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米国では金融・為替・通商政策が三位一体

2019年07月29日

トランプ政権がドル押し下げの為替介入を議論

米連邦準備制度理事会(FRB)が7月31日に利下げ(政策金利の引き下げ)を実施する可能性が高いが、その決定には、利下げを望むトランプ大統領のよる政治介入の影響が相応にあるものと考えられる。トランプ大統領がFRBに露骨に利下げを要求するのは、米国経済の浮揚という狙いだけではない。トランプ大統領が米国の貿易赤字拡大の原因の一つと考える、ドル高、貿易相手国の通貨安を牽制する狙いがある。この点から、米国では、金融政策、為替政策、通商政策がそれぞれ結びつき、いわば「三位一体」の状態となっている。

クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は7月26日に、「トランプ大統領と経済顧問らは、ドル押し下げに向けた外国為替市場への介入案について協議したが、最終的には見送る決定を下した」と説明した。通商担当の大統領補佐官ピーター・ナバロ氏が、トランプ大統領に対して、為替介入を通じてドルの実質価値を10%押し下げるよう求めたが、トランプ大統領はそれを退けた。クドロー氏、ムニューシン財務長官らは、為替介入に反対したという。

クドロー氏がこうした経緯をメディアに明らかにした狙いは明らかでない。米政府がドル押し下げのために為替介入を実施するとの市場の観測を打ち消すためか、あるいはこうした議論を明らかにすることで、将来、トランプ大統領がドル押し下げのための為替介入実施に傾くことがないように牽制する意図なのか。金融市場ではここ1か月ほど、トランプ氏がドル高への不満を表明していることから、米国がドル売り介入に乗り出すとの観測が浮上していた。


利下げ競争は通貨切り下げ競争の側面も

トランプ大統領が、国際競争力向上を狙った貿易相手国の自国通貨切り下げを非常に問題視していることは明らかだ。5月に米商務省は、輸入品の不当廉売に関税を課す相殺関税制度を見直して、貿易相手国の為替介入も「不当な補助金」とみなして新たに税率を上乗せすることの検討に入った。この新制度は、外国政府の補助を受けて不当に安く輸入された製品に課す「補助金相殺関税」の考え方を見直すものだ。これまでは、相手国政府の補助金を不当廉売とした上で相殺関税を課してきたが、為替介入による通貨安も「不当な補助金」の一種とみなして制裁関税を上乗せするものだ。

最近では、韓国、南ア、トルコ、ロシアの中央銀行が相次いで利下げを実施している。そして、7月末にはFRBが利下げ、9月には欧州中央銀行(ECB)が利下げを実施する可能性が高く、10月以降は日本銀行の利下げ実施の可能性も出てくる。グローバルに「利下げ競争」の様相が強まっているのである。

しかし、それには「通貨切り下げ競争」の要素も含まれる。事態がエスカレートすれば、「為替競争」に発展するリスクもあるだろう。現時点で、日欧はそうした意図は薄いとしても、トランプ政権はそうした認識を強く持っている。いずれは、トランプ政権が日本銀行の金融緩和策を牽制し、それが金融緩和策を制約する可能性もあり得る。

他方、参院選挙を終えて8月から本格化する日米貿易協議でも、トランプ政権は円安を牽制するために為替議論を持ち出す可能性がある。日本は米国との交渉で、否応なしに金融政策、為替政策、通商政策を結び付けた議論への対応を強いられることになるだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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