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日米貿易協議に臨む米政府の厳しい姿勢が明らかに

2018年12月27日

米政府はサービス分野も協議対象と説明

米通商代表部(USTR)は12月21日、日本との新たな貿易協議について22項目にわたる交渉方針を公表した。米国の貿易関連法は、他国と貿易交渉を正式に始める30日前までに、その具体的な方針を公表することを政府に求めている。この公表を受けて、日米貿易協議(TAG)を1月下旬から始めることが可能となった。年初から米中貿易交渉が本格化することから、日米貿易協議の開始は遅れるとの観測も一部にあるが、今回の交渉方針の公表は、米政府が早期に日本との2国間貿易協議を始めたい、という意向を持っていることを裏づけていよう。さらに、この方針は、日米貿易協議が日本にとってかなり厳しいものとなることを意識させる内容となったといえる。

交渉方針で最も注目されるのは2点だ。第1は、米政府が幅広い分野での協議を望んでいることが明らかになったことだ。日本政府は、日米貿易協議は物品関税の協議に概ね限る、との説明をしてきたが、この方針はこれを真っ向から否定している。

方針では、情報通信や金融サービスなどのサービス貿易、知的財産、製薬や医療機器など広範な産業分野を交渉対象にするとした。さらに、デジタル分野での国際取引や、労働・環境規制といった分野も含めており、かなり包括的な協定の締結を目指す方針を表明している点が注目される。これは、日本政府が今まで強く否定してきた、日米自由貿易協定(FTA)の締結を目指した方針に他ならないのではないか。

自動車貿易に関しては、やや強硬な感じだが、日本の非関税障壁に対処したり米国生産や雇用を増やしたりする条項の導入を求めている。非関税障壁とは、米国車の日本市場への参入を阻んでいると米国政府が考える、安全・環境基準の認証制度を意味していよう。


円安誘導阻止の方針が入った

第2の注目点は、USTRが方針に「不公正な競争上の優位性を得るために、日本が為替レートを操作するのを防ぐ」と明記し、輸出を不当に後押しする為替操作の防止を正式に交渉目標に掲げたことだ。米政府は従来から、為替問題を日米貿易協議のテーマの一つにすることに言及していたが、今回、それが正式な形で示された。

今年4月に米財務省が発表した為替報告書でも、円の価値は2013年上期から過去の平均を下回り始め、実質実効円レートは過去20年の平均を25%下回っていると記述された。これは、2013年春に始められた日本銀行の金融緩和策が、円安誘導を狙った措置だ、という米政府の認識を反映していよう。

来年1月下旬にも始まる日米貿易協議は、幅広い分野で日本政府が防戦を強いられることが避けられず、さらに通貨問題も交渉対象となり、日本銀行の金融政策にまでその影響が及ぶことになろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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