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米銀決算に見る経済の現状と金融政策転換の影響

2019年07月24日

米銀の収益は明暗を分けた

欧州など他国の銀行と比べれば総じて良好な米銀の収益環境にも、銀行間でばらつきが見られる。それは、米国経済の現状と特徴を反映したものだ。

7月18日に主要米銀の4-6月期決算が出揃ったが、その内容では、大きく明暗が分かれた。好調な消費者事業が利益を押し上げたJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループなどは最終増益を確保した。他方で、大規模な消費者事業を持たない法人向け事業が中心のゴールドマン・サックスは唯一、減益決算となった。このばらつきは、企業部門に弱さが見られるなかで、個人消費によって牽引される米国経済の現状を反映した結果と言えるだろう。

クレジットカード顧客による4-6月期の利用額、借入れはともに拡大した。JPモルガンではカード取扱高が11%増、シティグループは同行ブランドのクレジットカードの取扱高が8%増、ウェルズ・ファーゴのカード事業も取扱高が6%伸びた。

他方で、大口投資家や企業の取引、資金調達、M&A(企業買収・合併)を助言する部門は厳しい決算となった。背景には、先行きの経済環境を巡る企業の不安があるのだろう。ゴールドマンの利益は6%減少した。特に引き受け業務や債券トレーディングの収入の落ち込みが際立ち、債券トレーディング部門は13%の大幅減収となったのである。米企業が米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを見込んで、社債発行を手控えた影響も小さくないようだ。

このように、個人消費の堅調を背景に、米銀の決算は、商業銀行部門は良好である一方、投資銀行部門は不振という明暗を分けた結果となった。


FRBの利下げが米銀の逆風に

米国での個人消費の堅調は、労働市場の逼迫を背景に、個人の実質賃金の増加率が高めであることが背景にあるだろう。また、そうした追い風の下、現在の金利の水準が個人の旺盛な借り入れ行動を制約する程の水準には未だ達していないことも示唆しているのではないか。この点から、FRBが来週実施すると見られる予防的緩和措置が、本当に妥当なものであるかには疑問が残るところだ。

ボストン連銀のローゼングレン総裁は19日、米国経済の強さを理由に、「多くの行動を取る必要はない」として、早期の利下げに否定的な姿勢を示している。さらに、予防的な利下げは資産バブルにつながるリスクがあるとの見解も示した。カンザスシティー連銀のジョージ総裁も利下げに慎重な発言をしている。こうした意見はFRB内では少数派であり、多数意見は既に予防的利下げの実施に傾いている。しかし、利下げを強く要求するトランプ大統領の影響、つまり政治介入の影響も否定できない予防的利下げ措置には、ローゼングレン総裁が指摘するようなリスクがあるだろう。

ところで、昨年までの利上げ局面で、米銀の利鞘は顕著に拡大した。貸出金利など米銀の運用利回りは政策金利に連動して動く傾向が強い一方、預金金利は政策金利をかなり緩やかに後追いするためだ。

しかし、年明け以降は、政策金利は横ばいを維持する中、遅れて預金金利が上昇しているため、米銀の利鞘も縮小している。この先、FRBが利下げを進めていけば、米銀の利鞘縮小に拍車がかかることになろう。個人消費の堅調を背景に良好な収益環境を維持している米銀の個人事業、商業銀行部門にも、今後は金融政策転換の逆風が吹き始めることになるだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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