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ハードブレグジット回避に向けた一歩

2018年11月16日

メイ政権は、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る離脱協定草案を11月14日に閣議決定した。メイ首相は、閣内の慎重派や反対派を抑えて、なんとか離脱協定草案の承認を取り付けることに成功した。これは、合意なき無秩序な離脱(ハード・ブレグジット)の回避に向けた重要な一歩となった。

英国とEUの間で最大の懸案となっていたのは、英領の北アイルランドとアイルランドとの国境問題だ。完全離脱の2020年末までにこの問題で合意に達しない場合の対応、いわばバックストップ(防衛策)が長らく議論されてきた。

今回の草案では、合意に達しない場合には「問題解決まで英国全土をEUとの関税同盟に残す」とされた。これは、合意なき無秩序な離脱を回避するバックストップの規定だ。しかし、メイ政権内の強硬離脱派は、英国の意思で関税同盟を打ち切りにできる仕組みを導入すべきだ、と主張していた。メイ首相は、今回の閣議決定は全会一致でなかったことを認めている。閣僚30人のうち10人ほどが反対したとの報道もある。離脱協定草案に反対した強硬離脱派の閣僚、ラーブEU離脱担当相は、15日に辞任を決めた。

英国での閣議決定を受けて、EUは19日にも英を除く27加盟国の閣僚会合を開き、さらに25日に緊急首脳会議を開催して、離脱協定草案を首脳レベルで正式決定する見通しだ。

英国では離脱協定草案の閣議決定がされたとはいえ、より高いハードルとなるのは議会承認だ。離脱協定草案に基づくと、英国が離脱後もEUの規制やルールに縛られかねないと反発する強硬離脱派が英与党内には多い。離脱協定草案について、英、EUの双方で議会の承認を得られて初めて、経済や社会の混乱を招く合意なき離脱を回避、秩序ある英国のEU離脱が可能となるが、そこまでの道のりはまだまだ険しい。メイ首相は15日から与党内反対派の説得を始めるが、多数の与党議員が離脱協定案に反対票を投じる意向を示している。合意なき無秩序な離脱のリスクは、なお残されたままだ。

ところで、離脱協定草案によると、予想されたことではあるが、英国の金融業界は、現状のようなEU市場への自由なアクセスを失うことになる。「同等性評価」と呼ばれる制度のもと、英国での免許を持つ金融機関は、離脱後にEU内で事業を行う権利をEUの判断に委ねることになる。英国の規制がEUと同等だと欧州委員会が認めた場合のみ、EU内での事業が可能となる。EUは、短期の周知期間で、この許可を取り消すこともできる。

ただし、大半の投資銀行は、「同等性評価」に基づいてEU内での事業が許可されるとみられる。また、免許取り消しにも数か月程度の時間的猶予が認められる方向だ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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