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FRBは経済環境次第の政策運営に

2018年12月04日

予見可能性が高い政策姿勢は終了へ

金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月18、19日に行われる次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25%の政策金利引き上げを決めることが、ほぼ確実と考えられている。しかしながら、来年の政策金利の見通しについては、一転して、強いコンセンサスが成立していない状況だ。

過去1年間にFRBは、年8回開かれるFOMCで、1回おきに0.25%の政策金利引き上げを実施してきた。これは、政策金利が経済に対して中立的な均衡水準になお達しないなかで、米国経済は堅調を維持し、他方で、インフレ圧力が一気に高まるリスクが限られるという、概ね理想的な経済環境にあったことを反映している。

しかし、ここにきて、来年にはFOMC1回おきに0.25%の政策金利引き上げといった、予見可能性が高い政策変更とはならないことを、FRBが意識して市場に周知し始めている。その背景には、世界経済の下振れリスクが高まるなど、経済環境の不確実性が高まってきたことが挙げられる。それに加えて、政策金利の中立化は完了しつつある、とのFRBの認識があるだろう。

FOMCが見通しで示している政策金利の均衡値は3%程度であるが、これが現在の政策金利の中立水準である、あるいはそのような強いコンセンサスがFOMC内にある、と考えるのは誤りだろう。今まで金融市場は、3%程度が中立水準であり、その水準程度まではFRBは比較的コンスタントに政策金利を引上げていく、との見方が主流であった。そのため、少なくとも来年前半頃までは、現状の政策金利の引き上げペースは維持されるとの見方が多かったのだろう。それがゆえに、「政策金利が中立水準に近づいてきた」との判断を示唆した、最近のパウエル議長の発言に、市場は動揺したのである。

実際には、政策金利の中立水準については、FOMC内部でも見解の相違が大きく、2%台から中立水準の領域に入ると考える向きもFOMC内には相当数いるのではないか。


トランプ大統領の介入の影響も

政策金利が中立水準の領域に入ってきたとすれば、この先のFRBの政策運営は、より経済、金融環境次第で決まる傾向が強まるだろう。これは、FRBが従来よりも柔軟な政策姿勢に転じたことを意味するが、金融市場にとっては、政策の見通しに対する不確実性がより高まったことを意味する。それは、金融市場を不安定にさせてしまう可能性がある。

FRBは、インフレのリスクをそれほど警戒していないと考えられることから、今後、弱めの経済指標が発表されれば、金融政策はそれに対し、従来と比べてかなり敏感に反応して、政策金利の引き上げを見合わせる判断を下すことになるのではないか。

さらに、FRBは、トランプ大統領からの事実上の介入にも影響を受けることになるだろう。トランプ大統領は、FRBの政策金利引き上げが経済や金融市場に悪影響を与えているとして、強い批判を繰り返している。FRBは、表面的には「そうしたトランプ大統領の発言によって金融政策は影響を受けることはない」との姿勢を堅持している。しかし、実際には、ある程度それに配慮せざるを得ないのではないか。今後、米中貿易戦争の影響、あるいは減税効果の剥落などを受けて米国経済に減速感が生じた場合、トランプ大統領は、それは自らの貿易政策、減税政策の影響によるものではなく、過度の金融引き締めのせいだ、とFRBをさらに強い調子で批判する可能性が高い。

これによって、FRBの金融政策が国民からも批判される事態、そして独立性がさらに脅かされる事態へと発展する可能性があるだろう。そうしたリスクを減らすためにFRBは、ひとたび景気減速の兆候は見られれば、素早く政策姿勢を修正し、さらなる政策金利引き上げに慎重になる可能性が高いのではないか。

2018年とは一変して、2019年のFRBの金融政策見通しは、にわかに不確実性が高い状況となってきた。金融政策見通しという観点からは、2019年の金融市場は、まさに「海図なき航海」の状況に陥るのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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