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長い時間軸で信頼を得る運用商品の提供

2014年05月

個人の資産形成を促す制度として1月から始まったNISA。大方の予想を超える口座開設数など順調な滑り出しを見せているが、投資家の裾野を拡大するには、制度改善の他にも様々な工夫が求められる。運用会社として、お客様に対して、また商品について何ができるだろうか。BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパンを指揮する岸本氏に語っていただいた。

岸本 志津氏

語り手

BNYメロン・アセット・マネジメント株式会社 代表取締役社長
岸本 志津氏

新卒でモルガン・スタンレー証券に入社。クレディ・スイス投信などを経て、2003年 メロン・グローバル・インベストメンツ・ジャパン株式会社入社(2007年にBNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパンに改称)。2008年 同社取締役リテール営業部長、2011年 常務取締役リテール営業本部長就任。2013年4月より現職。

金子 久

聞き手

株式会社野村総合研究所 金融ITナビゲーション推進部 上級研究員
金子 久

1988年 野村総合研究所入社。株式の運用モデルの開発、投資戦略に関する調査に従事。2000年より投信評価、資産運用ビジネスに関する調査を担当。途中2005年から2006年まで野村證券経営企画部に出向。2014年4月より現職。専門は個人向け金融商品に関する制度・マーケット調査。

販売スタイルの変化に伴う運用会社の役割

金子:

 御社のようなグローバル金融機関において、日本のマーケットの特殊性はどのように映っているのでしょうか。グループ全体の中で議論されることはあるんですか。

岸本:

 BNYメロン・グループの特徴として、傘下に複数のブティック型の運用会社があることが挙げられます。債券運用に特化する先、株式運用に特化する先、あるいはブラジルにのみ拠点を持つ先と様々です。現在15社あります。

 日本のマーケットはかなり特殊で、例えば代表的な点として、毎月分配型のファンドが多いことがあります。グループ内の運用会社に債券運用を頼むとき、パフォーマンスを求めるのは当然ですが、加えて、「利回り7%を維持して下さい。なぜなら、分配金を毎月最低でも40円出す必要があるから」といった説明をし、理解してもらう必要があります。また、ブティック型の集まりですので、それぞれの運用会社に説明が必要です。

 基本的には各運用会社が、それぞれの運用に専念しているので、BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン(以下、BNYメロン)は、日本のマーケットでどういうニーズがあり、どのように資産残高を増やすかに専念することができます。

 私どものお客様である証券会社や銀行、また年金などの機関投資家から見ますと、弊社1社とお付き合いいただければ、15の運用会社のラインアップがあることになります。

金子:

 日本のオフィスは、ゲートキーパーの役割が大きいということですか。

岸本:

 そうですね。その充実した商品ラインアップを享受してもらうためには、まずBNYメロンのお客様になっていただかなければなりません。従って、クライアントサービスの強化には力を入れています。

 結果、幸いなことにお客様は多くがリピーターになって下さいます。

金子:

 日本のマーケットは、丁寧な説明が求められます。そういったサービスの付加価値が、ビジネスを左右します。

岸本:

 以前は、商品を提案して採用してもらったところで、営業の仕事の7~8割は終わっていました。しかし、証券会社などの営業スタイルが変わりつつあり、それに対応していく必要があります。例えば、投資信託の募集期間を短くして、新規設定の金額を抑え、その後の運用パフォーマンスをみて、販売方針を決めていくといったスタイルです。

 そうしたことへ対応していけるように、私どもも態勢を変え、昨年の4月にリテールマーケティング部を新設しました。金融機関への販売支援活動や情報発信の充実を図っていこうと考えています。

金子:

 確かに、大手証券会社を中心に、販売スタイルが従来の過度に販売手数料を重視した姿勢から変わりつつあります。運用会社への影響について関心があったのですが、既に行動に移しているんですね。

岸本:

 そうですね。比較的早めに行動をとっています。

 実際、新規ファンドを次々に設定するよりは、設定時の金額は小さくても、その後長期間にわたり徐々に増やしていくほうが、われわれにとっても効率的です。販売会社の目指す方向に先回りして、それをサポートできるようにしたいと思います。

金子:

 御社は、外国籍投信に非常に存在感があります。

岸本:

 BNYメロンは、全体で約1.4兆円の資産があり、そのうち、9,300億円が投資信託、その中の6,000億円弱が外国籍投信です。

金子:

 外国籍投信の中でも特に、後払い申込手数料(CDSC)のタイプが多いですね。

岸本:

 そうです。例えば、5年や7年といった一定の期間を設け、それ以上の年数を保有して下さったお客様にとっては申込手数料がゼロになるというスキームです。その期間より前に解約された場合には、一定の比率で解約手数料をいただきます。

 購入時に販売手数料を支払うファンドよりも、お客様にとって料金体系の選択肢が広がると思います。また、長期保有をしていただければ、結果的には解約手数料がゼロになりますので、お客様にとってメリットがあります。

金子:

 投資家の手数料に対する選択肢が広がるのは意味がありますね。

 外国籍投信ということで、日常業務で負荷が発生するような特殊なオペレーションはあるんですか?

岸本:

 一般的に、外国籍投信は、オペレーションも含めて、海外で行う場合が多く、細かい間違いでも対応に時間がかかってしまいます。BNYメロンは外国籍投信が資産残高の多くを占めるため、これまで蓄積されたノウハウをもとに日本国内で対応できるようにしています。弊社の国内のオペレーション面、運用面のサポート体制は業界最高水準と自負しています。

NISA開始に伴うリテール戦略

金子:

 1月からNISAが始まりました。御社のNISAへの取り組みについてお聞かせ下さい。

岸本:

 中長期的な資産の安定成長という観点から、NISA向けの商品提供に力を入れていきたいと思っています。

金子:

 御社のホームページを見ると、キャメロンちゃんというキャラクターが、個人投資家向けに資産運用について語っていますね。

岸本:

 キャメル(らくだ)とBNYメロンをかけて、「キャメロン」と名付けました。らくだのように、ゆっくり、着実に、資産を増やしていただきたいという願いが込められています。

 以前、日経CNBCの「賢者の選択」という番組で、「NISAも始まるので、投資を始めてみましょう」という話をしました。その際、番組スタッフの方々が投資に興味を持たれ、「どこで買えるんですか」「どういう商品があるんですか」という話になったのです。

 NISAのコマーシャルを目にする機会は非常に多いので、みなさんNISAの制度は知っているのですが、投資未経験の方は、そもそもどこで買ったらいいのかが分からないのです。大手の証券会社は敷居が高く、初めての人にとっては店舗に入りづらい。オンライン証券は、商品ラインアップが多くて選ぶのが難しい。また、月次レポートをはじめ、お客様にお渡しする資料はカタカナだらけで、初心者が理解するには難解すぎるものが多いのです。

 NISAで投資家の裾野を広げることを真剣に考えたら、わかりやすいものがないと無理だと思い、キャメロンちゃんを使って、投資初心者にも親切な説明を始めました。例えば、ファンドの運用状況を示すものとして、運用成績に応じてキャメロンちゃんがにっこり笑っていたり、ちょっと暗い顔をしていたり、泣いていたりする表情を載せています。それらの表情はトータルの運用成績だけではなく、株式、債券などのアセット別に載せています。そうすることで、今月のパフォーマンスは全体ではどうだったのか、それが寄与したのは何だったのかが一目で分かるようになっています。

金子:

 キャメロンちゃんは「アラサー」に設定されています。その世代の女性を意識しているんですか。

岸本:

 NISAで初めて投資を始めた人で多かったのは、30代、40代の女性のようです。

 社会人になって、給与から天引きで積み立てているのは、どちらかというと女性のほうが多いですよね。男性に聞くと、「全部使っていた」と言う人が結構いらっしゃいます。

 それを考えると、女性へのアピールは不可欠だと思います。

金子:

 われわれのアンケートの中でも、40歳以下の女性は他の世代よりも、積み立てに対する意識が高かったり、投資に対して、学びながら投資したいという思いが強い、という結果が出ています。そういう意味では、投資に対して好奇心が強くて、NISAのような新しい制度が響く年代なのかもしれません。

岸本:

 「学びたい」というところがポイントだと思います。単純に「商品がいいから」とか「キャッシュバックがあるから」だけでは魅力を感じてもらえません。「学びたい」意欲にきちんと応えていくことが大切です。

 例えば、セミナーにしても、単なる相場環境の説明ではなく、長い時間軸で投資を考えて、ライフプランニング的な要素を入れていく必要があると思います。

金子:

 確かに、日本では相場やタイミングが重視され過ぎるという傾向があったと思います。

岸本:

 NISA、課税口座のいずれでも、売れ筋の投資信託はあまり変わりがなく、分配金の高いファンドが人気のようです。

金子:

 NISAでの保有期間についてアンケートで最も多かったのが、5年以上なんです。5年以上保有すると、分配型かそうでないかで、結構大きく違ってきます。

岸本:

 NISAでリターンを最大化したいのであれば、むしろ、分配なしのコースを選んだ方がよい、という投資家教育が必要なのではないかと思います。

金子:

 実は毎月積み立て投資される方もNISAをきっかけに多くなっているようです。積み立て投資をしようとしている人の平均投資額は、月額3万円なんです。まとめて投資する方々は80万円位ですので、金額ベースで見ると今はまだ目立たないのですが、この層が増えてくるとインパクトは大きくなります。

岸本:

 BNYメロン・グループの1社であるNewtonは、イギリスのISAで成功しています。

金子:

 ISAの残高でトップのほうですよね。

岸本:

 Newtonの人たちが、「積み立ては、最初は大きな影響はないけれども、最終的には非常に大きな比率を占めてくるものなので、そこを取り込めるかが大事だ」と言っていました。

金子:

 ある有力地銀は、4万件近くのNISA口座開設があったらしいです。そのうち1月中に投資したのは6,000口座。この数字は普通なんですが、その内、積立口座が3,000あったそうです。

岸本:

 それは、素晴らしいですね。

金子:

 金融庁も驚いたらしいです。

 投資家も長期の積立投資を望んでいますし、商品を提供する側も長く保有してもらいたいという思いがあります。確かに、5年と区切ってしまったがために、逆に「投資は5年でいいんじゃないか」といった間違ったイメージを与えてしまうかもしれません。投資の世界では5年は決して長い投資期間だとはいえません。

岸本:

 例えば5年経過した時に、マーケットが下がっていたら、「NISAなんか、やらないほうがよかった」と思う可能性が大きいわけです。せっかくそういった形で新しい投資家をマーケットに呼び込むのですから、不本意ですよね。

金子:

 他に、Newtonからのアドバイスはありましたか?

岸本:

 「投資初心者には商品ラインアップを絞った方がよい。あり過ぎると選べなくなる」。「いろいろな調査をした結果、最大5本の中で選んでもらうようにした方がよい」というアドバイスがありました。

金子:

 投資家に分かりやすくという視点から言うと、イギリスでも再三にわたって「簡単な言葉を使うように」ということが指摘されていますね。

岸本:

 「NISA」という言葉自体はとても浸透しています。高校生も知っている位です。ここまで浸透しているのですから、投資未経験者を意識した情報開示を心がけるべきですね。

金子:

 高校生にも解禁すべきかもしれませんね。

岸本:

 逆に若い人たちのほうが、片仮名の専門用語も含めて、飲み込みが早いので、若い層に解禁するのはいいアイデアかもしれませんね。

金子:

 柔軟だし、いろんなものに興味を持ちますし、吸収が速いですから、投資とのうまいつき合い方を知るというのは、その後の人生においてプラスになります。

岸本:

 日本人の古い考え方に、「株に投資している」というと、ばくちのようなイメージがあったりしますので、それを払拭するのにもいいかもしれません。

日本マーケットへの期待

金子:

 最後に、日本マーケットについて海外からの注目が変わったと感じることはありますか。

岸本:

 BNYメロン・グループの中に、つい5~6年前までは日本株の特化型ファンドがあったのですが、リーマン・ショックの直前ぐらいに償還してなくなりました。少なくともグループの中では、日本株に対する意識はほとんどゼロになっていました。

 しかし、今は、日本株に対する注目度は戻ってくると見ています。昨年4月には、アイエヌジー投信の日本株式チームに移籍してもらい、BNYメロンに日本株チームを立ち上げました。BNYメロン・グループは全体で120兆円受託しています。そのうちの0.5%が日本株に振り分けられただけでも6,000億円になるわけですから大きく期待しています。

 日本の中でも日本株の人気は高まっていますし、日本株の投信の残高も増えています。加えて、グローバルで増えていく気配を感じていますので、グローバルにも販促していきたいと考えています。

金子:

 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

(文中敬称略)

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