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日本の銀行で口座管理手数料導入に向けた動き

2020年01月20日

銀行の手数料の引き上げや新規徴収の動きが広がる

2020年には、日本の銀行で手数料の引き上げや新規徴収の動きが広がる。みずほ銀行は、ATMでの振込手数料を今年3月から引き上げ、また預金額の多い顧客などに従来適用していた優遇も見直す。三井住友銀行は今年4月に50枚入の手形帳と小切手帳の代金を、1冊あたり2千円(税別)から1万円に上げる。

また、三菱UFJ銀は、新規の口座開設者(一部を除く)を対象に、紙の通帳発行に200~1,000円程度の手数料を新たにとる検討も始めている。紙の通帳発行は年200円の印紙税に加えて印刷代などもかかるが、現状ではすべて銀行の負担である。顧客をネットバンキングへ誘導する狙いもこうした措置の背景にはある。

2020年に最も注目されている手数料徴収の検討が、三菱UFJ銀行による、不稼働口座への新規手数料導入だ。三菱UFJ銀行は2年間取引がない不稼働口座に手数料をかける検討を進めている。既存の契約者については不利益変更になるため手数料の徴収を見送るが、新規開設分を対象に今年10月にも年1,200円(税別)の口座管理手数料を導入することを検討している。

りそな銀行と埼玉りそな銀行は、2004年4月以降に開設された普通預金口座のうち、2年以上利用がなく、残高が1万円未満の口座に年1,320円の「未利用口座管理手数料」を既に課している。ローソン銀行にも同様の制度がある。メガ行の三菱UFJ銀行が不稼働口座への手数料を導入すれば、他の銀行にも追随の動きが広がるだろう。

不稼働口座への手数料導入が非常に注目されるのは、それが、一般的な口座管理手数料導入への布石になるとの見方があるためだ。海外では、預金額が一定水準以下の預金口座に管理手数料を課すのが一般的だ。


手数料の引き上げや新規徴収の動きへの反発

日本の銀行が手数料の引き上げや新規徴収の動きを見せる背景には、長引く収益環境悪化への対応がある。銀行側は、手数料の引き上げや新規徴収の狙いを、システム構築でかかった費用、あるいは規制対応の費用を顧客に負担してもらうこと、と説明する。

資金洗浄(マネーローンダリング)等に対する金融当局の監視が強まるなかで、預金者の身元確認を徹底するための人手やシステムへの費用は膨らむ一方だ。三菱UFJフィナンシャル・グループでは20年度の規制対応費用が17年度比で350億円増える見通しだ。

しかし、手数料の引き上げや新規徴収の動きに対して、一般の顧客は反発を強める可能性がある。銀行は顧客の反応を見極めながら、慎重にその動きを進めることが求められている。多くの銀行の個人顧客にとっては、銀行が徴収する手数料は高い、というのが一般的な認識ではないか。

日本の銀行の各種手数料は、実際、国際基準に照らして割高なものがある一方、口座管理手数料のように、他国では一般的であるが日本では徴収されてこなかったものがあるなど、非常に複雑な状況だ。従って、下がる手数料と上がる手数料、新規に導入される手数料とが混在化しており、これが顧客を混乱させている面もあるのではないか。

日本の多くの個人顧客は、銀行に対する債権である預金を持つことの対価として利息を受け取っていることは良く理解しているが、銀行預金を利用した決済サービスを銀行から受けており、その対価を銀行に支払う必要があるとの意識は必ずしも高くはない。その結果、口座管理手数料が導入されることへの個人顧客の抵抗が強くなるのである。銀行側は、こうした点を丁寧に個人顧客に説明していくことが必要だろう。


日本銀行の追加緩和が一定の制約要因に

さらに、手数料の引き上げや新規徴収の動きは、日本銀行の金融政策とも関わってくる。銀行側は必ずしもそのようには説明していないが、日本銀行のマイナス金利政策による銀行の収益悪化への対応も、手数料の引き上げや新規徴収の動きの背景の一つであることは疑いがない。

銀行の手数料の引き上げや新規徴収の動きが広がると、日本銀行の政策に対する批判が一般の国民の間から強まる可能性があるだろう。これは日本銀行が非常に警戒している点だ。

日本銀行が今後マイナス金利の深掘りを実施する際に、銀行が手数料の引き上げや新規徴収を通じて、その政策による収益悪化分を顧客に転嫁すれば、銀行は収益の悪化を免れる。その結果、日本銀行の金融政策に対する銀行からの批判は緩和されるだろう。そうなれば、日本銀行は従来よりも金融緩和策を実施しやすくなるようにも思える。

しかし、実際にはそうではないだろう。日本銀行の金融緩和が銀行の手数料の引き上げや新規徴収の動きと連動するようになれば、国民は日本銀行の金融政策に対して一層批判的になる。

金融政策の最終目的は経済及び国民生活の安定にある点を踏まえれば、日本銀行にとって国民から金融政策を批判されることは、銀行から金融政策を批判されるよりもずっと耐え難いことなのではないか。

急速に円高が進むような局面では、日本銀行はマイナス金利の深掘りの実施を余儀なくされると見られるが、今後、銀行による手数料の引き上げや新規徴収の動きによって、国民が日本銀行の金融緩和策に対する批判を強める気運が高まれば、そのことは日本銀行の追加金融緩和策に対して一定程度の制約となるはずだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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