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富裕層の投資ニーズ拡大で注目される中国サンシャイン・ヘッジファンド

2011年8月号

NRI香港 コンサルタント

中国ファンド業界では従来は公募ファンドが主流であったが、ここ数年は私募ファンドに関する法整備が進み、様々なプレイヤーの参入が見られる。富裕層を中心とした顧客の投資ニーズを受けて、私募ファンドの資産運用額は著しく伸びている。

中国のファンド業界

 中国の資産運用ビジネスを、投資商品の形態で分類すると、投資一任とファンド運用に分けられる。投資一任は社会保障基金や年金による運用委託で、その運用額は全体の約1割に留まる。残る9割をファンド運用が占め、中国資産運用ビジネスの主流となっている。
 ファンド運用には、公募ファンドと私募ファンド(※1)がある。公募ファンドは証券投資基金と称されており(※2)、ファンド運用会社によって提供されている。株、債券、海外証券などに投資できるが、エクイティ・ファンドが約7割を占め、投資戦略はインデックス投資が多い。投資家層の内訳を見ると、リテール投資家が9割で、残る1割は保険会社を中心とした機関投資家となっている。
 公募ファンドは、商品の提供が開始されて以来、順調な成長を遂げ、9割超を占めるオープン・エンド型ファンドの運用残高は既に世界のトップ10入りを果たしている。2010年末時点で3,640億ドルに達し、日本における投信残高の約半分に相当する規模である。2010年から中国政府による資産運用業界拡大に向けた規制緩和の措置(※3)が取られており、今後は商品認可の迅速化に伴う運用商品拡大により、更なる運用残高の増加が期待される。
 一方、私募ファンドの運用残高は2010年末時点で566億ドル、公募ファンドの15%程度とまだ規模は小さいが、2011年の予想成長率は+90%と高い成長性が見込まれている。これらのファンドは絶対リターン追求型で、株式市場が停滞した2010年から投資ニーズが高まっている。特に直近数年で関連法が次々と制定され法的整備が進むに伴い、富裕層顧客を中心に運用資産額が拡大している。

私募ファンドの提供者と商品形態

 私募ファンドの提供プレイヤーは、①ファンド運用会社、②証券会社、③信託会社、の3つである。各々が違う規制法に基づくため、提供商品の詳細要件が異なっている(図表)。
 ファンド運用会社は、公募ファンドの他に、分離保管口座(Segregated Account)を設定し(※4)、顧客のニーズに基づく運用サービスを提供できる。公募ファンドと似た投資戦略だが、裁定取引などを用いアルファ・リターンの獲得を目指している。2010年時点で、34のファンド運用会社が151本のファンドを提供している。一方、証券会社は、複数顧客に向けた集合資産管理業務(※5)を行うことができ、投資目的および最低投資金額に応じて、集合理財、小集合理財、定向資産管理(※6)の3種類が設定されている。集合および小集合理財は、3~5年満期のクローズド・ファンドが多く、ファンド運用会社に比べて戦略の自由度がより高くなっている。また、信託会社は、集合資金信託業務(※7)を提供している。ファンド・マネージャーは、信託会社が持つ口座を通じて、私募ファンドの資産管理および証券投資を行うことができる。
 これらの私募ファンドは、株式や債券への投資制限が公募ファンドに比べて緩やかで、ファンド・マネージャーのフィーが運用パフォーマンスに連動していること等から、絶対リターンへのニーズが高い富裕層から運用資金を獲得することに成功しているように見える。特に、3タイプのプレイヤーが提供するファンドの中で、信託会社を活用した私募ファンドが最も運用額を伸ばしている。

急成長する信託会社の私募ファンド

 信託会社を活用した私募ファンドは、通称「サンシャイン・ヘッジファンド(陽光基金)」と呼ばれており、政府監督局に登録され、情報開示も行われている。中国では従来から、ファンド・マネージャーが知人の資金を集め、私的に資産運用するアンダーグラウンド・ファンドが多く存在してきた。それに比してサンシャイン・ファンドは、法整備が成された信託会社を活用して設定されており、信託会社が提供するプラットフォーム上では陽光(サンシャイン)が見えるという意味から、この名前がついたと言われる。投資戦略はエクイティのロング・オンリー型が大半を占めており、欧米のヘッジファンドによく見られるエクイティ・ロング・ショート戦略やレバレッジを効かす投資戦略とは異なる。しかし、ファンド運用会社の分離保管口座や証券会社の集合理財では、単一株式への投資が運用額の10%以内に制限されているのに対し、サンシャイン・ファンドではそうした投資制限が一切ないことから、ヘッジファンド「的」な運用がなされているとして、サンシャイン・ヘッジファンドと呼ばれるようになっている。
 ここ数年、ファンド運用会社で公募ファンドを運用していたファンド・マネージャーが高いフィーに魅力を感じて独立し、サンシャイン・ヘッジファンドを設定するケースが増え、ファンド数が急増している。複数の信託口座を利用してファンド・オブ・ファンズと同様なスキームを持つトラスト・オブ・トラストの設定も増えている。この信託会社を活用した私募ファンドの運用資産額は、2009年時点で62億ドルだったが、2010年末には186億ドルと3倍に拡大しており、2013年には460億ドルを超えるとの予測も聞かれる。
 このようにサンシャイン・ヘッジファンドが急速に運用額を拡大させていたことから、株式市場に及ぼす影響を懸念した中国証券監督管理委員会(※8)が、2009年8月に信託会社による新規口座開設を凍結した。しかし一方で、信託会社自体の監督権限は中国銀行監督管理委員会(※9)にあり、監督体制は複雑である。資産運用業務という観点から、監督権限は中国証券監督管理委員会に統合されるべきという関係者の意見も聞かれており、今後は監督体制が整備されて法的環境が整うことが想定される。私募ファンドの監督当局を一元化し統一規制を導入することも検討されており、今後は年金など機関投資家によるサンシャイン・ヘッジファンドへの投資も期待される。

1) ①公開資金募集の禁止、②リスク許容度に応じた特定投資家に対してのみ資金拠出の募集・勧誘が可能、を満たす。
2) 証券投資基金法(2004年制定)。
3) ファンド運用会社1社による同時申請可能なファンドは2タイプに制限されていたが、2010年1月以降は、1回の認可申請時に上限6タイプの商品設定が可能となった。
4) 特定顧客資産管理業務弁法(2008年)。
5) 証券会社顧客資産管理業務試行弁法(2004年)。
6) 1顧客の最低投資金額は、集合理財で5万元(高信用・高流動性商品に投資)または10万元(投資対象の制限無し)、小集合理財および定向理財資産管理は100万元。理財は中国語で資産運用を意味する。
7) 信託会社管理弁法および信託会社集合資金信託スキーム管理弁法(共に2007年)。
8) China Securities Regulatory Commission(CSRC)
9) China Banking Regulatory Commission(CBRC)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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