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球の展開図

2011年8月号

中田貴之

 今季のプロ野球は、低スコアの試合が極端に多い。これは今季より採用された統一球、俗に「飛ばないボール」と呼ばれている球のためだと言われている。球技においては、利用する“球”の性質が勝負を大きく左右する。昨年、南アフリカで開催されたサッカーのワールドカップでも、“球”の性質が議論となったことは記憶に新しい。
 サッカーボールは皮(パネル)を繋ぎ合わせて製作するため、球の展開図が必要となる。しかし、球の完全な展開図は存在しない。そのため、一般的なサッカーボールは、切頂二十面体と呼ばれる正五角形(黒色の部分)と正六角形(白色の部分)からなる立体に空気を入れることで球に近づけるという手法をとっている。「球をつくるための展開図」として、切頂二十面体の展開図を疑似的に利用したというわけである。昨年のワールドカップで利用された球「ジャブラニ」は、球をつくるための展開図にさらなる工夫を施すことで、これまでの球と比較してより真球に近い形状をしている。それゆえ、空気抵抗が従来と比較して小さくなり、蹴ったボールが予想外の変化をしてしまうことで話題となった。
 球の完全な展開図が存在しないことは、地球の展開図である世界地図に多くの種類があることからもわかる。世界地図の図法は、よく知られているものだけでも10種類以上存在する。これらはいずれもある前提のもとで展開(投影)されており、前提から生まれる特徴を活かして利用される。これらの世界地図はそれぞれ「球を利用するための展開図」であると言える。一般的な世界地図である、経度の線と緯度の線が直行し升目のようになっている地図はメルカトル図法にて作成されている。ある地点での角度が地図上でも同じ角度で表現されるという特徴を持つため、船の航行のための地図として利用できる一方、高緯度の地方は地図上で拡大して表示されているため、面積の比較には利用できない。
 このように多様な表し方があることは、どこかリスク管理に似ていないだろうか。リスク管理においてもたくさんの指標があり、それぞれリスクの性質に応じた前提と利用目的があった上で、使い分けがなされている。球の完全な展開図がないように、リスク管理も一つのリスク指標ですべてを表すことはできない。前提と利用目的に沿ってそれぞれの指標を活用することが肝要である。
 ところで、実は地球は完全な球ではないことはご存知であろうか。地球の半径は赤道まわり(横)の方が極まわり(縦)と比較して20km程度長い。地球は、ごくわずかに上下につぶれている「みかん型」なのだ。

(中田 貴之)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

中田貴之

中田貴之Takayuki Nakata

資産運用グローバル事業部
上級コンサルタント

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