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イエネコとクオンツの共通点

2011年2月号

 現在多くの家庭で飼われているイエネコは、もともと野生に暮らしていた猫が、今からわずか1万年ほど前にエジプトなどで愛玩動物として飼われ始め、イエネコとなったものである。イエネコは、人間にかわいがられ子孫を残すため、様々な工夫をし人間もその手助けをしてきた。
 イエネコの歴史は小型化の歴史である。人間に扱われやすいように、猫はどんどんその個体の大きさを小さくしてきた。さらに人間が好む美しい毛色、人なつっこさ、穏やかな性格などを遺伝的に受け継ぎ、また人間が人工的にそのような性質を受け継ぐように交配してきた。その結果、イエネコは声色を変え自分の意思通りに人間を従わせる術を手に入れた。人間に飼われながら、人間に「猫を飼わせていただいている」と錯覚させる能力にも長けている。
 このように表向きは、人間に寄り添う形で繁栄を謳歌しているイエネコだが、人間が地球上からいなくなってしまったら、すぐに死に絶えてしまうか弱い存在なのだろうか。どうもそうではないようだ。ある研究者は、人間に甘えながらも一方で野生の猫が持つ狩猟本能は全く衰えず温存させていると見ている。その結果、人間がいなくなっても鳥などを食べてしぶとく生き残るようである。人間に過剰適用する形で進化(?)してきたイエネコだが、人間には見せないハンターとしての特徴は全く退化しておらず、今でも米国のある州だけで野良猫が2億匹の動物を殺している可能性もあると報告されている。
 イエネコと同じように、金融の世界でも短期間の間に定量分析とコンピュータを武器に進化を遂げたクオンツと呼ばれる集団がいる。寄り添うものが「人間」ではなく、「コンピュータ」と「金融工学」と呼ばれる定量分析という違いはあるが、株式トレーディング、資産運用、複雑な金融商品の組成など実に様々な金融シーンに活躍の場を広げてきた。
 クオンツは、コンピュータを使って瞬時にお金を稼ぐといった面での活躍が報道されることが多いが、実は金融機関のマネジメントの根幹をなすリスク管理のような裏方の仕事でこそ、よりその真価を発揮している。金融危機後に流動性リスクの定量化を試みたり、下方リスクを管理する手法を編み出すなど、お金を稼ぐ華やかな面とは別の能力を身につけている。人間がいなくても生き残ることができるイエネコと同じように、お金を稼ぐことができなくても、何とか金融の世界で生き残れそうだ。
 しかし、イエネコと違い、クオンツはコンピュータが止まった瞬間死に絶える存在である。結局生存能力という点ではイエネコに軍配が上がりそうだ。

堀江 貞之

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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