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様子見姿勢に転換も追加緩和余地を残すFRB

2019年10月31日

実質FF金利はゼロあるいはマイナスの領域に

米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月30日、政策金利であるFF(フェデラルファンズ)金利の誘導目標を0.25%に引き下げ、1.5%~1.75%とすることを決めた。政策金利引下げの決定は、これで3回連続である。他方、今後については、少なくとも次の1回の会合では政策金利を据え置く可能性を示唆し、今までの連続利下げの姿勢を修正した。

今回のFOMCについて、3回連続での政策金利引下げを決める一方、先行きは利下げを打ち止めにする、あるいは様子見姿勢に転じる、といったメディア報道が事前になされていた。実際にその通りの結果となったことで、報道はFOMC内での議論を正確に伝えていたことが明らかになった。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、今までの金融緩和策を「予防的措置」と説明しているが、政策効果を十分見極めることなく連続して3回の政策金利引下げを決めたのは、「予防的措置」との説明とは矛盾しているようにも感じられる。

金融緩和策は、トランプ大統領からの強い政治圧力の影響を受けた、という側面もあるが、それに加えて、2018年2月に就任したパウエル議長のもとで進められた金融引き締め策に批判的であったハト派グループの反乱の側面もあったのではないか。

3回の政策金利引下げによって、高くなり過ぎたFF金利の誘導目標の調整が一巡した、との認識がハト派グループに広まったことが、今回の様子見姿勢への転換の背後にあるのではないか。実際、3回の政策金利引下げによって、パウエル議長のもとで進められた政策金利引き上げの相当部分が撤回された形だ。

また、2%の物価目標を予想物価上昇率(期待インフレ率)とみなして計算すれば、新たなFF金利の誘導目標である1.5%~1.75%のもとでは、実質FF金利の水準は明確なマイナスの領域となる。他方、過去10年間の基調的な物価上昇率(コアPCE)の平均が1.6%であることから、その水準を予想物価上昇率(期待インフレ率)と見なせば、実質FF金利はちょうどゼロ程度と、プラス状態が解消されたことを意味するのである。こうしたFF金利の水準感が、連続利下げ姿勢の修正につながった面があると見られる。


市場には追加緩和期待が残る

今回の決定により、次回12月のFOMCでは政策金利引下げは見送られる可能性が高まった。しかし、これをもって政策金利引下げは「打ち止め」と考えるのは早計だ。「予防的措置」と説明しながら連続した政策金利引下げを行う、というやや異例の政策姿勢から、経済指標次第で政策が決まるという、いわば通常モードの政策姿勢となったに過ぎない。景気下振れリスクが高まれば、追加緩和が実施されることは十分に考えられる。

実際、金融市場では追加的な政策金利引下げ観測は残されたままである。FOMC後のFF金先市場では2020年末時点のFF金利は1.25%程度の水準であり、0.25%の政策金利引下げが2回程度実施されるとの観測が織り込まれている。この水準は、9月の政策金利引下げ決定後とほぼ同じだ。

今回の政策方針転換の背景には、政策金利がFOMC毎に引き下げられるとの期待が金融市場に強く織り込まれた場合に、その期待を裏切ると金融市場が悪く反応する恐れがあることから、市場の期待に沿った政策の採用を余儀なくされる、といういわば「政策が市場に支配される」状態から抜け出したいというFRBの思惑もあっただろう。他方、先行き追加的な政策金利引下げが市場に予想される状態が維持されたことで、長期金利が比較的低位に維持され、それが米国経済と金融市場の安定を支える、という構図はしっかりと維持されている。

こうした点から、今回の決定では、FRBによる金融市場との対話、金融市場の期待のコントロールは比較的うまくいったと評価できるのかもしれない。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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