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ヘッジファンドの運用成績は2011年以来最悪

2019年01月11日

ヘッジファンドの運用不振と資金流出

ヘッジファンド・リサーチが作成している指数によると、2018年のヘッジファンドの年間リターンは-4.1%と、2011年以来の悪化となった。特に2018年10-12月期の金融市場の大きな変動が、リターンの悪化に繋がった。さらに、世界的に株価が大幅に下落した2018年12月だけで、同指数は年間下落幅の約半分に及ぶ2.0%下落している。

エクイティ、イベント・ドリブン、マクロ、レラティブ・バリューと、すべての分野で、2018年10-12月期のヘッジファンドのリターンは悪化した。他方、通貨を主な運用対象とするマクロファンドのみ、同期のリターンはプラスとなった。エクイティの年間リターンは-6.9%、マクロは-3.2%だった。

2018年のヘッジファンド全体の年間リターンの下落幅は、1990年以来では3番目の大きさだ。1番目はリーマンショックが起こった2008年の-19.0%、2番目は2011年の-5.3%だ(注1)。

ヘッジファンドの運用成績の悪さを受けて、ファンドからの資金流出も続いている。データ会社eVestmentによると、2018年11月には64.3億ドルもの資金がファンドから流出した。これは、3か月連続の流出だ。

また、収益の悪化などから、閉鎖や顧客への資産返還に動くファンドも増えている。ヘッジファンド調査会社ユーリカヘッジによると、新規に立ち上げたファンド数と閉鎖したファンド数では、2000年から2015年までは新規立ち上げのファンド数の方が多かった(注2)。これが2016年には閉鎖ファンドの方が多くなり、その後も同じような傾向が続いているという。さらに2018年には期中の早い段階から大手金融機関が関係するファンドや、長い歴史を持つ著名ファンドの閉鎖などが報じられていた。


逆風のなか好成績を挙げたファンドも

平均的に見れば、2018年のヘッジファンドの運用成績は悪かったが、その中で、好成績を収めたファンドも少なくない。例えば、大手のチューダ・インベストメントでは、グローバル・ファンドの年間リターンは+0.3%となった。債券利回りの上昇とドル高にベットした戦略が功を奏したという。

マクロのブレバン・ハワードは、+12.3%と高い年間リターンを挙げた。ポピュリズム連立政権成立後、財政拡張的な財政政策の傾向を強めて欧州委員会(EC)と対立したイタリアの国債利回りとドイツの国債利回りのスプレッドの変化で、大きな収益を上げた模様だ。

ロング・ショート・エクイティのタイガー・グローバルの年間リターンは、約+14%にも達した。アマゾン、マイクロソフトなどクラウド関連やネットフリックスなどへの投資が好成績をもたらしたという。タイガー・グローバルは、2017年にも+25%のリターンを記録しており、2年連続での好成績が注目を集めている。それ以外にも、仮想通貨への投資で好成績を挙げたファンドもあったという。

2018年のヘッジファンドの年間リターンは-4.1%となったものの、S&P指数の-4.4%よりは多少ましであり、ヘッジファンドの運用成績の不振が、全体として顧客からの強い批判の的になっている訳ではないだろう。逆風の中でも好成績を挙げたファンドの戦略も踏まえて、成績不振となったファンドは、この年初に戦略の練り直しを迫られていることだろう。


(注1)"Hedge funds suffer their worst year since 2011", Financial Times, January 10, 2019
(注2)[特別リポートI]激変する投資環境、R&I年金情報、2019年1月7日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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