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消費増税が歳出拡大を促す構図の2020年度予算案

2019年12月18日

国債新規発行額が10年ぶりに増加する可能性

現在、2020年度予算案の編成作業が進められている。財務相と各省大臣との折衝を経て、20日に閣議決定される予定だ。10月に消費税率が引き上げられ、その増収効果が生じている中にも関わらず、国債の新規発行額が10年ぶりに増加に転じる可能性があるのが大きな特徴だ。背景には、景気減速による消費税以外の税収悪化があるが、それ以上に重要なのは、消費税率引き上げが歳出拡大を促し、財政環境を一段と悪化させる方向に働いていることだ。

政府は、2020年度予算案の一般会計総額を、102兆円台後半で調整する方針だ。一般会計総額は過去最大となり、また、2019年度当初予算の101.5兆円を上回って2年連続で100兆円を超える。

予算案には、景気対策としての「臨時・特別措置」が1.8兆円計上される。これは、消費税率引き上げが景気に与える悪影響を相殺する、いわゆる消費税対策の一環である。現在の比較的安定した経済環境に照らせば、この経済対策はあまりにも過大である。

社会保障費や防衛費がいずれも過去最高額となる見込みだ。社会保障関係費は、35.8兆円程度の規模で調整されている。その場合、2019年度よりも1.7兆円、約5%増えることになる。第2次安倍政権発足以降で最も大きく伸びた2014年度の4.8%を上回る増加率となる可能性がある。

ところで、高齢化に伴う社会保障関係費の自然増は、2020年度には4千億円程度と見込まれている。これは例年よりも小さめだが、それは、75歳の後期高齢者に新たに加わる人数が、第2次世界大戦前後の出生率低下によって一時的に鈍化するためだ。

それにも関わらず、2020年度の社会保障関係費の増加率が全体としてはかなり高くなるのは、消費税率引き上げと同時に幼児教育や保育の無償化が実施されたことによる。予算規模は8,000億円弱と見込まれる。これは、消費税率引き上げとセットで実施されたものだ。さらに、2020年4月からは大学など高等教育の無償化が始まる。これも4,800億円程度の予算規模である。


忘れられた消費税率引き上げの目的

このように、消費税率の引き上げをきっかけに、歳出拡大傾向が一段と強まっている。その結果、国債の新規発行額が10年ぶりに増加する可能性が出ているなど、皮肉なことに、消費税率引き上げをきっかけに財政環境は一層悪化することになる。

各種教育の無償化策は、政権が掲げる「全世代型社会保障制度改革」を体現するものであり、消費税率引き上げがその財源を支えている、との位置づけだ。

しかし、現在進められている年金、医療保険、介護保険の制度改革では、当初想定されていたほど踏み込んだ改革とはなっておらず、高齢者向けを中心に給付抑制は比較的小幅にとどまる方向だ。

そうした中、教育費無償化などで現役世代への歳出を拡大させることで、社会保障制度の財政環境は一段と悪化することが避けられない。その負担は、歳出削減、保険料引き上げ、あるいは増税という形で、政府が給付を手厚くする現役世代に、将来的には確実に跳ね返ってくるのである。

社会保障制度を巡る世代間不公平の問題は、現役世代へのバラマキ的な給付拡大ではなく、負担の公平化という観点から進めるべきだろう。本来、退職世代も負担する消費税率の引上げは、幅広い世代が社会保障制度の負担を分け合うという目的で実施されているものだ。これは、負担の不公平感の緩和という目的に適っている。2020年度予算編成では、消費税率の引上げの重要な目的の一つが忘れられてしまったかのようである。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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