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新通貨・リブラに立ちはだかる税制上の課題

2019年07月04日

リブラはキャピタルゲイン課税対象に

フェイスブックが発行を計画している新通貨・リブラについては、課税問題がその利用拡大の障害となる可能性がある。リブラの法定通貨への換金時ばかりでなく、リブラによる商品の購入時などにも、課税対象となる可能性がある。税負担というよりも、税額計算などの手続きの煩雑さが、現金決済などと比べた場合にリブラ利用が敬遠される可能性があるだろう。

リブラは、価値の安定に重点を置いた設計となっているものの、各国の法定通貨に連動している訳ではなく、主要通貨で構成されるバスケット通貨に連動する形である。それがゆえに、通貨ではなく金融資産と解釈され、所得(利益)が発生し、それが課税対象となる可能性がある。

欧州各国では、リブラ利用時に生じる自国通貨建て価値の変化分が、キャピタルゲイン課税の対象になると見られる。このため、リブラの利用者は、納税申告のために、リブラを利用したすべての取引を自国通貨建ての価値とともに記録しておくことが求められる。

ただし、税制は各国によって異なる。例えば英国では、納税申告を行う者は、すべての取引で発生したキャピタルゲイン、あるいはキャピタルロスを税務当局に届け出ることが求められる。実際に課税されるのは、キャピタルゲインの総額が年間1.2万ポンドを超える部分に対してだ(注)。


税制上の事務負担がリブラ利用拡大の障害にも

キャピタルゲインの税額控除額は国によって異なる。フランス、イタリア、スペインでは税額控除はない。他方、ドイツでは600ユーロと、英国と比べてかなり少額だ。税負担よりも、税金に関わる事務的な負担が、リブラの利用拡大を妨げる可能性があるだろう。

また、事務的な負担から、リブラの取引から生じるキャピタルゲインを申告せず、結果的に脱税する者が多く生じることもまた予想される。こうした違法行為が増加することが予想される中、フェイスブックはそれへの対策を明確に示すことが求められるだろうが、簡単な解決策はないように思われる。

現在流通している仮想通貨でも、同じ問題が生じるが、投資目的で取引される仮想通貨であれば、大きなキャピタルゲインが生じる可能性があることから、その場合、利用者の事務負担はそれほど大きな問題ではないだろう。さらに、巨額のキャピタルゲインが生じ得る仮想通貨の場合には、税務当局の目もより厳しいことから、脱税行為は牽制されやすい。

ちなみに日本では7月に、国税庁がネットを介して個人が得た収入に適正に課税し、無申告や過少申告による課税逃れを防止するために、専門のプロジェクトチームを発足させる。全国の国税局や事務所で計200人規模の専門チームで情報収集の強化に当たる。この専門プロジェクチームの対象には仮想通貨も含まれており、仮想通貨交換業者などから情報収集し、申告漏れの防止につなげる。

東京国税局の調査部門は、仮想通貨取引で総額100億円の申告漏れを指摘した。対象として上がったのは、個人と法人で80件にのぼるという。東京都内の仮想通貨交換業社から顧客データの任意提出を受け、多額の売却益を得た可能性の高い個人や法人をリストアップし、税務調査が行われた。

仮に、決済手段としてのリブラの利用が拡大すれば、この仮想通貨のように税務当局が個々の利用者に目配りすることはできなくなり、結果的に大量の脱税行為を見逃すことになりかねない。この点も、新通貨・リブラ発足の設計上の問題点と指摘され、発足の大きな障害ともなりかねない。


(注)"Lawyers warn of Facebook’s Libra tax risks", Financial Times, July 1, 2019

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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