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日本銀行は10年国債利回りの上昇を強く牽制しない?

2018年10月05日

新発10年国債利回りはマイナス金利導入時の水準まで上昇

米国の長期国債利回り上昇に連動する形で、日本でも長期国債の利回りが上昇している。新発10年の国債利回りは4日に0.155%と、日本銀行がマイナス金利の導入を決めた2016年1月29日以来の高水準に達した。また、新発30年、40年物国債利回りも、2016年2月以来の高さとなった。

利回り上昇の直接的なきっかけは米国での利回り上昇だが、足もとで日本銀行が超長期債の買い入れを減額していることが、その影響を増幅している面もあるだろう。日本銀行は、国債買入れの減額と買入れ対象の平均満期短期化の双方を通じて、イールドカーブのスティープ化を促し、金融機関の収益改善などを図っていると考えられえる。この観点からすれば、米国での長期国債利回りに連動する形での日本の長期国債の利回り上昇は、日本銀行にとってまさに“渡りに船”であり、基本的には当面容認姿勢を維持しよう。

新発10年利回りは、8月2日に日本銀行が事前に公表されていないタイミングでの長期国債買入れ実施した、いわゆる臨時オペ実施時の水準0.145%をすでに上回ったが、4日時点では臨時オペの実施を見送っている。8月2日時点では、7月末の政策変更実施直後で金融市場が不安定であったこと、あるいは円高のリスクがあったことから、日本銀行は利回りが引き上げられた変動レンジの上限をかなり下回る段階で、利回り上昇を明確に牽制し、市場の安定を図ったが、現状ではそうした必要はないだろう。新発10年国債利回りが許容変動レンジの上限である0.2%にもっと接近するまでは、臨時オペや指値オペを実施しないだろう。


利回り上昇に対する日本銀行の牽制は比較的緩やかか

他方、米国の長期国債利回りが一段と上昇し、日本の新発10年の国債利回りが0.2%に接近していき、それを放置すれば0.2%の水準を超えるような状態となれば、それは新たな問題を生じさせる。臨時オペや指値オペ、あるいは通常のオペでの10年国債の買入れ額増加を通じ、長期国債買入れの再拡大を日本銀行が余儀なくされるためだ。これは、2016年9月から続けてきた長期国債の買入れ減額の縮小、いわゆるステル・ステーパリングの成果を台無しにし、国債市場の流動性の低下をより深刻なものとしてしまいかねない。

そうした事態は回避するには、新発10年の国債利回りの許容変動レンジの上限を0.3%へと一段と引き上げることが一つの選択肢となる。その結果、変動レンジは上下合わせて0.6%となるが、これによって、0%程度を目標値とするイールドカーブ・コントロールの形骸化が一段と進む。さらに、許容変動レンジの再引き上げよりも、変動レンジ自体を一気に無くすことを日本銀行が選択する可能性もあるだろう。

7月末に日本銀行が実施した、10年の国債利回りの許容変動レンジ拡大は、イールドカーブ・コントロールという枠組みを事実上解消していくスタート時点ではないかと考えられる。この観点から、実際にこのような事態に至っても、それは日本銀行にとって想定内のことだろう。

他方で、国内での長期国債利回り上昇で、為替が円高に振れることを日本銀行は恐れている。しかし、日本銀行の国債買入れ減額などといった調整の変更がきっかけではなく、米国の国債利回り上昇を主因に日本の長期国債利回りが上昇するケースでは、為替市場は円高には振れにくい。つまり日本銀行にとっては、比較的望ましい形での国内長期国債利回り上昇が生じていることにある。それゆえ、利回り上昇に対する日本銀行の牽制姿勢は、市場が考えるよりも穏やかなものになるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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