1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 金融市場
  6. 中国における証券業界再編の状況

中国における証券業界再編の状況

2011年1月号

NRI北京金融システム研究部 上席研究員 神宮健

中国の証券業界の勢力図は今後数年間で大きく変わると予想される。国際競争力のある証券会社が核となる業界再編が一段落するまでは、対外開放も本格的には進まないため、今後の業界再編の動きを良く見ておく必要がある。

中国における証券業界再編の経緯

 中国の証券業界の再編は、今後、数年間で大きく進むと予想される。
 中国証券監督管理委員会( 以下、証監会) は、2000年代に入り、証券会社の再編を進めてきた。十分な経営能力を持たない証券会社が乱立する中で、2001年以降の株価下落を受けて、02年から05年までの4年間、業界全体で赤字を記録した(※1)。危機感を持った証監会は、04年から07年にかけて証券会社を行政的に整理・再編した。その際、問題のある証券会社を優良な証券会社や他の金融機関に管理させ、後に吸収させる方法が主に採られ、約30社が整理された(※2)。
 整理・再編が一段落した2007年以降、証券行政の重点は、過去の問題処理から、リスクの事前予防・定量的指標に基づく管理・業界自主規制と会社の自己管理へ移った。具体的には、各証券会社を、純資本等を考慮したリスク管理能力を基に5分類・11級に分けて管理するものである(※3)。
 新業務・新商品も、優良証券会社から先に段階別に導入される。現在、大部分の証券会社はブローカレッジ業務への依存が大きく、手数料の引下げ競争が激しくなる中で、新規業務の展開は大きな意味を持つ。実際、2010年3月に導入された信用取引を見ても、優良証券会社から先に業務認可が下りている。このように、優良な証券会社をより強くし、経営状況の良くない証券会社を淘汰する方針が貫かれていることがわかる。

注目される「一参一控」と匯金の動向

 加えて、証監会が2008年に打ち出した「一参一控」が、業界再編に重要な役割を果たす。「一参一控」とは、同一株主が資本参加できる証券会社は2社までで、うち支配株主になれるのは1社までとするもので、同一株主が多くの証券会社の株主になることを、関連取引や利益相反の観点から禁止することが主旨である。「一参一控」達成の期限は原則的に2010年末である。
 上述した証券会社整理の経緯から、優良証券会社が傘下に他の証券会社を収めていることもあり、一部の証券会社の保有関係は複雑になっている(図表)。このため、「一参一控」が、証券業界再編を促すことになる。
 最近の動きを見ると、大手の中信証券が、「一参一控」達成のため、全体の60%を保有していた中信建投証券の株式のうち53%分を売却する予定であり、11月時点で、北京市の機関への45%分の売却が決定している(※4)。
 なお、株式を売却する以外にも、親子証券会社間で営業地域をすみわけることで「一参一控」を達成しているケースもある(※5)。
 図表からもわかるように、中央匯金投資有限責任公司(以下、匯金)傘下には、有力証券会社が集まっていることから(※6)、匯金の「一参一控」が今後の業界地図に大きな影響を与える。ここで、匯金と建銀投資の「一参一控」の達成期限は、特例により2013年になっていることに注意が必要である。これら2機関は、上述の証券会社の整理期間に、当局の意図を受け政策的に、多くの証券会社に資本注入して株主となった事情が考慮されている。見方を変えれば、2013年という達成期限は、今後3年間で証券業界再編が相当進む可能性を示唆している。
 足下でも、匯金が関連する「一参一控」の動きがある。匯金傘下の国泰君安証券と申銀万国証券は、上海市の「上海国際集団」の傘下証券会社でもある。そして、匯金と上海国際集団が各々の「一参一控」達成の一環として、両者の間で両証券会社の株式を交換し、上海市側が国泰君安証券会社を保有し(匯金は撤退)、匯金が申銀万国証券を保有する方向で話が進んでいると報じられている(※7)。

「金融国資委」や金融コングロマリット化の動きにも注意

 今後の動きを見る上では、以下の点にも注意が必要である。一つは、今まで国有資産管理委員会(国資委)の管理下になかった国有金融機関についても、統一的な管理機関(金融国資委)を作って管理しようとする考えで、過去においても何度も浮上している。もしも、これが動きだせば、匯金のあり方等に大きく影響する。
 もう一つは、中国における金融コングロマリット化(「綜合経営」)の動きである。中国でも、金融商品・サービスが多様化する中で、金融業態間の垣根や縦割り行政が見直されてきている。今後の証券業界再編については、単に証券業界のみならず、より広い視野からも見なければならない。これらの要因に加えて、地方の証券会社を擁する地方政府の戦略的意図も再編に絡んでくることは言うまでもない。
 このように様々な要因が作用するため証券業界の再編の予想は難しく、また、国際競争力のある証券会社を核にした業界再編が一段落するまでは、本格的な証券業界の対外開放も難しいと思われることから、今後も展開をよく見ておく必要がある。

1) 利回り保証の一任勘定等が赤字の原因であった。神宮健「さらなる再編に向けて動く中国証券業界」『季刊中国資本市場研究』 2008年秋号、公益財団法人野村財団。
2) 2006年末の証券会社数は104社となり、その後100社強で推移している(2009年末は106社)。今後の再編で、さらに数10社減少すると予想する向きもある。
3) 5分類(A~E)11級は、AAA、AA、A、BBB、BB、B、CCC、CC、C、D、Eから成る。Dまでが正常営業の証券会社である。
4) 他にも、9月に国家電網公司などの保有株(国泰君安証券等)売却が報じられている。上海証券報2010年10月12日「券商股権転譲出現“井噴”(証券会社株の譲渡『噴出』出現)」等。
5) 華泰証券(親)と華泰聯合証券(子)の例がある。上海証券報2009年10月14日「解决“一参一控”応考慮歴史和現実(証券会社株の譲渡『一参一控』解決は歴史と現実を考慮しなければならない)」等。
6) 匯金は、2003年12月に国有銀行2行に対して外貨準備を注入する際に設立され、両行の株主となった。その後、証券・保険会社へも出資し、一大金融持株会社となっている。現在の位置づけは「国務院により授権され、国有重点金融企業に対して株式投資を行う」(匯金のウェブサイトより)となっている。
7) これに関する報道は多数ある。雑誌『財経』「滬系券商整合提速(上海市系証券会社の再編の速度アップ)」(2010/10/25)等。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

このページを見た人はこんなページも見ています