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決済セミナー報告 証券決済制度改革2014 -進む“国際標準化”と“決済リスク削減”への取り組み-

2012年1月号

グローバルソリューション事業部 鈴木那津子

 野村総合研究所グローバルソリューション事業部は、去る2011年11月18日に「証券決済制度改革2014」と題し証券決済に係るお客様向けにセミナーを開催し、48金融機関、72名のお客様にご出席いただいた。
 当該セミナーでは、この分野の第一人者として知られる3名の講師をお迎えし、今後の決済制度改革に向けた最新の取り組みについてご講演いただいた。また、セミナーの途中では、お客様同士、または講師とお客様との交流の時間を設け、情報交換の場として役立てていただいた。本紙面では、それぞれの講演概要を紹介する。

講演1 証券決済改革第2ステージに向けて

麗澤大学 経済学部教授 中島 真志氏

 2000年の金融審議会の報告書に始まった証券決済制度改革の第1ステージは、2009年の株券電子化で一段落した。この第1ステージにおいて、“法制度の整備とペーパーレス化の進展”“清算機関(CCP)の整備”“DVP決済の進展”“決済照合システム導入による証券STP化の進展”という4つの成果を挙げることができた。
 第1ステージ終盤の2008年秋、リーマン・ショックが起こったが、そのことをきっかけに証券市場は3つの教訓を得ることになる。1つ目は、“未決済残高”は常に最小限に留めておくべきということであり、決済サイクルを短縮化することが有効であることがわかった。2つ目はCCP機能の再評価であり、CCPのカバレッジを広げる必要性があるとの認識が高まるとともに、OTCデリバティブへのCCP利用の義務付けの動きが国際的に広がってきている。3つ目はDVP決済は必須ということであり、DVP決済が実現していない貸株取引に注目が集まった。
 以上を踏まえ、証券決済制度改革第2ステージの方向性を整理すると、次の4点となろう。1点目は決済リスクの削減を目的とする「国債の決済期間の短縮化」である。まずは「T+3からT+2への移行」その次に「T+2からT+1への移行」と二段階での対応が検討されている。2点目は、CCPカバレッジの拡大を目的とする「信託銀行のJGBCC(日本国債清算機関)への参加」で、2014年前半をめどに計画されている。3点目は、DVP決済が実現していない貸株取引のDVP決済実現である。4点目は、クロスボーダー証券決済の円滑化を目的とする、証券保管振替機構の取組みである。
 2014年から2015年にかけてが、第2ステージの改革のヤマ場となるものとみられる。各市場参加者は、ここにしっかりと対応していく必要がある。

講演2 国際標準化決済リスク削減に関する保振の取組み

証券保管振替機構 ポストトレードサービス部長 海野 俊一郎氏

 証券保管振替機構(保振)では、現在、国際標準化と、貸株取引にかかわる決済リスクの削減に取り組んでいる。
 日本の証券市場がグローバルに対応するには、対日証券投資の効率性向上、アクセシビリティ向上とコスト削減が必要である。そこで保振では、国際標準フォーマットとしてISO20022、ネットワークとしてSWIFTNetの導入を計画している。今後の予定としては、2012年1月に接続仕様書を公表し、2014年1月末に決済照合システム、各振替システムともにISO20022準拠のXMLメッセージ、およびSWIFTNetを導入する。2014年から2019年までの5年間で現行の統合チャネル系のインターフェースを廃止し、一方ファイル伝送は2019年以降も継続して提供される。
 DVP決済導入について合意に至っていなかった貸株取引については、リーマン・ショックによって認識が変わり、現在急ピッチでDVP化に向けて議論が進められている。貸株取引専門部会では、「同時履行方式」と「個別取引単位のDVP決済方式案」という二つの案を議論し、それぞれの課題を吟味した結果、後者をベースとしつつ前者の利点を融合させた方式が選択された。これは貸借株式と担保の決済に一般振替DVPの仕組みを利用するもので、一件ずつ決済を行う方式である。一件ずつのDVP決済金額は保振側で自動的に計算するが、これを積み上げた額に、現行の市場慣行に基づく担保異動額を反映させることができる仕組みとした。また担保も現金のみでなく、株式や国債など証券を利用できるようにする。
 グローバルな市場間競争が厳しさを増すなか、こうした取り組みは日本の証券市場の生き残りをかけた重要施策と考えている。

講演3 国債決済期間短縮化の検討について

大和キャピタル・マーケッツ グローバル・マーケッツ業務部担当部長 (国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ主査) 吉田 聡氏

 日本の国債市場の活性化、国際競争力強化を実行するために国債の決済期間短縮化が進められている。取引から受渡までの期間を、現在の3日から2日に短縮するアウトライトT+2(GCレポT+1)化について、まずは2012年4月23日約定分から実現する予定である。この対象としては主要な市場参加者間の取引を想定しており、リテール向け取引や、非居住者取引は対象外である。
 T+2を実現するためには、約定照合および相対ネッティング照合の迅速化が必要となる。現状、証券会社や銀行との間の取引においては、保振照合システム(PSMS)やJGBCCの利用によりSTP化が進んでいる。しかし一方、証券会社と機関投資家との間の取引においては、FAXなどによる通知が残っている部分があり、これらの事務プロセスのSTP化、事務慣行の標準化が急務である。
 約定照合の電子化としては、本来保振PSMSの利用が望まれるが、PSMSのレポ取引対応が2014年予定のため、それまでの暫定対応としてFAXの代わりに電子メール等による電子データの授受が予定されている。
 ネッティング照合通知は、ペアオフ・異額面両方に対応したフォーマットを策定し、2011年6月にRTGSガイドラインの改正とともに標準化の取扱い指針を公表している。

 アウトライトT+1(GCレポT+0)化についても議論が進められている。実現はハードルが高く、まだ課題も多いがリーマン・ショック以後、欧米でも環境整備が一層進展している。日本もアウトライトT+1(GCレポT+0)化を効率的なインフラ基盤を構築するラストチャンスと考え、業界を横断した形で改善していく体制づくりが必要である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

鈴木那津子Natsuko Suzuki

証券ホールセール事業一部
上級コンサルタント
専門:フィクストインカム・為替に係るIT サービス

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