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米国レポ市場混乱への対応を探るFRB

2019年10月03日

国際金融規制が影響か

先月生じた米国短期金融市場でのレポ金利急騰について、米連邦準備制度理事会(FRB)内での議論が活発化しており、10月末に開催される次回米連邦公開市場委員会(FOMC)においても主な議題の一つとなる可能性が高まっている。

その原因をめぐって足もとで盛んに議論され始めているのは、金融規制の影響によって、大手銀行が中銀当座預金の減少につながる短期資金の供給を渋っているという可能性だ(注)。大手銀行には、国際金融規制で100%以上の流動性カバレッジ比率(LCR)が求められている。これは、流動性危機発生時に少なくとも1か月間は資金流出に耐えられる規模の流動資産の保有が必要とされるものだ。

それとは別に、即日換金できる極めて流動性の高い金融資産を一定額保有することも求められる。中銀当座預金はその対象となるが、財務省証券はその対象ではない。

相手側から財務省証券を担保に受け入れ、それと交換で資金を供給するレポ取引では、資金の出し手となる銀行は中銀当座預金を減少させ、財務省証券を保有することになる。それは、上記の即日流動性カバレッジ比率を低下させてしまうのである。そのため、大手行がレポ市場でオーバーナイトの資金を供給することに慎重となり、それがレポ市場の混乱の原因になった、との見方が浮上している。

他方、こうした規制の影響も考慮して、FRBは短期金融市場の安定維持に必要な資産保有規模を決定し、銀行が短期資金の供給を渋ることがないほど十分な中銀当座預金(超過準備)の水準を維持してきたと推察される。しかし、ここにも誤算があったとの指摘が出ている。それは、銀行の中銀当座預金の保有には大きな偏りがある、ということだ。中銀当座預金の保有は、JPモルガン・チェース、バンクオブアメリカ、シティグループ、ウェルズファーゴの4行が大半を占めている。


市場機能回復への取り組みが重要

その結果、総額で見れば十分な規模の中銀当座預金(超過準備)、いわゆる余剰資金が維持されていても、余剰資金が十分ではない銀行も少なくなく、その結果、金融機関の短期資金需要に十分に応えられないケースが出てくる可能性が指摘されているのだ。

銀行に対するサーベイ調査に基づき、NY連銀は、銀行にとって不安を感じない十分な中銀当座預金の水準の下限(lowest comfortable level)を8,000億ドルから9,000億ドルと推定している。足もとでの中銀当座預金は1.3兆ドル程度とこの水準を超えている。しかし、中銀当座預金の保有が一部の大手銀行に偏っている点を考慮した場合には、短期金融市場の安定を維持するのに必要な中銀当座預金の最低水準は、実際にはもっと高い可能性が出てくるのである。

10月末の次回FOMCでは、以上のような点が議論され、最終的に資産買入れの再開が決まる可能性もあるだろう。

しかし、仮に過剰な金融規制がレポ市場の流動性を低下させ、市場機能を損ねているのであれば、FRBが金融緩和策でそれに対処療法的に措置を講じるというのが本当に正しいことなのかについては、慎重に考える必要があるのではないか。規制の見直しの可能性も含め、当局は市場機能の回復、正常化に必要な最適な措置を模索する必要があるだろう。


(注)"Fed analyses regulation’s role in sudden rates rise", Financial Times, October 2, 2019

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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