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震災復興と都市・インフラ再生の方向性

2011年7月号

公共経営研究室 室長 神尾文彦

高齢化・人口減少等が進む被災地域は、ネットワーク化によって都市サービスが提供できる再編が必要である。あわせて維持管理やエネルギー管理などの面で持続可能なインフラ再生が求められ、そこに民の資金や経験が活かされる。

 東日本大震災発生後3ヶ月が過ぎ、被災地の復興計画づくりが佳境を迎えている。
 宮城県は、4月11日に震災復興基本方針の素案を発表し、県の復興構想会議を立ち上げ、8月を目処に震災基本方針に基づく震災復興計画を作成する予定である。岩手県でも、6月上旬を目処に、復興ビジョン・復興計画をとりまとめることになっている。これらの構想・計画では、復興に向けたまちづくりのあり方が提言されており、これから具体化に向けた検討がさらに進むものと思われる。その中で、本稿では、少し中長期的な視点も含め、被災地域において目指すべき都市とインフラのあり方について述べたい。

ネットワーク化による高次の都市サービスの実現

 被災地は、日本の中でも、人口減少、高齢化、財政が深刻な市町村が多い。例えば、日本全体の人口は、2005年を100とした場合、2020年には96の水準と予測されているのに対し、被災地市町村は2020年時点で90を下回るという人口減少が予測されている。75歳以上人口比率をみても、今後全国水準よりも常に2%程度高い水準で推移する。また被災市町村の半数以上が、実質公債比率が全国中央値よりも高い財政難の自治体である。
 このように、今後縮小が進み、高齢化が進行する被災地の自治体をどのように再生させるべきか? 単に海沿いの集落を高台に移転させるという物理的な再生だけではなく、人々にとって安心を得られる雇用や都市サービスを提供できる街を創っていく視点が重要である。これを推進する一つの方策が、都市のネットワーク化である。被災地域をみると、三陸沿岸や福島県北部のように、宮古、釜石、大船渡、気仙沼、相馬、南相馬といった人口4~8万人の都市と、その間に5千人未満の自治体が交互に存在している。これらの市町村群をいくつかの都市圏とみなし、あたかも一つの都市として行政運営、産業誘致、都市機能集積を促すことが考えられる。例えばドイツでは、ショッピングセンターや総合病院、高等学校など、高次な都市機能を立地させる目安として、人口10万人を基準としている州が多く、まずは10万人前後をネットワーク化の一つの目標にする考え方もある。
 中小都市の再生は、東北地域全体の課題でもある。2010年時点で、東北地域の人口1万人以下の小規模市町村数は全体の31%と北海道に次いで高い。人口減少に伴い、2020年には、人口5千人以下の小規模市町村が増え、その割合が38%ほどになることが予測されている。被災地域において実現される中小都市を対象とした街づくりの実現は、東北地域、ひいては日本の地方都市再生に一つのヒントを与えることになる。

持続的なサービス提供実現する社会インフラの再生

 道路、上下水道、交通など、都市の再生を支える社会インフラについても改革が必要となる。被災地全体の社会インフラは約15兆円にのぼる。これから数年かけてインフラの復旧が進むと想定されるが、単にインフラの整備だけでなく、今後の人口減少等にも対応して、復旧されたストックが効率的・効果的に運営・維持管理されるよう社会インフラを再生する必要がある。例えば、次のような視点が考えられよう。
①広域再編・広域管理の推進 上下水道事業などは、都市圏の中心都市の浄水場や処理場を周辺市町村が活用する(管を中心都市のネットワークに接続する)ことで、効率的な事業運営を実現していく方向が考えられる。また、用水供給のみを広域の自治体(例えば県)に任せてしまう方法もある(※1)。
 事業統合を行わないまでも、ICT(情報通信技術)を用いて遠隔の施設を効率的に管理する方法もある。福井県坂井市(※2)では、市域の浄水場を一括に管理する中央制御センターを設け、職員が端末で各浄水場の運転状況を把握するシステムを構築した。公共交通の分野でも、公営バスを一方的に運行するのではなく、住民の需要(デマンド)に応じて小型タクシーを借り上げて運行する“デマンド交通”の仕組みを導入することで維持管理費も削減できる。
②需要管理を実現するシステムの導入 中長期的に潤沢な電力供給が見込まれにくい我が国にあっては、都市の生活者、企業、公的組織といった関係するすべての主体に対し、エネルギーの節約を促す何らかの仕組みが必要である。10万人規模のアメリカ・ダビューク市では、Web上で電力・ガス・水等の使用量をリアルタイムで可視化し、その節約を自主的に促すシステムが導入されており、日本にも適用できる仕組みだ。このように、どうすれば都市のサービスを低下させずに、エネルギー需要を抑えることができるかを、都市再生の目標にすることも一考だ。
③可変型インフラの導入 巨大津波を防ぐ防波堤や高層建築物といった施設・構造物を多量に整備することは、減災力を高めることができる一方で、都市のストック増加につながり、将来の維持管理費も膨らむことになる。被災地がこれから直面する人口減少、高齢化など環境変化に応じて、住宅、公共施設、供用空間などに転用できるよう、スケルトン(外装・枠組み)とインフィル(内装・仕様)を分けたインフラの仕組みを導入してみてはどうだろうか。

 以上示したとおり、復旧・整備された被災地域のインフラが、地域の大きな負担にならず、かつ、有効に活用されるためには、効率的な維持管理や、付加価値を生む経営の経験・ノウハウをもった民間企業の力が必要であり、その意味で、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)スキームを被災地に導入していく意義がある。ただし、民間企業の一方的な押し売りでは再生は進まない。経験のある自治体、資金力・技術力・運営力のある民間企業、そして地域の雇用を支える地元企業がお互いの特徴を出し合いながら、インフラの再生に取り組むことが重要である。

1) 松江市や会津若松市など地方の中核都市で検討・実現されている方策で、節水等で稼働率が低下した中核都市の浄水場を有効活用するうえでも効果的である。
2) 市町村合併を実現し現在は人口約10万人。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神尾文彦

神尾文彦Fumihiko Kamio

社会システムコンサルティング部
部長
専門:都市・社会資本政策、公的部門の経営改革

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