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情報の価値を測る

2011年1月号

外園康智

 次のデータを出力する一番短いプログラムを見つけよ。① 101010101010101010101010101010②3.1415926535・・・③ 0,1,2,2,3,3,4,4,4,4,5,5,6,6,6,6,7,7,8,8,8,8,9,9,9,9,9,9,10,10,11,11,11,11,11,11,12・・・ 最初の①の答えは「10を15回繰り返して表示せよという」というプログラムが必要だ。また、②の円周率は、10行程度の数学的なプログラムで収まる。③は一見ランダムな数字に見えるので、これを出力するには、「PRINT“0,1,2,2,3,3,4,4,4,4,5,5,6,6・・・”」が必要だ。
 データに、どの程度“構造”や“価値”があるかを測るのに、そのデータを出力するプログラムを基にする考え方がある。プログラムの長さを「コルゴモロフ複雑性(※1)」、実行時のステップ数を「論理深度」と呼ぶ。
 最初のプログラムは短く、ステップ数も短いので論理深度は浅い。2番目の円周率の場合は、100万桁を計算するには異なるステップを何度も繰り返し、その過程で数億個の数字を作成するので、論理深度が深いと言える。πは多くのデータを“集約”した数字であり、自然対数eのような数字を導くことができる。プログラムが短くても論理深度が深ければ、価値は高くなる。
 一方、銘柄の日中株価データや、人の名前の画数データなどは、ほとんど“構造”を持たないように見えるので、論理深度も浅く、そこから価値ある情報を導くことは難しい。
 論文やコンサル資料の価値についても、論理深度で測ることができる。優れた資料は、多くのデータを集めた後、「結論」を表現する際にはデータを“集約”して捨てているのだ。その結論を読んだ人は、そこからさらに多くのデータや行動を導くことができる。同じ結論ならば行数は少ない方がよい。
 小説や音楽の類では、作品を要約したり、一字一句、一音一音を外すことは、全体に影響を及ぼすので、作り手からするとけしからん行為だ。要約は全体を表さず、すべてが存在して初めて作品となるので、論理深度は低いのだが、論理深度では測れない別の価値基準を持つと言える。
 ちなみに③は、素数の分布(n以下の素数の数を並べたもの)を表している。πよりもさらに深く美しいものだが、未だ謎が多い。

(外園 康智)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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