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プレゼンスが高まる中国再生可能エネルギーセクター

2010年9月号

金融市場研究センター 副主任コンサルタント 片岡佳子

欧米諸国を凌駕する勢いで中国の再生可能エネルギー向け投資が急増している。こうした投資資金流入を受け、中国再生可能エネルギーセクターの存在感は世界的に高まってきている。

 中国において、急速な経済成長と共に、エネルギー政策の重要性が高まっていることは周知の事実である。しかし、こうした下で、埋蔵量が限られている石油や天然ガスなどの地下資源に頼らない、風力や太陽光などの再生可能エネルギー(※1)を活用する動きが急速に拡がっていることは意外に知られていない。本稿では、世界各国における政策的取組みと再生可能エネルギー市場の動向について確認したうえで、中国市場の現状と今後の動向について整理し、最後に若干の考察を試みることとする。

各国における政策的取組みと市場の拡大

 これまで、再生可能エネルギーに関する政策的取組みは欧米を中心に行われてきた。欧州では1990年代前半にドイツで固定価格買い取り制度(※2)が導入されるなど、比較的早くから取組みがなされてきた。投資の活発化とともに生産量は年々増加し、2009年末には、総電力消費量に占める再生可能エネルギーの比率は19.9%にまで達している。欧州委員会が2007年に掲げた2020年時点の目標(20%)も10年近く前倒しで達成する見込みである。また、米国でも、2009年に制定された米国再生・再投資法で、再生可能エネルギーの利用が重点政策目標として位置づけられ、発電施設の設備投資に対する助成金や、投資税控除等の支援政策の導入など、政策的取組みが続いている。その結果、再生可能エネルギー分野への投資や生産量は増加傾向にある。
 しかし、近年、欧米を凌駕する勢いで再生可能エネルギーへの投資や生産量を増加させている国が中国である。中国の再生可能エネルギー投資額は、2005年以降平均して年率+93%のペースで増加。2009年の投資額は、2位の米国186億ドルを大きく上回る346億ドルとなり、全世界の投資額の約30%を占めるに至っている。
 こうした急成長の背景には、まず、政府による積極的なサポートがある。中国当局は同分野への政府投資や政策的支援策の導入を推進。2008年には、第11次五カ年計画の中で、①GDP単位当たりのCO2排出量を2020年までに2006年の40-50%まで低下させる、②電力消費量に占める再生可能エネルギーの比率を09年の9%から2020年までに15%まで引上げる、という二つの目標を優先課題として位置づけ、投資を一段と積極化させる意向を示した。また、2009年には、再生可能エネルギー法改正により、電力会社による再生可能エネルギーの買取り義務化等が導入され、公共投資以外のインフラ整備が推進される体制も整った。
 また、政策的取組み強化を受けて、国有商業銀行の豊富な資金が再生可能エネルギー分野へ流入していることも同分野を支える一因となっている。商業銀行は再生可能エネルギー企業へ直接貸し付けを行う形で積極的に資金を供給している。2009年の同分野におけるこうした新規貸し出しは約300億ドルと、再生可能エネルギーへの投資額全体の約9割を支える規模となっている。

企業の国際競争力強化に向けた施策

 急増する投資を狙い、多くの海外企業が進出を試みる中、その恩恵の多くは中国企業が享受している。再生可能エネルギー産業は、政府調達において国内製品を優遇する自主創新政策の対象業種に指定されており、海外企業の進出が規制されているためだ(※3)。こうした政策の背景には、中国当局の、再生可能エネルギー企業の技術を保護し国際競争力を高め、将来的に一大輸出産業に育てたいとの思惑があるとの指摘がある。足許でも、中国当局はM&Aによる企業の集約などで競争力の強化を推進している模様である。
 投資の急増を受けて、中国の再生可能エネルギー関連の設備メーカーは増加し、過剰生産能力が懸念され始めた。例えば、2007年時点で25社しか存在しなかった風力タービン製造企業は09年時点で約100社にまで増加。また、太陽電池モジュール製造企業は既に約6,000社も存在している。国内市場の飽和状態を緩和させつつ国際競争力を強化させるため、当局は複数の国内企業による合従連衡や、大規模企業による他企業の買収を推奨している。大規模企業に対する貸出優遇といった、大規模化へのインセンティブ供与がその一例である。また、自然淘汰を進めるべく、相対的に品質が劣る企業やプロジェクトへの国内商業銀行による無選別な貸し出しを制限しているとも言われている。実際に、中国におけるM&A総額に占める再生可能エネルギーセクターの割合は2004年の1%以下から2008年には欧州の4%を上回る5%を占めるまでに拡大している。

今後は中国が再生可能エネルギー分野の中心に

 こうした取組みの結果、中国企業の国際競争力は着実に向上している。例えば太陽電池モジュール分野では、低価格を武器に既に生産の9割を輸出し、世界の30%のシェアを有している(※4)。一方、今後世界的な成長が見込まれる風力分野では、品質の問題などから生産のわずか3%が輸出されていたに過ぎなかった。しかし、2010年3月に初めて米国向けに大規模風力設備が輸出されるなど、技術的な課題が解消されつつあると言える。今後も同セクターの投資額の増加が見込まれる中(※5)、今後の世界的な再生可能エネルギー関連プロジェクトの主要な担い手が、保護政策や企業の統廃合等を経て国際競争力を増した中国企業になるとの見方が強まってきている。
 中国企業の技術力が着実に高まる中、欧米や日本等一部技術で先行する先進国にとって、中国への投資機会を模索すると同時に、自国の再生可能エネルギー産業の競争力を維持・向上させることの重要性は高まっている。本邦企業においても、価格競争力の低さなどから、その優位性は既に揺らぎつつあるとの指摘が聞かれ始めた。中国市場の急拡大を契機に、再生可能エネルギーの潜在性を見直し、融資の枠組み等も含めた同分野への取組み姿勢を改めて見直す時期が来ているかもしれない。

(調査協力:岩田侑子)

1) 石油や天然ガス等埋蔵量が限られている資源を用いる枯渇性エネルギーに対し、再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、バイオマス、水力の様な枯渇する事の無いエネルギー源と定義される。環境負荷の高い大規模水力発電を定義から除外する場合が多い。
2) 固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーによる電力の固定価格での買い取りを、電力会社に対して一定の期間義務づける制度。その買い取りコストは電気料金に上乗せされ、消費者全体で負担される。Feed-in Tariffとも呼ばれる。
3) ただし、海外からの圧力を受け、2010年4月に再生可能エネルギー分野の一部が保護対象から除外された。また、現在検討されている中国のWTO政府調達協定加盟が実現した場合には、一定額を超える財政投資時に一般競争の実施が定められるため、公共投資への参入障壁が事実上緩和される事になる。
4) 中国の太陽光電池モジュール企業については、国際競争力は高い一方で、海外市場への依存度が非常に高く、業況が欧州での需要動向に影響を受けやすいという問題点があった。今回の政策的投資の増加には、同関連企業へ補助金を拠出し産業を支援する一方で、新規で国内の太陽光電池市場を育成し、保護する目的もあると考えられる。
5) 2020年時点の再生可能エネルギーへの投資額は2009年比+128%の7,890億ドルになるとの予測が持たれている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

片岡佳子

片岡佳子Keiko Kataoka

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:金融機関のデジタル化

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