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強まる米司法のGAFA包囲網

2019年09月20日

地方政府にも広がるGAFA規制強化

米国でGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に対する規制強化の動きが、一段と強まっている。6月以降、連邦司法省や連邦取引委員会(FTC)がGAFAへの反トラスト法に基づく調査を本格化させてきた。

9月9日には、グーグルの広告事業を巡って、全米50の州・地域の司法当局が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで共同調査を始めることを発表した。調査を主導するテキサス州のパクストン司法長官は、連邦政府と協力し、連邦法や各州の州法に違反していないかを確認する意向を示している。GAFAへの規制強化、いわばGAFA包囲網は、地方政府レベルにまで広がってきたのである。

パクストン氏は、グーグルが「ネット広告と検索を全体的に支配しており、反競争的行為につながる可能性がある」と説明している。その上で、グーグルに広告事業に関する文書の提出を求めたことを明らかにした。ネット検索履歴など利用者データの扱い方についても、調査対象に入る可能性があるという。

一方、米下院司法委員会は9月13日に、GAFA各社に対し、経営陣のメールのやりとりを含む関連資料を提出するよう求めた。連邦政府、州政府での規制強化の動きに呼応して、議会も調査を本格化させ始めたのである。

提出を求めたのは、新興企業を買収する際のやりとり、検索結果の順位を決定するアルゴリズム、国内外の規制当局の調査に関するやりとりなどだ。また、市場のシェアや競合他社の状況、規制当局に提出したメモなどの提出も求めたという。


各社それぞれの反トラスト法違反の疑い

連邦政府、州政府、議会は、反トラスト法違反に問うことで、GAFAへの規制強化を狙っている。その際、各社の業務分野の差異に応じて、異なる視点から攻撃していく戦略だ(注)。

グーグルに対しては、ネット検索における独占を利用して、ネット広告での支配力を高め、オンライン広告を販売・掲載するパブリッシャーや競合企業に対して不当な優位性を生じさせていること、競合相手を排除することでオンライン広告販売における市場シェアを獲得、維持してきたこと、ライバルを犠牲にして自社商品やサービスを不当に有利な形で提供していること、などを反トラスト法違反の根拠とする戦略だ。

フェイスブックについては、競争上の脅威となる新興企業を買収することで、不当に支配力を獲得し維持してきたこと、プライバシーに関する虚偽の約束を通じて独占力を獲得したこと、市場支配力を乱用し、消費者のインターネット使用状況を追跡することを各自に事実上認めさせ、それによってオンライン広告の競合企業を排除していること、自らが持つデータの有効性を高めるため、戦略的パートナーとはデータを共有する一方で、潜在的な競合企業にはデータへのアクセスを認めないこと、等だ。

アマゾンについては、納入業者を圧迫し、競合する販売業者に害を及ぼし、消費者に製品の質低下、イノベーションの減少など様々な不利益をもたらしていること、アマゾンの戦術は他のサイトでの値上げにつながる可能性があること、一部の販売業者をサイトから排除するなどの方法で競争を制限していること、等だ。

アップルについては、iPhoneのアプリを購入する専用プラットフォームを通じ、競合他社よりも有利に自社の製品・サービスを扱ってきたこと、同社のアプリ販売サービス「アップストア」で不当に高い価格をつけていること、等である。


GAFAの潜在力に対する市場の評価をどう考えるか

このように、規制強化に向けたGAFA包囲網は加速的に強まっている。これは、各社にとって、将来の業務見直しや規制対応のためのコストが増加することを意味するだろう。実際、フェイスブックなどは、SNSのコンテンツ監視のために、既に相当のコストをかけている。

やや不思議であるのは、こうした環境の下でも、GAFAの株価が堅調に推移していることだ。株式市場全体の環境の良さや、市場が規制強化の影響を既に相当分織り込んだことなどが、その背景として考えられるだろう。それに加えて、GAFAの潜在力に対する市場の高い評価があるのではないか。司法の規制強化が本格化する時点では、GAFAはその規制を逃れる形で別の分野に業務を拡張し、新たな収益源を確保していく、というものである。実際、新たな分野の拡大、収益源の分散化は、各社ともに共通して見られる点である。

それでも、常に規制の数歩先を行き、独占状態のもとで高い収益性を維持していくことは容易ではないだろう。この点から、GAFAの潜在力に対する市場の評価は過大となっていないだろうか。


(注)The Government vs. Big Tech: Arguments Each Side Could Make, Wall Street Journal, September 14, 2019

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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