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投資は、人生を楽しく暮らすためのスキル

2018年11月

「貯蓄から資産運用へ」。何度も目にし耳にする言葉だが、なかなか進んでいないのが現状だ。真の資産運用を知ってもらわなければ浸透しない、その思いを実現させるため、既に数多くの運用会社が存在する中、新たな運用会社「あおぞら投信」が誕生した。その設立を先導したあおぞら投信の取締役会長 柳谷俊郎氏に「資産運用」にかける思いを語っていただいた。
(注)文中の金融商品に関するリスクについては投資信託の説明書をご覧下さい。

語り手

あおぞら投信株式会社 取締役会長
柳谷 俊郎氏

1985年 日本債券信用銀行(現:あおぞら銀行)入行。国際証券部、ロンドン支店、市場証券部などで内外債券市場業務に従事。その後、リテール部門で投資信託の企画・開発に携わる。2013年 リテール戦略部担当部長兼リテール戦略部投信子会社設立準備室長。2014年にあおぞら投信を設立し、代表取締役社長就任。2017年より現職。サッカーをこよなく愛し、現在も毎週末プレーを続ける。

聞き手

株式会社野村総合研究所 資産運用サービス事業部長
古賀 智子

1989年 山一證券の情報システム会社入社。証券システムの開発で修行し、92年 投信バックオフィスシステム再構築プロジェクトに参画、無事稼動させた。98年 野村総合研究所入社。T-STARの開発、ヘルプデスク立ち上げ、企画営業を担当し、複数の業務効率化サービスの企画を実現。中学生の娘が1人、毎日のお弁当作りと部長職の両立に苦戦中。

あおぞら投信設立にかける思い

古賀:

 あおぞら投信は2014年に設立されました。その設立を先導されたのが柳谷会長と伺っています。設立に至った経緯、思いをお聞かせいただけますか。

柳谷:

 私は銀行に入行して、長く運用に携わっていました。ロンドンに赴任した際、そこでグローバル運用を目の当たりにしました。東京にいた時は、ニューヨークが金融の中心だと思って見ていましたが、アメリカは大きな国内市場があるため、実際はドメスティックな運用が主流だったのです。一方、イギリスは、国内のマーケットが小さいので世界にどうやって投資していくかを考えなくてはならない環境にあります。それは個人投資家も同じで、グローバル運用、分散投資が当然のように行われていました。

 しかし日本では、個人の方々の「投資」というと「何が上がる?」というだけの世界でした。特に違和感を覚えたのが、余りにも短い時間軸です。誰でも買った途端に上がるのが好きなのです(笑)。人間ですので早く結果が出たほうが嬉しいのは分かります。しかし、大切な資産運用にそれを適用していては長続きしません。日本に長期の視点をもった「資産運用」を根付かせなくてはいけないと思いました。

 そういう思いがずっと根っこにあって、結果としてあおぞら投信の設立につながりました。

古賀:

 それまでは銀行で、他の運用会社がつくった投資信託(投信)を販売していたわけですよね。

柳谷:

 そうです。どうしてもその時その時の流行っている投信を選択してお客さまに勧める傾向があったため、本当にやりたいと思っていることとは違っていました。 なぜ、日本の投信の世界がそうなっているかは、投信会社が誕生した経緯によるところが大きいと思います。投信を売る側の視点で投信会社をつくったので、どうしても「売る」ためのものをつくるようになっていたからです。確かに、商品は売れなければ困ります。でも、最終的に誰が受益者かを考えないと、真の資産運用にはつながりません。

古賀:

 投信会社を立ち上げたいと考えたのは当然銀行員の時だったわけですから、「なんで、投信会社をつくるの?」といった反応もあったのではないでしょうか?

柳谷:

 「投信会社は、いっぱいある。ゼロからつくるなんて、何を考えているの?」という反応はありました。確かに高いハードルがありました。一方、経営陣からは「今こそ作るべき」というサポートもありました。

 2008年のリーマンショックの後は、みんながガクッときて、もう日本は駄目ではないか、という雰囲気が漂ってもいました。しかし、一番きつい時こそ、投資に対する考え方も変わると思いました。

 また、誰もが年金財政がこのままでは破綻に向かうことは分かっていましたが、問題は先送りされていました。ですから、早晩既存の年金制度に代わる自助努力に対する税のサポートが出てくる、そうしたらマネーフローは変わり始めるはず、という読みもありました。ですから、その前に準備をしたいと思ったのです。

古賀:

 あおぞら投信を設立して、資産運用業をどのように変えたいと思われていたのでしょうか。

柳谷:

 あおぞら投信をつくる時に明確に考えたことは、お客さまの資産を守り育てること、これ以外にない。そのためにだけ存在することを目指すのだ、と強く思いました。ですから、目先の資産増ではなくて、お客さまをいかに増やすかに力を注いできました。 投資というのは小さな失敗の繰り返しです。しかし、その失敗の時間をどうやって乗り越えるか、あるいは耐えられるかが、その後、成功するかどうかに大きく関わってきます。その意味でも、個人のお客さまにとっての時間軸はとても大切です。すなわち長期的な投資スパンを持つことです。

 そもそも投資は、人生を楽しく暮らすためのスキルであるべきだと思います。日本でも、お金の話をもっと楽しく語れるようにしたいですよね。「お金がない。苦しい。どうしよう」ではなく、有効に「使いましょう」に転じないと。お金は、使うとその価値が自分に返ってくるのですから。

古賀:

 そうですけど、やっぱり心配だから使わないですよね。

 「資産形成によって、お金をもっと使うことができるようになる」というお金に対する考え方が変わらないと駄目だと思うのです。どうしたら、そうした考え方に変わるでしょうか。

柳谷:

 私もその方法について本当に一番知りたいところですし(笑)、それがチャレンジです。これからの投資は、皆さまが「お金に働いてもらう」という感覚を持っていただければ良いと思っています。

 日々の変化は小さいので、変わっていないように見えるかもしれませんが、実は確実に変わってきているのだと思います。

 海外で活躍する日本のサッカー選手の話に例えたいのですが、1970年代、奥寺康彦がプロ第1号としてドイツのリーグに行きました。その後、尾崎加寿夫、三浦知良、中田英寿が続きました。当時はずっと1人です。現在、プロのサッカー選手は千人単位でいます。もしかしたらもっと多いかもしれません。そのうち海外でプレーしている選手も100人を超えています。今の若い人たちにとって、世界にチャレンジすることは当たり前になっています。なぜならば、サッカーはグローバルなゲームだからです。「Jリーグ」というプロリーグが1993年に始まって今年で25年です。大きな変化にはやっぱり25年かかるのです。日本での投資も、25年経ったときに、大きく変わったことが本当にわかるのではないでしょうか。

資産形成浸透の役割が期待されるIFA

古賀:

 資産運用を浸透させたいという思いがつまった投信が「ぜんぞう」ですね。はじめこの名前を見たとき、ぜんぞうさんという人の名前かと思いました。ですが、海外株式で運用されているので、違うな、と(笑)。

柳谷:

 「ぜんぞう」は、いつ購入しても5年以内に15%の成長を目指せる設計になっています。世界の株式・債券に分散投資することで、一度に上がることはないけれども、ちゃんと世界の成長をとるための組み立てになっています。ですから、「ぜんぞう」の中には世界の株式が約9,700銘柄(2018年7月末現在)入っています。世界の成長をとるために、先進国株式を50%、新興国株式を10%組入れており、バランスをとるために先進国債券を40%組入れています。

 また、株式投資はファンドの中で時間分散をしています。ですから、お客さまは買うタイミングを計らなくていいのです。「いつ買えばいいの?」という質問に対して、「今でいいんです」という回答ができます。

 株式の比率を少しずつ「漸増」させるということから「ぜんぞう」と名づけているのです。

古賀:

 御社の投信は、販売会社からの要望を受けてつくるというコンセプトではありません。すると販売会社に気に入ってもらえる投信ではない可能性もあります。その場合、直販という選択肢があるかと思います。

柳谷:

 その選択肢はゼロではありません。チャネルは大事ですから。ただし現在、投信の販売の中心は圧倒的に対面型の販売が多く、この後も中心はここにあると思っています。

 アメリカの運用会社が資産を伸ばしてきた背景には、フィナンシャルアドバイザー(IFA)の台頭があります。米国のDimensional FundsAdvisorsは、同社の投信販売について、フィナンシャルアドバイザーに任せています。2013年にDimensional社の幹部の方とお話しした時、「分散投資」、「長期にわたる資産形成」を根付かせるためには「フィナンシャルアドバイザーが鍵になる」と思いました。 日本でもこれからフィナンシャルアドバイザーが必要とされてきます。事業承継や生前贈与、といった話を最近、よく耳にします。税金に関する問題が生じたときに、もう一段違う世界が広がるといいな、と思います。

古賀:

 先日、あおぞら銀行日本橋支店に行きましたが、銀行自身がIFAを目指しているという印象を受けました。「投信を売る」というスタンスではなく、「資産運用のコンサルティングをする」とでもいうのでしょうか。

柳谷:

 そうですね。あおぞら銀行には、もともとそうしたコンサルティングを志向する面があると思います。あおぞら銀行は「頼れる、もうひとつのパートナーバンク」を標榜しています。すなわち、多くの方にとって唯一のメインバンクではないわけです。では何かといえば、プラスアルファのための銀行です。例えて言えばセカンドオピニオンが期待される銀行だと思うのです。 例えば、いつも近くにいる人には相談できないことってありますよね。それは夫婦間でもありますよね。それと同じなのです。「もうひとつのパートナーバンク」になるということは、相談事が必ず来るわけです。

 あおぞら銀行は、個人向けのローンを扱っていません。ですから、まさに運用サイドの相談に乗ることが大切な仕事なのです。

古賀:

 これはリテールの投資家だけではなくて、金融法人も含めて、いろいろ投資に悩める人にも適用できると思いました。これからはアメリカのように、IFAチャネルが大きなウェイトを占める可能性もありますね。

柳谷:

 日本なりのやり方になると思いますが、そうなるのではないでしょうか。Dimensional社からIFAの話を聞いた時、「これはまさに地域金融機関のビジネスモデルだ」と思いました。地域の一番大切なお客さまを持っているのは地域金融機関です。そういう地域の金融機関がIFAのモデルに近いと思います。

 そして、その地域金融機関の公募投信販売営業の皆さまに、これからの投資、これからの投信の考え方、お客さまとのコミュニケーションのあり方を少しでもサポートしていくことがあおぞら投信の大切な仕事だと思っています。それには、もちろん、あおぞら投信自体を地域金融機関の皆さまに理解していただく必要があります。昨年から今年にかけて、「ぜんぞう」を中心に地域金融機関のお取扱いが増えつつあり、今後は益々、地域金融機関のお客さまへ広がっていくことを目指しています。

古賀:

 最近の若者は、時間がある時にロボアドで投信を買う、といった行動をとりますよね。それと対面を交えたハイブリッド型がこれから主流になる、とお考えですか。

柳谷:

 そうですね。速い回転をするお金はロボアドも便利だと思いますが、親から何千万円相続した、退職金何千万円を手にした時、ロボアドだけに頼る人はなかなかいないと思います。

 ロボもAI も勉強を重ねているけれども、それは過去の経験値をまとめているわけです。AI は過去に基づくものは圧倒的に強いかもしれない。けれども、人間は意外なことをする生き物です。うまくいくような話でしたらいいですが、そうではないからみんな迷うわけです。そのときに「どうしたらいい?」とロボに聞いても、「今まで、そうした経験はありません」という回答しか戻ってこなかったら困りますよね。ですので、人間による対面はコアのまま残ると思います。

地域金融機関の有価証券運用

古賀:

 リテール向け投信の話を伺ってきましたが、残高の比率でいうと、私募投信のほうが大きいですよね。

柳谷:

 現在の預り資産残高のうち3分の2が私募で、3分の1が公募です。 あおぞら投信の設立には2つの柱があり、一つは、個人の皆さまの資産運用を根付かせるための公募投信のご提供で、もう一つは、地域金融機関の皆さまの有価証券運用の多様化のための私募投信のご提供です。

古賀:

 地域金融機関は今、投信にすごく投資しています。リスク管理の強化に関する指摘もなされるようになっています。地域金融機関の有価証券運用についてはどのようにご覧になっていますか。

柳谷:

 地域金融機関は地元の皆さまからの信用力がとても高いので、お金が集まってきます。それが、金融機関に滞留しているわけです。問題は収益です。「有価証券運用はどうされていますか?」と聞くと、「円債に投資しています」という返答が長く続いていたことも事実です。円の金利は、10年後どうなっているでしょうか?

 投資で最悪なのは、追い込まれてから動くことです。投資全体について常に自分達で考えて、長い時間軸でバランスをとった私募投信を選んでいく必要があります。

古賀:

 あおぞら投信が提供する私募投信は、地域金融機関の方々と向き合った中で、必要とされるものを作ってきたということですね。

柳谷:

 地域金融機関の皆さまのポートフォリオのコアになる私募投信を立てていきたいと思っています。

日本の資産運用ビジネスの今後

古賀:

 日本の資産運用ビジネスは、今後、どのように変わっていくと思いますか。

柳谷:

 資産運用は金融の中でも大切な仕事です。みんな今からが発展のチャンスだと思っている、というのは間違いないと思います。変わろうとしていますし、変わらなければいけないとも思っている。ただ、これからの変化はまだ分からないところがいっぱいあります。大切なのは柔軟な発想を持つこと。それが資産運用業全体でできたらいいと思います。

古賀:

 日本で本当の資産運用が浸透するには、投資する本人の資産運用に対する考えが「変わる」必要がある、というお話がありました。今日、お話を伺っていて、御社はその必要性に気付いてもらうための活動をされているように感じました。そうすると、御社のコンセプトに追随する運用会社が増えてくるのではないかと思います。

柳谷:

 あおぞら投信が提供する商品やコンセプトが、資産運用の変革のきっかけになれば良いと思っています。その意味で大きな流れができることは意義があることですので、同じような発想の運用会社が出てくることは歓迎ですし、既に存在し始めていると思います。我々もお客さまのために、よりお役に立てることを目指していきたいと強く思います。

古賀:

 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

(文中敬称略)

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