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リテール金融における2010年代の成長マーケット

2011年6月号

金融コンサルティング部長 上席コンサルタント 宮本弘之

40歳以上で配偶者のいない男女の人口は、当面増加を続けると予想される。成熟化する国内のリテール金融マーケットにおいて、金融機関は、このセグメントに焦点を当てた金融商品・サービスを他社に先駆けて展開すべきである。

増加を続ける40歳以上のシングル

 国内のリテール金融マーケットは、長期トレンドである人口・世帯数の減少を受けて成熟化が進んできた。これに、リーマンショックや今般の東日本大震災による突発的なダメージが加わり、個人の所得や家計の金融資産は、従来の想定以上に停滞している。
 大手金融機関は、成長の源泉を海外進出に求め、国内ではコストの削減や業務効率化に力を注いでいる。
 しかし、全体のパイが縮む中にも成長マーケットは存在する。そのひとつが、40歳以上のシングルの男女である。本稿でいう「シングル」とは、未婚、離別、死別などで配偶者のいない人のことを指す。
 日本の世帯数の将来推計によれば、2010年から2015年までの5年間に人口総数は0.5%減少する。一方で同期間に、40歳以上のシングル男性は19.4%、同シングル女性は12.3%も増加する(図表1)。
 人口が減少する中で40歳以上のシングルの男女が増えるのは、働く女性の増加、晩婚化、離婚の増加、長寿化が影響しているからである。

ビジネスチャンスは、シングル女性の将来の生活不安や遺産相続

 40歳以上のシングル男性と女性では、どちらが金融機関にとって有望なマーケットなのだろうか。
 その回答は女性である。NRIが実施した生活者1万人アンケート調査(金融編)(2010年11月~12月実施)によると、女性のシングルは、正規雇用の割合が高く、個人年収や自分で管理・運用する金融資産が多い。一方、男性のシングルは、非正規・無職の比率も高いため、全体で見ると個人年収や自分で管理・運用する金融資産が少ない傾向が見られる。
 40歳以上のシングル女性は、やりがいのある仕事を続けていて結婚していなかったり、夫の遺産で悠々自適に暮らしていることが推察できる。
 更に、シングル女性の中でも、親と同居する40代は、海外旅行、スポーツジム、エステ、コンサート、ネットオークションなどに積極的にお金を使う、消費をリードするセグメントであることが、NRI生活者1万人アンケート調査(2009年8月実施)などからわかっている。消費財やサービスのマーケットにおいてもシングル男性よりシングル女性の方が有望なのである。
 40歳以上のシングル女性に対して有望な金融サービスの機会は、将来の生活不安解消と遺産相続にある。彼女たちは、ひとり暮らしであれば自分自身が「一家の大黒柱」であるため、仕事を簡単にやめられず、ストレスがたまりやすい。また、自分の親や子どもの面倒をみる立場にあれば、生活費、子どもの教育費、親の介護費用のために資産を蓄えておく必要がある。消費が活発な40代のシングル女性も、50代に差し掛かるころには、将来の生活に対する不安が徐々に顕在化する。
 一方、60代、70代のシングル女性の多くは、自分の親や夫の遺産相続を経験し、資産面では恵まれている。この層には遺産相続の前後で、資産の管理・運用や各種手続きを円滑に進めたいというニーズが生まれる。
 このように、40歳以上のシングル女性には、シングルならではのライフステージに応じたサービスニーズが生まれる。

金融機関は、従来のライフステージにとらわれない商品・サービスの展開を進めるべき

 では、日本の金融機関は、40歳以上のシングル女性のニーズに応える金融商品・サービスを提供できているだろうか。
 女性向けの金融商品として思い浮かぶのは、2000年8月に発売されたスルガ銀行の住宅ローン「ホームローンレディース」である。残高は2006年3月末時点で792億円まで増加した。また、アフラックの女性向け医療保険「EVER(エヴァー)」は、女性特定の病気の保障を充実した終身医療保険として2002年に発売され、累計の保有契約数は2010年3月末時点で約360万件に達している。
 これらの金融商品は、必ずしも40歳以上のシングル女性だけを対象にしたものではないが、彼女たちの「将来の健康や住まいに対する強い不安」にいち早く対応し、この分野でのブランド確立に成功した例である。
 40歳以上のシングル女性向けの金融商品・サービス開発を考える際のヒントとなるのは、個人年金保険とハイタッチチャネルである。彼女たちの持つ金融資産全体に占める個人年金保険の比率は、同年代で配偶者のいる女性よりも高い。掛け捨てではなく、将来に備えつつ貯める機能が訴求しているのであろう。また、NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)によれば、40代・50代のシングル女性は、「お金のことは専門家の意見やアドバイスを参考にしたい」という割合が、同年代の配偶者がいる女性よりも高く、生活設計や資産運用の相談相手となるハイタッチなチャネルを求めていることがわかる。このことは、信金・信組、ゆうちょ銀行(郵便局)、JAバンクといった、顧客が同じ担当者と長期間付き合える地域密着型の金融機関に、工夫次第では大きなチャンスがめぐってくることを意味している。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

宮本弘之

宮本弘之Hiroyuki Miyamoto

コンサルティング事業本部
パートナー
専門:金融機関の経営戦略、プライベートバンキング戦略

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