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ハイイールド債よりもBBB格債に注目

2018年10月01日

ハイイールド社債の指標性は低下

株価がピークから下落基調へと転じるタイミング、実体経済が後退局面に入るタイミングなどを事前に察知する、いわば早期警戒指標として長らく重視されてきたのが、投機的格付けのハイイールド社債(ジャンク債)だ。

現在、その米国のハイイールド社債市場は堅調であり、取り立てて問題はないように見える。しかし、やや不思議であるのは、より信用力が高い投資適格社債が調整色を示しているなかで、ハイイールド社債市場は安定を維持している点だ。

米ハイイールド社債のスプレッド(米国債との利回り格差)は、リーマン・ショック後の最低水準にまで下がっているが、過去2回の経済回復最終局面での最低水準ほどには下がっていない。この点からは、ハイイールド社債市場の過熱感、投資家のリスクテイクの程度は、それほど深刻な状況には至っていないようにも見える。他方で、投資適格の中で最も格付けが低いBBB格社債では、昨年にスプレッドが著しく低下した後、年初からは既に25ベーシスポイントも拡大している(注1)。

ハイイールド社債とBBB格社債との間に見られるこうした乖離は、それぞれを構成する社債の質が変化していることを反映していると考えられる。ハイイールド社債の中で、シングルB、Cなど格付けが最低水準の社債は減少する一方、信用力は低いがぎりぎり投資適格となった社債の発行がBBB格社債市場で増えているのである。

企業は自社の社債が投機的格付けとならない範囲を計算しつつ、資金借り入れを行っている。投機的格付けとなれば、借り入れコストの急増につながるためだ。欧州では、こうした傾向がより強い。それは、欧州中央銀行(ECB)が社債の買い入れ対象を投資適格に限定していることで、投資適格と投機適格の間における金利水準の乖離が拡大し、企業は投資適格の社債を発行する動機を著しく強めたためである。

米インターコンチネンタル取引所(ICE)のデータによれば、2007年の時点で社債全体の中でBBB格の占める比率は26%、ユーロ圏では20%にとどまっていた。ところが、米国ではその比率は今年夏に初めて40%を超えた。欧州ではさらに高い水準だ。


BBB格社債市場にリスクに注目

こうした点を踏まえると、ハイイールド社債の指標性はかつてよりも低下しており、投資適格の中で最も投機的格付けに近い社債の動きにより注目する必要があるだろう。その観点からは、既に市場調整の黄色信号は示されていると言えるのかもしれない。また、注意したいのは、ひとたび景気情勢が悪化すると、BBB格の社債の中からハイイールド社債に格下げされるものが急増する可能性が高いということだ。それは、市場全体の調整を加速させ、投資家に大きな損失をもたらすだろう。

日本においては、地域銀行が、債務者区分でぎりぎり不良債権に入らない正常債権最下位の企業向け融資を増やしている。いわゆるミドルリスク融資である。このもとで、景気情勢が悪化した際には、こうした貸出は不良債権に再区分されるようになり、予想外の規模で不良債権の増加と信用コストの増加を生じさせ、銀行の財務リスクを一気に高めてしまう可能性がある。表面的な債務者区だけをみていると、金融システムのリスクを見落としてしまう。

これと同様に、現在、安定しているハイイールド社債だけを見ていては、社債市場全体に積み上がった潜在的なリスクを見落としてしまう可能性があるだろう。少なくとも現状では、ハイイールド社債ではなくBBB格社債をより注目しておく必要がある。国際通貨基金(IMF)もすでに昨年から、BBB格の社債の発行比率が高まっていることは、投資家が保有する社債の信用リスクが高まっていることを意味するとして、強い警鐘を鳴らしている。


(注1)"There Have Never Been So Many Bonds That Are Almost Junk", Wall Street Journal, September 21, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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