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ドイツ銀行の苦境とコメルツ銀行買収観測の再燃

2018年12月11日

重なったマネーロンダリング関与の疑惑

ドイツの検察当局は11月末に、フランクフルトのドイツ銀行本店や行員の自宅などを家宅捜索した。この捜索は、顧客のマネーロンダリング(資金洗浄)をほう助した疑いを受けたものだ。国際調査報道ジャーナリスト連合が2016年に公表した「パナマ文書」から、この疑惑が浮上したとされる。

捜査の中心は、ドイツ銀行のグローバル・トラスト・ソリューションズ事業(GTS)の一部門であった、英領バージン諸島拠点のビジネスだという。GTSは、タックスヘイブンでの信託を運用していた。ドイツ銀行はGTSを売却することを2016年初めには検討していたとされ、実際、2017年10月にGTSをバミューダに拠点を置く金融機関に売却することが発表された。

ドイツ銀行には、別のマネーロンダリングに関与した疑いもある。それは、デンマークの名門銀行、ダンスケ銀行エストニア支店のマネーロンダリング取引(推定1,850億ユーロ)を、ドイツ銀行が扱ったとされるものだ。

相次ぐマネーロンダリングへの関与疑惑を受けて、ドイツ銀行の株価は大幅に下落し、上場来最安値を更新している。ドイツ銀行は、今年4月にたたきあげのゼービング氏を最高経営責任者(CEO)に据え、投資銀行部門の縮小や欧州での商業銀行業務への回帰、などの事業改革を進めていたさなかだった。ゼービング氏は、4年ぶりの黒字化を目指していた。

浮上した2つのマネーロンダリング疑惑を受けても、ドイツ銀行は引き当てを積み増すことをしない方針、と伝えられている。それは、引当金を積み増せば、黒字化が遠のいてしまうためでもあろう。


再浮上するコメルツ銀行の買収観測

今回の事件を受けて、ドイツでは、過去から何度もささやかれてきたドイツ銀行によるドイツ第2のコメルツ銀行の買収観測が再び浮上している。買収・合併を通じて、銀行の競争力向上と経営の安定を図る狙いだ。

ドイツ誌フォークスは、ドイツ財務省がドイツ銀行とコメルツ銀行との合併を調整することに前向きである、と報じている。現在、議論されているのは、ドイツ政府が約5年間ドイツ銀行の筆頭株主となった後に合併する、ドイツ銀行がコメルツ銀行を買収するため事業会社から資金を集める、両行の株式を保有する持ち株会社を創設する、などの選択肢であるという。

実際、買収や合併を通じて強力な銀行をドイツに作ることの必要性は、政府、議会内で共有されているようだが、具体的な手段についてはコンセンサスがない。ドイツ政府が約5年間ドイツ銀行の筆頭株主となった後に合併する、という選択肢については、連立与党のキリスト教民主同盟(CDU)内では慎重な意見が多い。それは、合併のために公的資金を投入することが、国民の理解を得にくいためだろう。

問題山積の中、ドイツ銀行、そしてドイツの銀行システムの立て直しについても、なお迷走状態が続いている。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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