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日本も巻き込まれる米国宇宙軍による防衛強化

2019年12月24日

中国・ロシアに対抗して米宇宙軍を創設

トランプ大統領は12月20日、2020年度の軍事関連の歳出法案(予算案)である国防権限法に署名した。この予算の中には、「宇宙軍」の創設が含まれている。宇宙軍は、陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く6番目の軍種となる。新しい軍種の創設は、1947年の空軍以来のことだ。

米国には地域や機能ごとに陸海空や海兵隊の能力を横断的に束ねる司令部組織として統合軍があるが、トランプ政権は2019年8月に統合軍として「宇宙軍」を既に編成している。今回は、これを新たな軍種とするものだ。国防総省によると、宇宙軍は空軍に所属していた兵士と文官を合わせて1万6,000人体制になるという。これは、米国軍人全体の約20万人に対して、8%程度の規模である。

宇宙軍発足の背景には、宇宙分野での開発を進める中国、ロシアから、米国の軍事作戦の要となる人工衛星網を守り、軍事的優位を確保する狙いがある。米国が特に強く警戒しているのは、中国とロシアが開発を進めている衛星攻撃兵器(ASAT)だ。これに備えて、衛星の数を増やすなどして、衛星網の強化を図る。また、中国による天然資源開発などを見据えて、北極圏での活動もけん制するという。

旧ソ連時代に史上初の人工衛星を打ち上げるなど宇宙開発が活発なロシアは、2015年に、空軍と航空宇宙防衛部隊を統合した「航空宇宙軍」が、宇宙空間の監視などの任務を始めている。中国は、2030年までに世界の宇宙開発をリードする「宇宙強国」の仲間入りを果たすという目標を掲げ、独自の宇宙ステーション建設を目指すプロジェクトを進めている。また、今年1月には世界で初めて、無人の月面探査機を月の裏側に着陸させることにも成功している。

宇宙軍と言っても、宇宙空間での戦闘を想定したものではない。人工衛星等を利用して、陸海空軍を宇宙からサポートするような意味合いだ。またこれは、かつてレーガン政権時代に「スターウォーズ計画」と呼ばれた戦略の延長線上にある、と言えるのではないか。


日本も宇宙作戦隊を創設へ

このように、宇宙軍は従来からある米軍の機能を強化、拡充するものであり、全く新しいものが創出される訳ではないだろう。しかしそれでも、米国での宇宙軍の創設が、世界の軍事拡大を助長してしまうことは十分に考えられるところだ。

実際のところ米国は、日本や北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州各国などと連携して、宇宙分野での防衛態勢を強化する方針である。その背景には、宇宙分野での防衛強化には、かなりの経費が掛かることもあるのだろう。今後は、日本に対しても相応の費用の負担を求めてくる可能性がある。

日本政府は既に2020年度予算案の中で、人工衛星への電磁妨害の状況を把握する装置の取得、他国の衛星や宇宙ゴミを監視する宇宙状況監視衛星の整備に223億円を充てている。

今後日米両政府は、共同で宇宙監視網を強化する方針である。2023年に打ち上げ予定の日本独自の測位衛星「準天頂衛星」2基に、米国防総省の監視用センサーを搭載し、宇宙状況監視衛星としても運用する方向だ。

さらに、航空自衛隊は、2020年度に初の宇宙部隊となる「宇宙作戦隊」(仮称)を創設する。地上からの監視態勢が整う2023年度から宇宙監視の運用を開始する予定であり、米国の宇宙軍との連携が図られる。

このように、日本は既に米国の宇宙防衛体制の強化にしっかりと組み込まれてきている。特に人工衛星は、軍事利用と民間利用の境目が曖昧な点があることもあり、日本でこの分野での予算がいつのまにか急増することにならないか、今後目を光らせておくことが重要だろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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