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新たな局面を迎えた中国資産運用会社への投資助言サービス

2010年9月号

NRIアメリカ リサーチ・アナリスト

2007年のQDIIファンド(中国における国外投資ファンド)のブームは記憶に新しいが、数年の沈黙を経た2010年に再び拡大の兆しを見せている。当局の積極姿勢、および投資家のニーズの多様化を背景に、QDIIファンドに対する外資運用会社の投資助言は、より特化した内容へ変化している。

QDIIの承認を再加速する中国金融当局

 中国国内の機関投資家は、国外市場の証券に投資するにあたり、金融当局であるCSRC(※1)から承認を受ける必要がある。事業内容や財務状況などの審査を経てCSRCに承認された機関投資家はQDII(※2)と呼ばれ、2010年3月時点でその数は76にのぼる。投資家別に見ると、当初は銀行や保険会社が承認されたのに対し、近年は資産運用会社がほとんどを占める。割当額(※3)で見た運用会社の比率は62%に達し、その額は400億USドルである。22本のQDIIファンド(※4)が売買可能であり、うち半分の11ファンドは2009年11月以降の数か月間のうちに承認された新しい「第二世代」のファンドである。
 金融危機後、投資家のリスク投資意欲の減退が続く中、これら第二世代に集まった額は時価5億ドル程度に留まっているものの、業界関係者によると、既存の数に匹敵する20のファンドがQDIIファンドとしての承認を待っている状況にあるとのことである。2010年後半には、更なるQDIIファンドの登場が目撃されるだろう。

第一世代:課題を抱えた外資運用会社との提携関係

 QDIIファンド黎明期の2006年末ごろ、国外投資の世界への進出を前に、経験を持たなかった中国運用会社は困難に直面した。多くの場合、自社へ資本参加しているJV(ジョイントベンチャー)のパートナーに助けを求めざるを得ず、結果としてパートナーであった外資運用会社のいくつかが、金融危機前に設定された「第一世代」のQDIIファンドに対する投資助言契約を獲得するに至った。なお、第一世代の11ファンド中6つは「中国テーマ型」の投資スタイルを採用している。これらは、投資ユニバースを香港市場の上場銘柄およびその他の国外市場に上場されている中国企業に限定したファンドであり、自らの知見が及ぶ範囲に絞っての出発であった。
 しかし、両者の蜜月関係にも綻ほころびが生じている。JVから発展した投資助言5件のうち、すでに3件の提携が解消されている。破談の理由は複数にわたると考えられる。1)まず、投資期間に対する根本的な考えの不一致が挙げられる。中国の運用会社(および一般投資家)の投資スタイルはきわめて短期志向でトレンド追随型である一方、外資運用会社は一般に中長期の投資利益を追求する運用スタイルが一般的であり、銘柄選択において多大な軋轢と不信を生みだす要因となった。2)さらに、中国運用会社側は付随的なノウハウ(調査、投資に係る知識、スキル、ITの吸収)を提携に期待したが、推奨情報以外の交流が満足できる水準ではなかったとの声がある。3)また、一部大手(ICBCCS(※5)など)は、欧米の運用会社での勤務経験を積んだ人材を確保し、外部に頼らずに済むインハウス機能を着実に拡充している(※6)。
 齟齬をきたした投資助言、そして金融危機の発生を受け、CSRCは2008年8月にQDIIの発行を一旦停止し、第一世代のブームは終焉に至った。

第二世代:セクター/地域特化型へ変化が求められる外資運用会社の投資助言

 15か月間の沈黙の後、CSRCは再びQDIIの承認を開始した。冷却期間を経た後の中国運用会社の投資スタイルには、新たな2つのトレンドを見出すことができる。それは「インハウス運用」と「特化型運用」である。
 前者は、前に述べた中国テーマ型投資について、外部運用会社の手を借りずに自社内で培った技術で実施するもの、および銘柄調査の必要性が低いインデックス型の国外投資を自社リソースのみで運用するものである。
 後者の特化型は、中国テーマ型の不十分なグローバル分散の改善、および他社との差別化を図るために、個別の地域・セクターに限定したファンドである。ただし、このような投資は依然として中国運用会社のスキルではカバーできない部分が多く、従って外資運用会社の助言が必要な状況は当面続くものと判断できる。事実、2010年第1四半期に登場した4つの特化型ファンド(※7)のすべてが投資助言を利用している。うち2つのファンドでは、JVパートナーが投資助言をしていることから、投資助言の獲得にはJVパートナーが引き続き優位な立場にあると見られる。
 需要と供給は表裏一体である。中国運用会社は、特化型などの新たなQDIIファンドの品質を保つ上で外資運用会社の助言が未だ重要であることを認識している。外資運用会社は、中国の投資家および運用会社が求める投資スタイルを理解し、必要とされる特化型運用のスキル・調査カバレッジ能力を発揮することで、変化し続けるQDII業界の動きに歩調を合わせていく必要がある。

 一部関係者は、人民元の切り上げ観測(外貨の減価)が続く限り、QDIIファンドに向かい風だとの懸念を示している。一方、承認を再加速する当局の姿勢および景気回復が、QDII発展を長期的に後押しすると期待する声もある。未知の要素は多い。しかし、それこそがQDIIに関与するプレイヤーの事業機会とも言えるだろう。

(要約:末吉英範)

1) 中国証券監督管理委員会(Chinese Securities Regulatory Commission)
2) 適格国内機関投資家(Qualified Domestic Institutional Investor)の略称
3) QDII quotaと呼ばれる。CSRCによって設定された各QDIIが国外市場へ投資できる限度額
4) QDIIである資産運用会社が提供する、国外市場に投資するファンド。個々のファンドもCSRCからの承認を受ける必要がある。
5) 工銀瑞信基金管理有限公司
6) その他、外資運用会社側の買収等や親会社破綻による外的な要因による提携解消の事例も存在する
7) これらのファンドは、エネルギー、オーストラリア、新興国市場などのセクター/地域に特化している

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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