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眠りから覚めた倉庫金融

2011年4月号

金融システム事業推進部 上級コンサルタント $name

営業倉庫が提供する商品のモニタリング機能は、動産担保融資に大きな付加価値をもたらす。眠っていた倉庫金融が目覚めたと言ってもよいのではないか。倉庫業界にとっては、物流金融を推進する大きな契機となろう。

動産担保融資に付加価値をもたらす営業倉庫のモニタリング機能

 近年地域金融機関でも着実に増加を見せている動産担保融資であるが、これは担保権者のもとに動産を常時留置できないという弱点がある。2005年から始まった動産譲渡登記制度は、登記ファイルへの記録により第三者対抗要件を具備する制度ではあるが、動産はいつでも移動させることができるという特性上、盤石な管理保全とは言えない要素を持つのが実情だ。
 今般この課題をクリアする営業倉庫を利用した一つのスキームが完成した。新聞記事等(※1)によれば、当該スキームの概要は以下のとおりである(図表1)。
  「三井倉庫は、商品の在庫量を重量や体積で測り、動産担保の量を自動で把握するシステムを開発。動産評価会社であるNPO法人日本動産鑑定の在庫評価をデータに付加する。金融機関は借入企業との間でコベナンツ付きの融資契約を締結するとともに、借入企業(荷主)と営業倉庫との三者間契約を締結する。営業倉庫は契約に従って在庫データを金融機関に送信する。借入企業(荷主)が営業倉庫に入出荷を行う中、在庫が一定量を下回る等予め定めたコベナンツに抵触する場合は、営業倉庫は金融機関に連絡し、金融機関は営業倉庫に出荷差し止めを指示して担保保全を図る。さらに、全国の倉庫をネットワーク化し、提携倉庫に管理システムを貸し出す」 この記事のポイントは、第三者である営業倉庫が担保物を適切に保管すること、営業倉庫から送信されるデータを使って与信のモニタリングができること、本スキームをウリに営業倉庫や荷主の新規開拓ができることの3点である。動産担保融資の弱点を大きくカバーし、自己査定における一般担保の要件にも適合している。これこそ営業倉庫に眠れる金融機能が目覚めた大きな出来事であるが、その理由をこれから説明しよう。

機能拡大する営業倉庫

 営業倉庫には、基本的な機能として商品保管機能、情報管理機能、物流管理機能という3つの大きな機能がある。これらの基本機能をベースに、本スキームによって営業倉庫がどのような追加的な機能を発揮することが可能なのか見ていくことにしよう。
 まず金融機関に対しては、既述のように担保物の権利保全や在庫データの送信によるモニタリングを補完する機能がある。このデータは一定時点における在庫の静態情報ばかりでなく、入出荷動向という動態情報までカバーしている。ここからデータフィービジネスが期待できる。さらに踏み込んで荷主の資金調達の相談に乗るという金融のオリジネーション機能も有望だ。金融機関との提携に留まらず、銀行代理店ビジネスや自身によるファイナンスビジネスの展開も可能であろう。
 次に荷主に対しては、上記のような資金仲介支援のほか、滞留在庫の処分仲介機能も発揮できる。在庫処分により荷主のキャッシュフローが改善すれば、そこからフィービジネスが期待できる。処分ルートや資金提供先との提携ができている場合には、一時的にせよリスクを取って自ら動産を買い取ることも可能となろう。
 他方営業倉庫のデータ管理と動産評価会社の在庫評価を組み合わせた新たな動産総合保険が開発されている(※2)。従来の動産総合保険は簿価を基準に保険金額が設定されていたが、企業の在庫は常に金額が一定しているわけではない。ここに動産評価会社の在庫評価機能を組み合わせれば、実質的な保険金額が把握できることになる。保険期間満了時に実質的な保険金額に見合った保険料で再計算すれば、保険契約者にとっては保険料の返戻を受けることも可能な割安な保険となるのである。

物流金融のハブとなる営業倉庫

 以上のように営業倉庫は上記に登場した荷主、金融機関、流通(買取)会社、保険会社のいずれに対しても大きな関わりを持ち、様々な機能提供ができる可能性に満ちている。営業倉庫が持つ様々な機能を軸に広く金融機能を提供することを物流金融と呼ぶならば、営業倉庫は間違いなく物流金融のハブとして位置づけられることとなろう(図表2)。
 営業倉庫で荷物の保管を行う部署は「倉庫番」と呼ばれ、社内では目立たない部署であったと聞くが、今後は一躍脚光を浴びる部署へ飛躍することも考えられる。また荷主と倉庫会社の関係も、従前は寄託者と受寄者という主従の関係にあったかもしれないが、上記のような機能提供によって、その立場が同等になり、さらには逆転することも考えられる。
 ところで本スキームの主役である三井倉庫の源流が三井銀行倉庫部であったことをご存じだろうか。元々担保の保管部署であった倉庫部が、倉庫会社として分離独立したのが三井倉庫なのである。明治の昔、経済の勃興期において金融機関と倉庫が深い縁で結ばれていたことを示すエピソードと言えよう。モノとカネは別れ別れになった後、長い時を経て、動産担保融資をきっかけに再び出会うことになった。まさに営業倉庫の中に眠っていた物流金融の機能が目覚めたと言える。
 このような機能に眼をつけた営業倉庫の中には、物流金融のハブとして、積極的に金融機能を発揮していく企業も現れるだろう。金融機関は放っておくと顧客の主導権を営業倉庫に奪われる可能性も十分ある。そのとき金融機関はいかなる対応策に出るべきなのか。積極的にアライアンスに取り組む考え方もあろう。金融機関の動産担保融資を含む物流金融への取り組み姿勢が問われようとしている。

1) 2009年10月30日付日経産業新聞および2011年1月13日付日本経済新聞記事参照。2011年1月13日付三井倉庫ニュースリリース参照。
2) 2010年2月20日付日本経済新聞記事参照。損保ジャパンはNPO法人日本動産鑑定と新型の動産総合保険に関する業務提携を行っている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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