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野菜のビジネスモデル

2010年11月号

窪寺祐也

 今日も仕事を終え、疲れた体で家に帰る。ふと宅配ボックスを開けると新鮮な農家の野菜が入っている。世の中便利になったものである。多くの人は「野菜をどこで購入しますか?」と聞かれれば、スーパーでと答えるだろう。だがこのように農家から直接、もしくはスーパーからの宅配システムを利用して購入している人も多いのではないだろうか。
 まだ流通システムも確立されていない時代には、野菜は生産者によって直接売られていた。それが次第に流通システムの発達により、八百屋やスーパーといった市場で効率的に販売ができようになった。しかし、昨今問題になっている食の安全などの問題から、再び消費者が直接産地から購入することが増えてきている。ただし昔と違うのは、インターネットなどで便利に購入できるような仕組みのビジネスが誕生していることだ。
 このように元々あった仕組みを一部取り入れて新たなビジネスを誕生させることができたのは、技術インフラや流通システムの発展と、食の安全の問題によって「安全」の価値が高まったためである。現在は次世代の農業の担い手がいないなど暗いニュースも聞くが、日本ブランドの力は強く、安全面で海外からの輸入品にも対抗できる。
 こうした例は他にも見られる。例えば車である。元々車はマニュアル(MT)車しかなかったが、オートマティック(AT)車が出現し、現在では有名スポーツカー社ですらAT車を販売するなど、便利なAT車が主流になっている。ただ、元々MT車が主流だった世代の中にはMT車が好きな人も多い。そこで、例えば夫婦の一方はMT車、もう一方はAT車に乗りたいといったニーズに応えるべく、メーカーはAT免許でギア操作もできるフロアMT付きAT車というタイプの車を販売した。
 基本的にこれらのビジネス(商品)の誕生・発展には広義のインフラが必要で、そのインフラの上に野菜の例では「便利」vs「安全」、車の例では「簡単(=便利)」vs「運転の楽しみ」といった対立軸が新たなビジネスを創出している。
 金融の世界でも、証券化商品はかつて分散が効いて高利回りな「便利」な商品として人気があった。しかし、金融危機後は「不透明」な商品として避けられ、投資家の関心は上場株式や国債などの単純で「透明」な商品に向かっている。ただ、投資家もある程度は利回りを求めていかなければならない。そこで、複雑な証券化商品の細かな部品にタグを付け、その内容を透明化することで、買いやすくする動きが出てきている。証券化商品も野菜のように育っていくだろうか。

(窪寺 祐也)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

窪寺祐也

窪寺祐也Yuya Kubotera

投資情報サービス事業部
主任コンサルタント
専門:証券分析と金融制度調査

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