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ドイツ銀行の大規模リストラ策

2019年07月05日

米国投資銀行部門の一部を他行に売却

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が7月3日に報じたところによると、経営不振に陥っているドイツ銀行は、米国での投資銀行部門の一部を、シティグループやBNPパリバに売却することで交渉を続けているという。対象となるのは株式関連ビジネスであり、その中にはドイツ銀行が高い競争力を見せてきた、ヘッジファンドに対して貸株や融資、決済代行など総合的サービスを提供するプライム・ブローカレッジ業務が含まれる。

2017年時点では、ドイツ銀行はプライム・ブローカレッジ業務で世界第6位の地位にあった。しかし、昨年には第9位にランクを落としている。シティグループは、JPモルガン・チェースなどと比べて競争力の劣る証券部門、特にプライム・ブローカレッジ業務を強化するために、この交渉に関心を持っているとされる。ドイツ銀行が売却を検討しているのは、雇用者、顧客勘定、システム、デリバティブ・ポジションだという。

ドイツ銀行のゼービングCEO(最高経営責任者)は、5月にコメルツ銀行との合併交渉が決裂したことを受けて、経営再建のため投資銀行部門で厳しい削減を行う用意があると述べていた。その中心となるのが、この米国の投資銀行部門だ。


大規模リストラで赤字、資本不足へ

投資銀行部門の縮小の他には、取締役の削減や、バッドバンクを設立して最大500億ユーロの非中核資産を移管することも検討されている。その資産は長期のデリバティブが主体になるとしている。これらの資産は、金融危機後に規則が厳格化されて以降、ドイツ銀行の資本基盤を圧迫してきた。

実際に売却する際には、相当のディスカウントが必要となり、ドイツ銀は多額の評価損の計上を強いられる可能性がある。また、プライベートエクイティに安く買いたたかれる可能性も指摘されている。

他方、7月4日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙は、こうしたリストラの結果、ドイツ銀行の従業員9万人強のうち、2万人が削減の対象になるとしている。さらに、リストラのコストは30~50億ユーロにも及ぶと報じている。

現時点で見込まれている2019年のドイツ銀行の収益は10億ユーロ程度であることから、この規模のリストラ策が実施されれば、今年の収益は赤字となるだろう。そうなれば、ドイツ銀行は、直近5年のうち、実に4年は赤字を計上することになる。

さらにその場合、ドイツ銀行の自己資本は減少し、資本不足に陥る。ドイツの自己資本比率は、今年3月末時点の13.7%から、規制基準の13%を下回る水準に低下することになるだろう。この資本不足分を増資で賄うと既存株式の希薄化から、さらなる株価下落を招く恐れがある。そこでドイツ銀行は、規制当局にこの自己資本基準の引き下げを認めるよう模索しているとも言われている。

ドイツ銀行は、7月7日に開かれる役員会で、具体的なリストラ策を議論する予定だ。


Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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