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お客様には、運用パフォーマンスとナレッジを

2018年07月

運用会社がお客様に選ばれるために必要な要素は、運用力、商品企画力、そしてサービス力ではないだろうか。その1つがプラスに働けば、個々の力は互いに影響を及ぼしあい、全体を好循環に導く。ニューバーガー・バーマンの運用資産残高の拡大は、その好循環の表れではないか。日本法人設立から現在まで、トップとしてニューバーガー・バーマンを率いてきた大平亮氏に成長の原動力について語っていただいた。

語り手

ニューバーガー・バーマン株式会社 代表取締役社長 マネージング・ディレクター
大平 亮氏

1995年 日系大手金融機関入行。2004年 ニューバーガー・バーマン・グループ入社。08年 ニューバーガー・バーマン日本法人を設立。同代表取締役およびニューバーガー・バーマン・グループ東アジア地域(日本および韓国)の総責任者に就任。同グループのパートナー兼オペレーティング・コミッティーのメンバー。公益社団法人経済同友会会員。

聞き手

NRIプロセスイノベーション 社長
横島 豊

1988年 野村総合研究所入社 証券共同システム部に配属。T-STARなどの資産運用会社向けソリューション開発に携わる。2012年 資産運用サービス開発二部長。2017年 資産運用ソリューション事業本部付 兼 資産運用サービス事業部長 兼 資産運用サービス開発三部長。2018年4月よりNRIプロセスイノベーション社長に就任。

お客様のニーズにこたえ運用資産拡大

横島:

 ニューバーガー・バーマンは日本法人設立から10年と聞いております。大平社長は発足当初からメンバーであり、御社の事業拡大をけん引されてきました。

大平:

 2008年に約10名でスタートし、現在では70名を超える規模になりました。どんな市場環境でも、お客様のニーズに応える運用戦略やきめ細やかなサービスをご提供することで評価いただき、当社を選んでいただいた結果が今につながっていると考えています。

 当社グループの運用資産残高は、グローバルで約30兆円です。日本法人はその1割強にあたる約4兆円を受託しています。現在20カ国でビジネスを展開していますが、日本は米国に次ぐ規模にまで成長しました。

横島:

 そうすると、本社のサポートも手厚いのではないでしょうか。

大平:

 本社があるニューヨークだけでなく、ロンドンや他の拠点においても日本の重要性が認識されています。「日本のためなら責任を持ってサポートします」という雰囲気は、経営陣だけでなく、現場レベルの社員からも感じられます。

 金融危機を経て、日本の投資家はより洗練され、お客様自身が運用の細部まで熟知したうえで投資するスタイルに変わりました。そういう観点からも、コミュニケーションや情報の質の重要性が増しています。

 当社では、「ジャパンデスク」として、ニューヨークに2名、シカゴに2名、ロンドンに1名の日本人社員を配置し、日本のお客様からの照会やご要望を現地の運用担当者に伝え、迅速かつ丁寧に日本語で回答する体制を整えています。時差や距離から生じる情報格差やお客様の不安を軽減し、有益な情報をタイムリーに提供するコミュニケーションは、信頼の醸成へとつながります。こうしたお客様第一主義の文化は、当社グループ全体に浸透しています。

横島:

 日本のマーケットが低迷していることもあり、外資系にとって日本拠点の位置づけがやや低くなりがちなところですが、御社はまったく違いますね。大平さんのお話を伺っていると、日本へのサポートは単に米国に次ぐ規模だから、という理由だけではないように感じます。

大平:

 そうですね。日本の投資家の考え方が当社の経営方針と一致しており、お客様とのパートナーシップを重視する文化がグローバルで浸透していることが大きいと思います。

 例えば、当社では「Knowledge Transfer(ナレッジ・トランスファー)」を重視しています。文字通り「知識を移転する」取り組みで、当社の運用における知見をお客様に共有するものです。もちろんお客様が第一に求めるのは「運用パフォーマンス」ですが、日本の投資家は知識も求める傾向が強いので、こうしたプログラムを提供できる当社の姿勢はお客様のご要望に合致していると思います。

横島:

 日本のお客様を、海外拠点にトレーニーとして受け入れる制度がありますよね。

大平:

 お客様のご希望に応じて、カスタマイズしたトレーニング・プログラムをご提供しています。日本の投資家だけでなく、米国の公的年金や他の地域の投資家も、ニューヨークやシカゴのオフィスで、運用チームに数カ月間在籍するというケースがあります。

横島:

 御社の運用ノウハウも分かってしまうのではないですか。

大平:

 それでも構わないと思っています。トレーニングを通じて得た知見をもとに、お客様がインハウスで運用をされるようになって、当社へ委託しなくなった例もあります。

横島:

 「それでも構わない」と考えることができるのはどうしてですか?

大平:

 投資家と良い関係を構築し、投資家の運用における選択肢が広がれば、マーケットは拡大します。それは、長期的には当社にとってもプラスになると考えています。

横島:

 御社は独立系ですが、大平さん自身はどのように、これを捉えていらっしゃいますか。

大平:

 外部株主の意向や短期的な収益追求に影響されず、真にお客様のための運用に集中できるので、強みの一つだと考えています。また当社は、社員が全株式を保有し、社員もお客様と同じように自社の運用戦略に投資しているので、お客様と社員の利益が一致する体制になっています。

 昨今、株主価値の最大化が強く謳われ、株主とのコミュニケーションが経営上の意思決定にも影響を及ぼしていますが、当社の場合、意思決定の基準を「お客様の利益のため」に絞ることができます。

 例えば、5年前に、エマージング債券運用のプロフェッショナル22名をチームごと採用したことがありました。エマージング債券というアセットクラスが戦略的に重要で、当社として強化すべき分野であることは明白でしたが、もし上場会社なら次の四半期決算に大きく影響することを懸念し、そうした判断はできなかったかもしれません。それでもこの意思決定ができたのは、長期的な視野に立ち、お客様のニーズに応える運用ケイパビリティの拡充が必要だ、という姿勢を貫くことができる環境にあったことが大きいと思います。

長年の経験が生み出すESG投資の強み

横島:

 資産運用業界の中で今、ESG投資の期待が高まっています。御社はESG投資のパイオニア的存在だと思います。

大平:

 当社におけるESGの歴史は長く、1940年代まで遡ります。これまでの経験を通じて、重要なESGファクターを投資プロセスに組み入れることが、リスク管理と長期の投資リターンに寄与するとの信念を持っています。

 また、当社では株式だけではなく、債券やプライベート・エクイティ(PE)においてもESGを取り入れた運用をしています。

横島:

 ESG投資というと、上場株式から始めることが多いですが、御社は既に債券やPEにも広げられているところが先進的ですね。

 ESG投資における御社の強みは何になりますか。

大平:

 当社独自のESG評価です。債券では、投資適格クレジット、ハイイールド債券の全保有銘柄に独自のESGスコアをつけています。ESGの観点から投資を見送った銘柄が、後に信用スプレッドが大きく悪化したケースや、デフォルトしたケースがあり、ESGがダウンサイドリスクの回避に寄与した実績があります。

横島:

 御社独自のESG評価はどのような特徴がありますか。

大平:

 第3者評価機関によるデータに加え、セクターや個別銘柄を熟知したアナリストによる定性評価、そして企業経営陣とのエンゲージメントを通じて得たリアルタイムの非開示情報に基づいて算出しています。当社はESG評価の手段としてエンゲージメントを重視しており、2017年に株式で1,500件超、債券で750件超のエンゲージメントを行いました。

横島:

 ESGのスコアリングについては相当ノウハウが蓄積されているということになりますね。

大平:

 ESGの評価を算出するうえで、E、S、G、各ファクターのスコアのウェイトをセクターごとに設定し、各ファクターにおける重要な評価項目の選定について定期的に見直しを行っています。

 エマージング債券では、政治的リスクがソブリン債のスプレッドに影響を及ぼすことがありますので、ESGの観点を取り入れたカントリーリスク評価をしています。

 ハイイールド債券では、事業の分散が進んでいない中小企業が多いので、EやSの不祥事や問題がキャッシュフローに与える影響が非常に大きくなります。こうした理由から、当社のハイイールド債券運用チームはESGを重要視しています。また国連の開発目標であるSDGsの17項目と投資リターンの相関についても研究を重ねています。

 最近は、さらにもう一歩進めて、財務リターンだけでなく、社会や環境にポジティブなインパクトをもたらすことを追求する「インパクト投資」も始めています。そういう意味では、40年代にやっていたESGと比較すると、大きく進化しています。

横島:

 ここ数年、GPIFもESG投資に積極的に取り組んでいます。お客様からのリクエストに変化はありますか。

大平:

 以前は、グリーンボンドへの投資が一般的でしたが、最近はESGを運用プロセスに取り入れた運用戦略に関する照会が増えており、RFP(お客様からの質問状)の質問項目にはESG関連が多くみられるようになってきています。

ニーズが高まるプライベート・エクイティ

横島:

 御社は4月に、欧米のPE投資会社を招いて、機関投資家向けにセミナーを開催されたと聞いています。

大平:

 当社では、PEをはじめ、各アセットクラスの運用に関する情報提供や啓蒙を目的に、定期的にセミナーを開催しています。4月に開催したものもその一環です。

横島:

 それだけPEに対するニーズが高いということですね。お客様の反応はいかがですか。

大平:

 長期化する低金利の影響や分散投資の一環として、PEへの注目が高まっていると感じます。日本でPE投資が根づき始めてから20年ほど経過していますので、お客様も相当に研究され、PEに対する理解は深まってきています。

 また、PEは未公開企業に投資をすることから、従来は情報開示の必要性が低かったのですが、現在はより透明性が求められるようになってきています。日本の機関投資家もグローバルのベスト・プラクティスに沿った質の高い情報を求めるようになっていると感じています。

横島:

 ニーズだけではなく、実際の受託残高も伸びているのでしょうか。

大平:

 おかげさまで、日本ではすでに15年間にわたってPEの運用サービスをご提供していることもあり、現在、日本法人ではコミットメント金額ベースで約6,000億円を受託しています。

横島:

 それだけ、御社が信頼されているということですね。

大平:

 PEは他の資産クラスへの投資と比べると、投資期間が長期にわたります。そうなると、運用会社への信用なくして、投資家は投資判断ができません。日本の10倍あるといわれる海外のPEマーケットから良い投資機会をご紹介し、グローバルのネットワークと知見を活かした情報提供を継続するといった地道な取り組みが実を結んでいると思っています。

デジタルイノベーションへの取り組み

横島:

 デジタルイノベーションへの取り組みが、業態を問わず広まっています。御社では、どのような取り組みをされているか教えていただけますか。

大平:

 資産運用業界にも、テクノロジーやビッグデータを活用する流れが高まっています。一例を挙げると、当社のクオンツ運用チームは、リスクプレミアムやリスクファクターを抽出するために、高度なテクノロジーを駆使して運用しています。

 また2017年には、マシーン・ラーニング(機械学習)やAI(人工知能)の開発といった分野で豊富な実績をもつ専門家を中心としたデータ・サイエンス・チームを立ち上げ、株式のリサーチ・チームと連携し、新たな投資アイディアの発掘もサポートしています。

横島:

 データ・サイエンス・チームは具体的にはどのような分析をされているのですか。

大平:

 数あるビッグデータの取り組みの一つに、クレジットカードの利用データを元にした、消費者の購買動向の分析があります。企業の売上が伸びているかどうかは、決算発表等の公開情報から判断することが可能です。しかし、男性に売れているのか女性に売れているのか、ミレニアル世代あるいは高齢者に売れているのかまでは分かりません。膨大かつ複雑なデータを解析することで、購買層が明らかになり、その売上がサステイナブルかどうか、といった疑問に対する裏づけまで得ることができます。

 企業やセクターのファンダメンタル分析においてビッグデータを正しく活用できれば、ポートフォリオ・マネージャーはより精度の高い多くの情報に基づいた投資判断が可能となり、付加価値の向上につながります。

 また株式リサーチ・チームの調査力と分析力を活かし、個人のお客様向けに新たな投資機会のご提供も継続しています。昨年は国内の運用会社とともに、日本で初めて、次世代のテクノロジーである自動運転や次世代通信(5G)に関連する株式に投資するテーマ型ファンドを立ち上げました。イノベーションと長期的な成長が期待できる投資テーマ、そして他のテーマ型ファンドと投資対象の重複が限定的であることから、分散投資の選択肢の一つとして多くのお客様にご支持をいただき、手応えを感じています。

横島:

 運用力や分析力を向上させることに投資されているんですね。今日お話を伺って、デジタル化も含め、お客様によりよいパフォーマンスを提供するための投資をおしまない姿勢が一貫していると思いました。

大平:

 市場と投資家のニーズの変化に対応するために、スピーディかつタイムリーなサービスを提供する体制が求められます。ここは常に意識しているところです。

 また、われわれは資産運用に携わる一社として、業界全体の発展と運用の高度化に貢献していきたいと考えています。そのための啓蒙活動も強化していきたいと思っています。

横島:

 業界が発展することに関して、当社も全力で取り組みたいと考えています。本日は、ありがとうございました。

(文中敬称略)

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