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BCP(business continuity plan)セミナー報告 NRI金融・資産運用サービスの業務継続への取り組み

2011年7月号

山本由香理

 野村総合研究所(NRI)は、2011年5月25日と27日の2日間にわたって、資産運用業界、証券業界のお客様に向けに「BCPセミナー~NRI金融・資産運用サービスの業務継続への取り組み~」と題するセミナーを開催した(両日ともプログラムは同じ)。2日間で約140名にご参加いただいた。今紙面では、資産運用業界のお客様向けの部分を抜粋して講演内容を紹介する。
 当日は、金融ITイノベーション事業本部副本部長 小粥 泰樹が挨拶をしたのち、前半2コマで市場BCPについての概念、BCP策定と実効の必要十分条件についての講演を行った。後半2コマでは、NRIの資産運用関連サービスにおけるBCPと、資産運用会社がBCPに活用し得るNRIシステムソリューションについて講演を行った。

講演1 災害時における金融市場の機能維持

金融ITイノベーション研究部 井上 哲也

 災害時に民間の市場参加者、金融インフラ、金融当局のネットワークからなる「金融市場」自体の機能の維持・早期回復を目指す「市場BCP」について説明した。
  「市場BCP」のニーズは2001年の米国での同時多発テロに端を発し、その後の米国の大停電やアジアでのSAAS流行など、諸災害を経て広まった。従来の金融市場の災害対応方針は縮退が主流であったが、そうした潮流の中、平時よりも増大する金融取引へのニーズに応えることこそが、市場の役割であり、災害からの早期復興に必要であると認識されていった。
 市場BCPの実行においては、下記の点が求められる。
① 複数の関係者が参加する市場において、円滑にコミュニケーションを行うためのハードウエア・ソフトウエア両面での複合的整備。具体的には、災害時にコミュニケーションを維持する設備と、情報の収集や発信に絡む諸規則の策定。
② 個々の市場参加者によるBCPと市場BCPとの整合的な運営。そのための各関係者の組織内外にわたる「市場BCP」に関する情報の盛んな交換と共同訓練。
③ 複数の金融市場における優先度の策定。
④ 災害時の取引時間や決済日などの市場慣行の変更。限られたリソース内で円滑な取引ができるというメリットと、市場の回復を遅延させるという市場BCPの本来の目的に反するデメリットとのバランスを見極めた上での実行。
 自然災害が多い日本では、個社のBCPには先進的な取り組みもみられる。その一方で、大災害を想定するがゆえに市場BCPについては当局やインフラの対応に委ねる傾向もあった。だが市場BCPの構築には、個々の金融機関の参加が不可欠であり、各社で行ってきたBCPを、市場BCPと連携しやすいよう再構築することが活動の中心となる。
 近年は金融機関の体力が回復、東京市場の国際競争力が意識され、市場BCPの組織化が発展しつつある。
 今後は、災害時の経験や実践に基づくアプローチや、金融当局の関与を増大させたアプローチにより、市場参加者が一体になった市場BCPへの対応が、より一層求められる。

講演2 震災後の金融機関におけるリスクマネジメント

ERMプロジェクト部 能勢 幸嗣

 想定以上の広域災害となった今回の震災を通して、インフラの長期ダメージへの対応の不十分さ、想定外事象への意思決定力不足、緊急対応の訓練不足といった、現状のBCPに対する課題が明確化している。こうした現況においてBCPを見直す際に取られるべき方針と、作成されたBCPの実効性を高める方法について述べた。
 現状のBCPでは、今震災の様な長期・広域にわたってインフラに影響が及ぶシナリオの想定が不足している。長期広域災害に対応するには、下記の点について検討する必要がある。
① 本格的に復旧するまでの間、BCPが長期にわたって実施され続ける場合の対策や本番システムへの戻し手順。
② 従来優先していた、復旧目標時間の短い業務だけではなく、長期の復旧期間を要する業務までを考慮したBCPの策定。
③ 各BCP間の整合性、発動の手順などの確認。
④ 要員の確保に重点を置いたBCPに強いベンダーへの委託、社内相互バックアップ、同業他社との相互バックアップ、異なる環境下での業務二重化などの対策。
 また以上の項目の検討には、前提として、費用対効果の考慮、業務とインフラの関係の網羅的な把握が不可欠である。
 災害の規模や内容を詳細に予測するのは困難である。BCP策定には、そうした災害の種類を想定する災害シナリオではなく、災害発生により業務を支えるインフラや業務への影響を想定した被災シナリオこそが重要となる。
 シナリオに応じた発動基準により行動指針を定めるシナリオベース・アプローチには、想定外の事象には対応しきれないという限界もある。よって、発動権限者の意思決定に重きを置いたエマージェンシーレベル・アプローチでも、あわせてBCPを検討する必要がある。ここでは、想定外の事象発生時の意思決定が確実に実施されるために、緊急時の意思決定者、意思決定者の具体的な権限範囲や対象業務、情報や決定事項伝達のためのコミュニケーションルートの確立、意思決定のために必要な手順の事前の明確化などを検討する。
 また策定したBCPの実効性を高めるには、プロシージャー通りにBCP実行を確認する訓練、不備を改善するための訓練、想定外のシナリオに対する意思決定訓練、マーケットワイド訓練といった各種事前訓練が必要である。
 継続した活動としては、従来のBCP策定を基礎とし、経営の参画のもと、長期的な視点で計画のレベルアップを図ることが肝要である。

講演3 T-STAR関連サービスのサービス継続について

資産運用ソリューション企画部 丹羽 陽子

 金融市場の一旦を担い、かつ顧客の基幹業務を支える各種システムサービスの提供を、災害発生時にも維持し続けることが、NRIのBCPの基本方針である。T-STAR/TXを中心としたNRI資産運用関連システムサービスのBCPを確実化するための取り組みについて、運営・ヘルプデスクの動き方を中心に説明した。またBCP発動時に各業務に及ぼす影響、BCP発動の詳細なフロー、システムが稼働するNRIデータセンターの要件などもあわせて説明した。
 NRIではBCPの強化に際し、今震災時に認識されたリスクから特に下記三点に重点を置いて対策を検討している。
①自家発電機能を有するオフィスの利用。
②公共交通機関以外の移動手段検討。
③メール等の複数の連絡手段の確保。
 また策定したBCPの確実な実行のために、BCP訓練の実施、複数回のBCP発動に耐えうるスムーズな業務切り替え手順の検討を並行して行っている。
 喫緊の対応は今夏の電力需給対策である。電力使用制限による提供サービスの縮小を回避するために、経済産業省発表の「電気事業法第27条による電気の使用制限の発動」の決定内容に基づき、準備を進めている。
 また突発的広域停電発生時には、ヘルプデスクをはじめとする保守サービスを最優先業務とし、その影響範囲に応じて、複数のBCPオフィスへの移動を実施する方針である。

講演4 資産運用業務のBCPを構成する3要素

資産運用サービス事業一部  兼松 敏

 資産運用業界各社がBCPを構築する際の、NRIソリューションの活用方法について、業務を遂行するために必要なシステムサービス、物理的なオフィス、業務要員の3つの観点で解説した。

  まずはシステムサービス面のBCP構築については、NRI資産運用クラウド・フレームワークT-MONOLIXを活用した以下7点の実現を提案する。
① NRIセンターでのシステム集中管理・運用による複数拠点からの業務遂行。
② 複数のキャリア、接続ポイントを備えたT-MONOLIXネットワークによる業務継続。
③ 外部ネットワークとの接続ポイントの一元管理。
④ 自社内、他社間の各種帳票の電子化に伴う業務ペーパーレス化の推進。
⑤ EUC(エンドユーザーコンピューティング)によりユーザーサイドで管理するプロセスやデータベースのNRIセンターでの一元管理。それに伴う複数拠点間での業務の代行、引継の円滑化。
⑥ 複数オフィスからアクセスを行う上でのサイバー・セキュリティの強化。
⑦ NRIセンター上での、顧客固有の開発・運用環境の確保。
 次に物理的なオフィス面のBCP構築としては、大阪府堂島のNRIのBCPオフィス活用を提案した。
 堂島オフィスでは、T-MONOLIX関連の各サービスを利用した通常業務や、インターネット、FAX、電話の利用もできる他、本人認証を必要とする入退室管理等、メインオフィスと同等以上の物理的なセキュリティも確保している。
 最後に業務要員面のBCPとして、業務アウトソースサービス、BPOの活用を提案した。横浜のメインオフィス、国内バックアップオフィスに加え、中国の大連においても、基準価額算出を始めとした各種投信業務を行うNRIプロセス・イノベーションの活用により、縮退運用での一時的な主要業務代行も検討可能である。
 以上の各種サービスの複合的運用により、NRIは資産運用各社の円滑なBCP構築を支援する。

来場された方々のセミナーに関する感想抜粋

① 各講演へのコメント
● 自然災害が多く想定される日本において、どのようなBCPを準備するかは重要な問題だと感じた。
● いかにBCPの実効性を高めるかが課題である。
● 各社のBCPは市場BCPが確立されていることを前提としているので、政府や協会などのレベルで市場BCPを実行して頂くことがポイントである。
● 金融当局の緊急時に適用するルール、例外措置などの整備が必要と感じた。
● BCP見直しにおいて、経営レベルの参加や意思決定プロセスの見直しが必要であると強く思う。
● 関係会社、外部委託先との相互訓練の必要性、二重化は今後の大きな課題だと思う。
②BCPについて
■ BCP構築時に重要視するポイント(図表2)
  「データセンターでのサーバー集中管理・運営」を重要視する意見が最も多かった。重要なデータや業務の基幹システムなどを、まずは直接的被災から守るという観点でも、その後の複数BCPサイトからの業務遂行という点でも、センター集中管理が重要視されると考えられる。それに続くのが、センター管理システムを用いた業務継続に不可欠な「データセンターとオフィス間のネットワークの強化」である。震災時の電話をはじめとした各通信障害の記憶も新しく、センターに機能を集中させる場合のリスクとしてもこの点を重視する意見が多かった。
■ BCPサイトで最も重視する点
  ロケーションを最重要視する意見が多い。今回の様な大規模震災の影響範囲の広さ、特に今夏の地域的電力不足を想定した問題意識が窺えた。続いて物理的なセキュリティ、スペースの部外閉鎖性などが二次的な条件として挙げられた。
■ 合同BCP訓練に求める点
  運用会社、信託銀行など資産運用業界の市場参加者全体での訓練や、NRIの各システムサービスの複合的BCP訓練などの必要性を求める意見が挙がった。

 NRIでは今後も、資産運用会社、証券会社の皆様に役立つようなセミナーを継続的に開催したいと考えております。

※ BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画。災害・事故発生時のリスクマネジメントのことで、ここでは主にオフィスでの業務継続を実現する施策を指す。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

山本由香理

山本由香理Yukari Yamamoto

資産運用サービス事業二部
システムコンサルタント
専門:資産運用ソリューション企画

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