーの贈り手、彼らは果たして「同じ立場」なのだろうか?

(須貝悠也)

1) 最近では逆に男性が女性に贈り物をする「逆バレンタインデー」なる風習が生まれつつあると聞く。今後の動向に注意されたい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

須貝悠也Yuya Sugai

金融デジタル企画一部
上級コンサルタント

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