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グループ力を生かして、お客様に選ばれ続ける銀行へ

2013年01月

みずほフィナンシャルグループでは、今年7月のみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の合併に先立ち、すでに実質ワンバンク体制を敷いている。グループ一体経営を進める中、<みずほ>の個人向けビジネスはどのような姿を目指しているのか、ワンバンク化に向けてどんな取り組みをしているのか、個人部門を指揮する斉藤哲彦氏に語っていただいた。

語り手

株式会社みずほ銀行 常務執行役員 個人ユニット長
斉藤 哲彦氏

1983年に入社。みずほ統合後、みずほコーポレート銀行、持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループで勤務の後、2006年3月にみずほ銀行EC推進部長、2009年4月に新橋支店新橋法人部長、2010年4月に執行役員新橋支店新橋法人部長に就任。2011年6月より常務執行役員。2012年4月からはみずほコーポレート銀行の常務執行役員も兼任。

聞き手

株式会社野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部長 常務執行役員
楠 真

1983年野村総合研究所入社。旧鎌倉研究本部にてIT企業に対するコンサルテーションに従事。その後システム商品事業部、金融情報サービス部などで新規事業プロジェクトを担当。インターネットソリューション事業部、企画部などを経て、2003年に執行役員。2009年に常務執行役員。現在、金融ITイノベーション事業本部長兼金融・資産運用ソリューション事業本部長。

お客さまから選ばれ続ける銀行に

楠: 今年7月に、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合が予定されています。すでにワンバンク体制を敷いていらっしゃいますが、斉藤常務が統括していらっしゃいます個人向けビジネスについて、営業戦略や新しい取り組みについてお話いただけたらと思います。

斉藤: 私自身、個人マーケットの世界は非常に面白いと考えています。法人のお客さまは、一度お取引いただくと、長いお付き合いになることが多いですが、個人のお客さまは、お得感と利便性で簡単に銀行を変えてしまいます。また、お客さまのライフステージごとに銀行との付き合い方が変化していきますので、長いスパンでの取引の戦略が必要になります。

 <みずほ>が個人向けビジネスで目指している姿を一言でいえば、「最高のサービスを提供して、お客さまから最も支持され、最も信頼されるメインバンクになる」ということです。そのために、標榜しているのが「サービス提供力No.1」であり、この実現によって、お客さまから選ばれ続ける銀行になることを目指しています。ただ「選ばれる」のではなく、「選ばれ続ける」ことに意味があります。

 具体的にいえば、先ほど申しましたように個人のお客さまには就職、結婚、住宅購入、退職などいろいろなライフイベントがありますので、そのときどきで最適な商品・サービスを提案していくことが重要です。また、今後日本の人口増加が期待できない中で、お客さま一人一人との取引を重層化し、メインバンクとして取引いただくことが大事だと考えています。

 当行は、首都圏の基盤が厚く、1都3県では約5割、東京都では約3分の2のお客さまとお取引いただいています。もちろん、複数の銀行口座をお持ちの方もいますので、その中から最終的にみずほ銀行を選んでいただくことが「真のメインバンク」になることだと思っています。

 そのために、われわれが実践しているのがコンサルティング営業です。フィナンシャルコンサルタント(FC)がお客さまの相談にきちんと対応し、金融のことについて何か困ったらホームドクター、主治医として、ファーストコールをいただける関係をつくり上げるのが重要です。

楠: FCはいろんな業界でキーになってきています。従来型の銀行サービスは待ち受けのかたちが主流でしたが、FCはプロアクティブに提案していきます。お客さまを、FCにつなぐために、特に取り組んでいることはありますか。

斉藤: 支店で開催するセミナーなども利用して、お客さまが来店するきっかけを作っています。また、電話や電子メールなどのリモートチャネルを通じてコンサルティング営業を専門に行う「リモートチャネルFC」という担当者を配置し、日常ご来店いただくことが難しいお客さまのご相談に応じるなどの取り組みもしています。

楠: FCというと、伝統的には証券会社の強い分野だと思います。しかし証券会社の関心は、どちらかというと退職以降のライフステージで「団塊の世代」以降が主戦場です。銀行は、もっと若い方々、例えば30代、40代、あるいは20代にもアプローチしていると思うのですが、こうした年代への対応はなかなか難しいのではないでしょうか。

斉藤: おっしゃる通りです。当然のことながら、まとまった金額の運用となると、基本的には退職世代が多いのは事実です。しかし、これから資産をつくっていく資産形成期のお客さまには、例えば平準払保険や積立投信のような地道に将来に備える金融商品のニーズが着実にあります。そういったニーズを的確にとらえ、長い取引の中でメインバンク化を図ろうとしています。

楠: ローンの分野はいかがでしょう。

斉藤: 借り入れについては、銀行ならではの取り組みとして、特にカードローンには力を入れています。「銀行のカードローンといえばみずほ銀行」というキャッチフレーズのもとで、銀行のカードローンをポジティブなイメージでお客さまに説明するよう心がけています。お客さまのニーズにお応えするため、最大極度額はメガバンクで最高の1,000万円、最低金利は一番低い4%で提供しています。

 住宅ローンでは、中古住宅を買ってリフォームしたいお客さま向けに、「住宅」と「リフォーム」の2つのローンを住宅ローンに一本化した商品をいち早く提供しています。通常、リフォームローンの場合は、無担保扱いとなり金利が高くなりがちですが、有担保で相対的に低い金利により、借りていただくことができます。

 大事なのは、プロダクトアウト的な発想ではなく、お客さまにとって何が必要なのかという目線で商品を提供することだと思います。

スマホ向けサービスを次々と

楠: 個人部門におけるネット利用の戦略についてお聞かせいただけますか。特にスマートフォンの活用が積極的ですよね。

斉藤: 銀行に行かずに用事を済ませたいお客さまもいらっしゃると思います。そういう意味で、お客さまがロケーションフリー、タイムフリーで銀行にアクセスできる環境をつくり出すことは極めて重要です。銀行からお客さまに近づくことが大事であり、その手段の1つとして、ネットの活用が考えられます。最初はPCから入って、それがモバイルフォンになって、今やスマートフォンが当たり前になっています。

 <みずほ>では、お客さま一人一人のスマートフォンの中に銀行の店舗を出すつもりで、他行に先駆けてサービスをリリースしてきました。例えば2010年11月に、スマートフォンによる振り込み、残高照会のサービスを始めました。これはメガバンクの中で最も早い対応です。また、営業推進にも力を入れており、「スマホでみずほ」というロゴまで作っております。

 スマートフォンでは特に使い勝手のよさを追求しています。たとえば、ATMの店舗検索アプリでは、当初銀行のATMしか表示していなかったのですが、「お客さまが使える」という観点からコンビニATMも加えました。

 それからAR(拡張現実)を利用して、画面上に、ATMのある方向を矢印で示す機能も装備しました。コンビニATMや銀行まで「あと何メートル」という表示はお客さまにご好評いただいています。

 おかげさまで、これらの取り組みに対して、「モバイルコンピューティング推進コンソーシアム」という団体が主催しているMCPCアワードを2年連続で受賞させていただくことができました。

楠: このARはコンテンツとして実にユニークですね。スマートフォンならでは、だと思います。

 金融機関はもっとコンテンツを増やして多様化させないと消費者を引きつけられない、と私は感じています。おそらく他業態のコンテンツも取り込んでいく必要があります。

斉藤: おっしゃる通りです。そこには若干の遊びの感覚も必要ですし、お客さまのニーズを取り入れなければなりません。先ほどのスマートフォンのアプリでも、ATM検索にコンビニのATM情報を入れたことでダウンロード数が急に増えました。顧客オリエンティドであることが今後もっと求められると思います。

 お客さまの利便性という観点でもう一つ申し上げますと、お客さまの都合が合いやすい平日夜間や休日を利用した相談会の取り組みがあります。支店での資産運用・ローンの休日相談会に加え、首都圏中心に11カ所で「ローンコンサルティングスクエア」を開設して平日夜間や休日に、ローンの相談を行っています。

楠: 相談会以外では、休日の店舗運用はどのようになっているのですか。

斉藤: マーケットに応じたかたちで、一部の店舗は休日も開けています。例えばスーパーに入っている店舗は、スーパーの定休日に合わせて休んだりしています。営業時間の概念は昔と比べ、だいぶ変わってきています。

職域、銀信証連携の取り組み

楠: みずほ銀行の強みの一つに職域マーケットがあります。ワンバンク化の戦略の中で、更にその強みが発揮されるのではないかと思います。

斉藤: おかげさまで、みずほコーポレート銀行を中心に上場企業の約7割と取引があり、これが職域における強みになっています。大企業などでは、みずほコーポレート銀行取引先の役職員が約500万人、みずほ銀行取引先を合わせると約650万人の役職員がいらっしゃいます。

 職域マーケットでは、住宅ローンの実行額が伸びていますし、給与振込の口座数も増加しています。そうした中で、更にサービスの充実を図ろうということで、御社にお力添えいただいた、職域の専用ウェブサイト「プロムナードウェブ」を展開しています。昨年2月から取り扱いを開始して、現在、約280企業グループに導入いただいています。

楠: 1年足らずで導入がかなり進んでいます。やはりこれは、ワンバンク戦略のシナジー効果が出ているといえるのではないですか?

斉藤: 確かにその効果は出ていると思います。

楠: NRIでも、早速、この「プロムナードウェブ」のサービスを利用しています。使い勝手がよく、自分に合った銀行サービスを知ることができるので、喜んでいる者が多いようです。このサービスは新しいチャネルという位置づけになるんでしょうか。

斉藤: イントラネットを利用した職域ウェブサイトというチャネルは以前からありました。重要なのは「チャネルがある」ということではなく、いかにそれが見栄えがよく、使い勝手がよいかにかかっています。

楠: あそこまでサービスを充実させている例は、他ではあまり見ません。

 職域マーケットから退職金マーケットに、さらに相続マーケットにもつなげたら、ベストな展開ですね。

斉藤: そうです。御社の皆さまにも、ぜひ退職金をわれわれの方に入れていただきたいです(笑)。

楠: それでは業務命令にしておきましょう(笑)。

 グループの話でもう1つ。みずほ信託銀行やみずほ証券との連携は、いかがでしょうか。

斉藤: 銀信証の連携は、われわれの大きな強みです。「One MIZUHO」の中で、みずほ信託銀行との連携でいえば「トラストラウンジ」があります。これは支店における信託に関する相談の専門拠点です。

 みずほ証券との連携では「プラネットブース」という証券ブースを展開しています。銀行と信託、証券との共同店舗で、お客さまの多様なニーズに応えられる体制をつくり上げています。

楠: グループで、みずほ信託銀行を100%子会社のかたちとしていますが、100%子会社だからこそできるアプローチは、何かありますか。

斉藤: 例えばみずほ信託銀行のお客さまには、基本的にみずほ銀行のATMをお使いいただいています。店舗数ではみずほ銀行のほうが多いわけですから、決済はそちらを利用いただいています。

楠: みずほ信託銀行のATMはもうない、ということですか。

斉藤: その通りです。みずほ銀行のATMをお使いいただくことにしました。グループ口座というかたちでみずほ信託銀行の商品も含め、一体的に資金決済ができるので、ご好評いただいています。

 それから、みずほ信託銀行の遺言信託や遺産整理などのサービスを、みずほ銀行と同一建屋内などにあるみずほ信託銀行のトラストラウンジで紹介できます。こうして信託と一体で動けるところも、<みずほ>ならではの強みではないかと思います。

 みずほ銀行のお客さまでこれまでなかなか信託機能を使えなかった方々の間で、こうしたサービスは一気に広がっています。100%子会社でなければ、ここまでうまくいかなかったのではないかと思います。

 それから信託商品では金銭信託の「貯蓄の達人」が非常に売れています。昨年8月に取扱店舗を全店に拡大し、昨年9月末までの販売額は2,400億円にのぼっています。

楠: 「貯蓄の達人」は、銀行が投信を販売するようなチャネルで営業しているのですか。

斉藤: そうです。投信に比べて低リスクであるだけでなく、魅力的な金利の水準になっているので、買いやすいようです。銀行のお客さまにはなじみやすい商品だと思います。

楠: 銀行における投信やこういった金融商品の販売は、第3ラウンドに入ったのかな、と感じています。第1ラウンドでは、比較的リスクの低いものを売っていました。それが第2ラウンドになって、ちょっとリスクの高い商品も扱うようになりました。そしてここに来て、また次の動きが始まっているのかな、と感じています。他の信託銀行でもSMAやラップをだいぶ伸ばしています。まさに、コンサルティングサービスの中でお客さまのリスク感応度に合ったサービスをしていこう、という展開に変わってきているように見えます。

 こうした、金融商品の選択の在り方については、どのようにお考えですか。

斉藤: われわれの場合は、原点である「コンサルティング営業」という言葉に戻ってくるような気がします。コンサルティング営業というのは、お客さまのニーズを深掘りして、本当に求めているものをきちっと提供していくことにあります。それを突き詰めることが長い取引につながり、ウイン・ウインの関係でお取引いただけると考えています。

楠: 日本版ISAが、2014年1月からスタートします。これはどう見ていますか?

斉藤: 口座の申込開始が今年10月ですので、もう1年を切っています。スピード感を持った対応が必要になっています。ぜひとも御社の力をお借りして共同で取り組んでいきたいと思っています。

楠: ありがたいお言葉です。

 ISAに関しましては、制度詳細は決まっておりませんが、私どもでは見切りで投資をスタートさせています。お客さまの中には今年8月ぐらいから資料ベースで営業を始めて、予め申込書を蓄積しておき、10月の申込開始と同時にシステムに入力したい、と考えているところもあるようです。何しろ1年間につき1人1口座しかつくれない仕組みになっているので、金融機関はどこも熱が入っていると思います。

 御行のISAについても、私どもが全面的にバックアップさせていただきたいと思っています。

斉藤: ぜひお願いします。

楠: 最後に、あらためまして、いろいろなところでNRIをご利用いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

 本日は、ありがとうございました。

(文中敬称略)

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