1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 中国金融市場
  6. 中国における銀行の保険窓販の動向

中国における銀行の保険窓販の動向

2011年9月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

中国における銀行の保険窓販は不適切販売や販売ルート確保のための賄賂といった問題を抱えてきた。最近では消費者の利益保護のための規則が発表される一方、保険の販売ルートをさらに拡大する動きもある。

銀行の保険代理業務における潜在的リスク

 銀行の保険代理業務(銀行による保険商品の窓口販売)は、中国においても銀行の自己資本規制が厳しくなる中で、中国の銀行にとって安定した手数料業務として重要になりつつある。2008年の「銀行・保険の協力と業界を跨ぐ監督管理の協力の強化に関する了解覚書」(※1)により銀行と保険会社は相互に(持分)投資することが可能になり、過去2年間、銀行による保険会社の買収が進んでいる(図表1)。保険会社にとっては、銀行の窓販を通した銀行顧客へのアクセス増が期待できる。
 このように銀行の保険窓販は銀行・保険会社双方にメリットがあるが、消費者保護の点から、中国でも長年にわたり様々な問題が指摘されてきた。具体的には、保険商品を銀行の商品(貯蓄預金等)のように装って販売したり、リスクの説明が不十分であるといった不適切販売が挙げられる。また、保険会社が銀行の販売員に手数料を直接支払うことが多く、保険会社としては銀行に販売ルートになってもらうために高額の手数料を支払い(※2)、銀行側は手数料収入を隠蔽するといった賄賂につながる問題もある。
 保険購入者の裾野が広がるにつれて、こうした問題に手を打つ必要が強まっている。規制当局である銀行業監督管理委員会(銀監会)と保険監督管理委員会(保監会)の動きを見ると(図表2)、2010年1月に保監会・銀監会が連名で「銀行の生命保険代理業務の構造調整強化による銀行の生命保険代理業務の健全な発展の促進に関する通知」を発表し、11月には銀監会が「商業銀行の保険代理業務の合法的販売及びリスク管理の更なる強化に関する通知」を発表している。
 11月の通知では、①商業銀行の各支店において、顧客に保険商品を直接販売する者は、保険代理従業人員資格証書を持つ銀行の販売員でなければならず、商業銀行は保険会社の社員を銀行に駐在させてはならないこと、②商業銀行の各支店が業務提携できる保険会社数を原則3社までにすることが定められた。
 2011年3月には、これらの通知の内容を一部受け継いだ形で、「商業銀行の保険代理業務の監督管理手引」が発表された。この手引は消費者の利益保護の立場から作られており、主な内容は以下の通りである。
 第一に、顧客サービスを安定させるため、銀行(の一支店)と各保険会社の提携期間は1年以上でなければならない。
 第二に、保険代理業務を行う各銀行支店は、保監会の発行する「経営保険代理業務許可証」を保有しなければならない。また、販売員は、上述の2010年11月の通知の条件を満たし、さらに投資連結保険(変額保険)を販売する者は、少なくとも1年以上の保険販売経験を有し、最低40時間の専門的訓練を受けなければならない。
 第三に、保険会社と銀行における保険業務代理の契約は、原則的に本社間で結ばなければならない。
 第四に、保険会社の銀行に対する手数料の支払いについては、保険会社の一級支店が銀行の一級支店(※3)(或いは少なくとも二級支店)に統一して振込まなければならない。また、保険会社は銀行に対する手数料を簿外で取り扱ってはならない。さらに、保険会社の社員も銀行及び銀行員に対して業務提携の契約以外の利益を提供してはならない(※4)。銀行及び銀行員も契約以外の利益を要求してはならない。これらは、言うまでもなく賄賂を防止する措置である。
 第五に、銀行は保険商品の複雑さに応じて販売する場所を分けなければならない。特に、変額保険は銀行の貯蓄商品のカウンターで販売してはならない。また、あたかも銀行が売り出しているような文言や預金・利息といった概念を使用してはならない。これは、銀行預金等と混同するような売り方を避けるためである。
 第六に、保険会社は、合理的な手数料等を定めなければならない。むやみに規模のみを追求して価格競争の悪循環に陥ることを避けるためである。
 第七に、保険会社と銀行は責任の区分を明確にして、相互に責任転嫁することを避けなければならない。

第八に、監督管理面で保監会と銀監会は、銀行の保険代理業務に関して交流を強化することになっている。縦割り行政の弊害を防ぐためと思われる。

今後の展開

 銀行の保険窓販に対して以上の改善策が打たれる一方で、保険の販売ルートをさらに拡大する動きも見られる。
 2011年4月に保監会は「保険会社の金融機関への保険業務代理委託に関する監督管理規定」の草稿(※5)を発表した(7月下旬時点で正式規定は未発表)。これは、銀行・証券会社等、保険会社以外の金融機関の保険代理業務に関する規定である。保険窓販に銀行以外の他の金融機関が参入することで、手数料引下げ競争や賄賂といった問題の改善につながることが期待されている。一方、ブローカレッジ業務依存からの脱却を目指している証券会社にとっては、手数料を得られる業務が増えることになる。

1) 銀行業監督管理委員会、保険監督管理委員会発表。
2) 代理手数料の基準には、保険期間が5年間で保険料一括払いの場合は保険料の3%、分割払いの場合2.5%、等がある。(『中国保険用語辞典』保険毎日新聞社 2008年)
3) 一級は省レベルの支店、二級はその下の市レベルの支店。
4) 具体的には、現金、有価証券、費用立替、旅行提供等が挙げられている。
5) パブリックコメント募集用の草稿。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

このページを見た人はこんなページも見ています