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米政府閉鎖が一時解消

2019年01月28日

トランプ大統領の突然の譲歩

トランプ米大統領は、1月25日(金)に突如、2月15日までの暫定予算を組んで政府閉鎖を解消させることで議会与野党と合意した、と発表した。その後、合意内容に沿った暫定予算案が同日に上下両院で可決され、大統領の署名を経て成立した。昨年末から続いた米政府閉鎖は、過去最長となった35日目でひとまず解消された。

その直前まで、トランプ大統領は、壁の建設で民主党との合意が得られなければ、憲法や法律で与えられた権力を使うとし、議会承認を経ずに建設費を捻出する「非常事態宣言」を発動させる可能性を示唆していた。

トランプ大統領が、この問題で突如民主党に譲歩したことは、驚きを持って受け止められたが、その最大の理由は、米政府閉鎖の長期化が2020年の大統領選挙での再選に不利に働くとの計算だろう。

米紙ワシントン・ポストの世論調査によると、トランプ大統領の支持率は37%と政権発足以来最低の水準にまで低下した。また、CNNなどによると、政府閉鎖の責任が「トランプ大統領にある」との回答は55%と、民主党の32%を大幅に上回っている。政府閉鎖をこれ以上続ければ、トランプ大統領を今まで強く支持してきた層の支持さえも失う可能性がある、との判断もあったのではないか。また、直前には、共和党の上院議員からも、政府閉鎖の長期化を批判する声が高まっていたという。


政府閉鎖の一時解消は経済、金融市場にはプラス

ホワイトハウスの推計によると、政府閉鎖が続く限り、1週ごとにGDPは0.08ポイント押し下げられる。また、連邦政府が業務を委託している業者も業務を停止していることの影響で、GDPはさらに0.05ポイント下押しされるという。合計で、四半期年率換算のGDPは毎週0.13%押し下げられる。約5週間続いた政府閉鎖で、1-3月期の米国GDP成長率は四半期年率換算で0.6%以上押し下げられた計算だ。ホワイトハウスは、3月まで政府閉鎖が続けば、1-3月期の成長率は0%程度になるとしていた。

米ミシガン大学が18日発表した1月の消費者態度指数(速報値)は、前月から7.6ポイント低下して90.7となった。2016年10月以来2年3か月ぶりの低水準であり、16年11月にトランプ氏が大統領選に勝利して以来の最低水準となった。政府閉鎖が消費者心理に悪影響を与えている可能性を示す一つの証左だ。

政府閉鎖が一時的にせよ解消されたことは、米国経済の下振れリスクを軽減させるものだ。これは、懸念が高まっている世界経済の下振れリスクの軽減にもつながり、日本の金融市場でも一時的には株高効果を生じさせるだろう。


内政停滞で注目される貿易政策への影響

トランプ大統領は、壁建設費用の予算化について今後3週間、共和、民主両党の協議に委ねる考えを示している。しかし、壁の必要性については引き続き強調しており、両党間で合意できなければ、「政府は再び閉鎖される」と警告している。また、国家非常事態宣言によって大統領権限で予算を緊急的に捻出する可能性にも引き続き言及している。

ロイター通信は、政権側は、壁建設費が計上されれば、大統領が提案してきた57億ドル未満の額であっても、民主党と最終的に合意する用意があると報じている。しかし、今回大統領の譲歩を勝ち取った民主党側はかなり勢いづいており、建設費を減額したうえで壁建設を認めることに合意する可能性は限られよう。そのため、2月15日以降、政府閉鎖が再開される可能性は残されている。

25日には、2016年の大統領選に介入したとされるロシアとトランプ陣営とのいわゆる「ロシア疑惑」の捜査に絡んで、トランプ大統領のいわば盟友であり、選挙顧問だったロジャー・ストーン氏が逮捕された。これを受けて、勢いづいた民主党はロシア疑惑の追及で、トランプ大統領への攻撃を一層強める可能性が考えられる。このように、トランプ大統領にとっては、政府閉鎖が一時解消されても、内政面で厳しい状況が続くことになろう。

トランプ政権が、内政面で大きな制約を受ける場合、安全保障や貿易政策といった外政面も停滞する可能性もあるだろう。しかし、それとは逆に、内政面での停滞を外政面で挽回するために、中国や日本との貿易協議でより強硬的な姿勢を強める可能性もある。この点は、日本にとっても大いに懸念されるところだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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