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中間選挙で露呈する分断化が進む米国社会

2018年11月02日

「大卒の白人女性」と「非大卒の白人男性」との間で広がる分断

11月6日に投開票が行われる米国中間選挙では、有権者の分断が一段と進むことになろう。これを踏まえて民主、共和両党の選挙戦略は、それぞれの支持層をしっかりと固める戦略へと傾いている。また、トランプ政権の各種政策も、既存の支持層の支持を堅持するために、極端な政策に一層振れやすくなっている。

トランプ政権の代表的な支持層は、経済成長から置き去りにされたとされる、ラストベルトの白人労働者だ。また、宗教的には、強硬な中絶反対論者であるキルスト教福音派である。

足もとで、党派別支持の差がとりわけ目立ってきたのは、「大卒の白人女性」と「非大卒の白人男性」だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とNBCニュースの最新世論調査(2018年10月)の結果によると、「大卒の白人女性」では、民主党の支持率は共和党の支持率を33%ポイント上回った(注1)。一方で、「非大卒の白人男性」では、共和党の支持率は民主党の支持率を42%ポイント上回っている。両者の差は、この調査が始められた1994年以降で最大だ。

1970年代までは、性別による支持政党の差はあまり明確でなかったが、1980年代以降は、女性が民主党を、男性が共和党を支持する傾向が定着している。こうした傾向に、学歴の差による支持政党の違いという傾向が近年は加わってきている。学歴による支持政党の違いは非白人、つまりマイノリティーの間ではそれほど大きくなく、その差はむしろ縮小する傾向にある。


トランプ大統領の極端な政策は中間選挙後に修正されるか

両グループの姿勢の違いは、移民政策、銃規制、医療保険などの政策への評価に鮮明に表れている。いずれも、非大卒白人男性はトランプ氏の政策に賛成、大卒白人女性は反対となっている。

今回の中間選挙で民主党は、多くの女性候補を擁立するとともに、銃規制強化や医療保険制度改革法の存続を強く訴えている。4年前の中間選挙では、幅広い支持層を取り込むため、議論が分かれるこうしたテーマを積極的には取りあげることはなかった。一方で共和党の候補者は、非大卒白人男性が強く支持している不法移民対策を強く訴える戦略をとっている。

こうした流れの中でトランプ大統領は、不法移民への姿勢を強くアピールするために、米国市民権の出生地主義を大統領権限で廃止する考えを打ち出している。米国では、米国人の親を持たなくても米国領内で生まれれば、自動的に市民権が付与される「生得市民権」が認められている。米国憲法修正第14条は「米国で生まれ、あるいは帰化した者、およびその司法権に属する者は米国の市民である」と定められており、これが「生得市民権」の根拠とされる。

南米などからの不法移民が米国で出産するケース、外国人が子供に米国市民権を取得させようと、米国で出産するケースなどは、以前から問題視されてきた。ただし、大統領の権限で「生得市民権」を否定するのは、実際には容易ではないと見られる。共和党のライアン下院議長は、大統領の権限による「生得市民権」否定は憲法違反であると批判している。一方で大統領側は、米国憲法修正第14条は、不法移民を想定していないと応じている。

このような、非大卒白人、白人労働者階級といった共和党、トランプ大統領の支持層向けの選挙戦略が、中間選挙で一定の成果を挙げたと判断すれば、トランプ大統領は2020年の大統領選挙に向けて、極端な政策を堅持し、むしろ強化することになるだろう。

保護貿易主義に見られる米国第一主義、国内での巨額の減税、インフラ投資拡大などの政策は、中間選挙に向けた一時的な戦略であり、中間選挙後は修正されると考えるのは楽観的過ぎるだろう。そうした楽観論が現実味を帯びるのは、中間選挙で共和党が予想外の大敗を喫し、より幅広い層の支持を取り付けるべく、大統領選挙に向けて極端な政策を修正するという、戦略の抜本的な見直しを迫られる場合に限られよう。


(注1)"The Yawning Divide That Explains American Politics", Wall Street Journal, October 31, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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