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欧州に広がる中国『一帯一路』構想

2019年04月01日

イタリアがG7で初の中国「一帯一路」参加

イタリアは、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」で協力する覚書を、3月23日に中国との間で交わした。中・東欧16か国は、「16+1」と呼ばれる中国-中・東欧協力枠組みの下で、既に中国との「一帯一路」構想の覚書に調印している。また、ギリシャ、ポルトガル、マルタなども、「一帯一路」構想のコミュニティに加わっている。しかし、G7(主要7か国)で初めてとなるイタリアの「一帯一路」参加は、ドイツ、フランスなど欧州連合(EU)中核国と米国に強い懸念をもたらしている。それは、欧州地域への中国の影響力が強まることを意味するためだ。また、EU加盟国の中国との関係強化は、EUの求心力を一段と弱めることに繋がりかねない。

イタリアと中国との覚書は、中国の習近平国家主席が欧州3か国を歴訪した際に交わされた。フランスのマクロン大統領は、「中国は欧州の分断につけ込んでいる」と警戒心をあらわにした。欧州委員会は、中国を貿易や技術開発の「競争相手」とする見解をまとめ、中国への警戒感をあらわにしてきた。そうしたなか、イタリアや中・東欧諸国は、逆に対中接近を図っているのである。

この覚書には、ジェノバなどイタリアの主要港のインフラ整備に中国企業が参画することや、共同の資源探査などが盛り込まれた。契約規模は25億ユーロで、将来は200億ユーロに拡大する可能性があるという。

イタリアが「一帯一路」への参加を決めた背景には、欧州債務危機以降の経済環境の悪化、及び財政環境の悪化がある。その結果、中国側の誘いに乗る形で、いわゆる「中国マネー」を頼みにすることをイタリア政府は決めたのである。欧州債務危機の発火点となったギリシャも、やはり財政危機を背景に2018年に「一帯一路」に参加している。また、イタリアでは、昨年6月にポピュリズム(大衆迎合主義)政党中心の連立政権が発足し、EUと距離を置く傾向を強めていることも、今回の決定に関係していよう。


欧州で米国の対中戦略は行き詰まり

イタリアのように、経済的メリットを重視して中国に接近する国が欧州に出てきている中、米国は経済的な側面のみならず、安全保障の面からも、欧州地域で中国が影響力を高めることを強く警戒している。米国は、中国の「一帯一路」構想は、中国が当該国を借金漬けにすることで、それらの国を支配する「借金漬け外交(Debt Diplomacy)」と強く批判をしてきた。また、イタリアが「一帯一路」構想への参加を決めた後に、ポンペイオ国務長官は、「一帯一路」が「経済的利益ではなく、安全保障上の利益に沿って計画されている」と指摘している。

他方で、米国は5G(次世代無線通信規格)関連で、中国の華為技術(ファーウェイ)製品を排除するように、他国に強く求めている。既に、オーストラリア、ニュージーランド、日本はこれに応じているが、欧州各国の対応は分かれている。そうしたなか、欧州委員会は、米国が求めるファーウェイの一律排除を見送り、各国の判断に任せることを決定した。

イタリアの「一帯一路」への参加決定と並んで、欧州委員会のこの決定は、米国の対中戦略が欧州地域で行き詰まりをみせ、米国の影響力が低下していることを露呈するものとなったのである。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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