1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. いつまで続く米政府機関閉鎖

いつまで続く米政府機関閉鎖

2019年01月08日

過去最長の政府機関閉鎖も目前に

咋年12月22日に始まった米政府機関の一部閉鎖は、1月7日には17日目に突入した。政府機関閉鎖の期間は、過去最長となったクリントン政権下での21日間(1995年12月~96年1月)を超える可能性も十分に出てきた。失効した予算は全体の4分の1にとどまるとはいえ、長期化すれば、米国経済への悪影響は確実に拡大していくだろう。米国あるいは世界の株式市場に燻る、米国経済の悪化懸念を一段と煽ることにもなりかねない。

トランプ大統領が、不法移民対策として壁建設費約56億ドルを予算案に盛り込むよう要求したことが、暫定予算の一部失効による政府機関閉鎖のきっかけとなった。壁建設費の予算計上には、野党民主党が従来から反対してきたが、昨年11月の中間選挙で民主党が過半数を奪還した新議会が1月3日から始まったことで、トランプ大統領と民主党との妥協成立はより難しくなった。

政府機関の閉鎖を終わらせる暫定予算の成立には、上下両院での可決とトランプ氏の署名が必要となる。民主党が過半数の議席を占める下院は3日、壁の費用を含まない暫定予算を賛成多数で可決したが、共和党が過半数を占める上院では可決されない見込みである一方、仮に上院を通過しても、トランプ大統領は署名を拒否する構えだ。


非常事態宣言は現実的か

先週末には、政権と議会の指導者らが協議を続けたが、事態の打開には至らなかった。民主党のナンシー・ペロシ下院議長とチャック・シューマー上院院内総務は、政府機関を全面再開した後に壁建設予算の協議に戻るよう求めたが、トランプ大統領はこの提案を退けて、政府閉鎖の解除に必要となる新予算案にメキシコ国境からの移民流入を阻止する壁の建設費が計上されない限り、政府閉鎖は何年も続くと述べたという。

さらにトランプ大統領は、今後数日間の民主党との議論を踏まえ、緊急事態を宣言して壁建設費を捻出する可能性を示唆し始めた。トランプ大統領は、緊急事態宣言により「とても速やかに(壁を)建設できる」と主張しているという。米メディアによると、緊急事態を宣言した後に、壁建設費用を国防予算から支出することがトランプ政権内で議論されているという。

緊急事態宣言とは、外国からの侵略、大規模テロ、自然災害など国家の存亡に関わる緊急事態が起きた際に、大統領が包括的な権限を一時的に有することを意味するものであり、米国憲法でもそれが許されるという解釈がある。しかし、メキシコ国境からの移民流入が、国家の存亡に関わる緊急事態とは到底考えられない。仮にこうした異例の手段がとられれば、大統領権限を乱用し、議会の予算議決権を不当に侵害する、憲法にも反する行為と、強い批判を受けることになろう。


世論と市場の動きが鍵か

現時点では、政府機関閉鎖が解消されるめどは立っていないが、民主党が主張しているように、政府機関閉鎖を解消した後に、壁建設費を改めて議論する方向にトランプ大統領が一定の譲歩を示す可能性は残されているのではないか。その鍵を握るのは、株式市場と世論の動向の2点と考えられる。

トランプ大統領に一定の譲歩をもたらす要因となり得るのが、金融市場の動揺、特に株価の下落だ。政府機関閉鎖の長期化を受けて、米国経済への悪影響がより意識されれば、株価の調整を促すことになり、それが政権に軌道修正の圧力となる可能性も考えられる。

もう一つが、世論の動向だ。昨年末時点でのロイター通信の世論調査によると、政府閉鎖の責任はトランプ大統領にある、と答えた米国民は全体の47%と半分近くに達し、野党民主党と回答した33%を上回った。トランプ政権は、政府閉鎖の責任は民主党にあると主張しているが、今後公表される世論調査で、政府閉鎖の責任はトランプ大統領にあるとの回答がさらに高まれば、トランプ大統領もそうした世論を無視できなくなり、とりあえず政府機関閉鎖の解消に動く可能性もあるだろう。

トランプ大統領がメキシコ国境での壁建設に非常にこだわるのは、それが2016年の大統領選挙の公約であったためであり、選挙公約を実現することこそが、2020年の次回大統領選挙での再選を強く後押しすると強く信じているためだろう。しかし、大統領選挙の公約では、メキシコ国境での壁建設の費用はメキシコに出させるとしていた。その主張については、言及しなくなっている。予算に壁建設費用を計上することは、それがメキシコではなく米国民の負担になることを意味する。

選挙公約に関するトランプ大統領のこうした矛盾点を、米国民は見逃さないのではないか。その結果、政府機関閉鎖に関するトランプ大統領への世論の反発は、強まっていくだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

注目ワード : トランプ大統領

トランプ大統領に関する記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています