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EUの著作権保護強化で米ネット企業に負担

2018年09月14日

EU改正著作権法でネット企業に著作権使用料を義務づける

欧州連合(EU)の欧州議会は9月12日、EU著作権指令の修正指令案を可決、承認した。2019年1月に行われる最終投票によって、改正著作権指令が成立する見込みだ。その後、加盟国による承認を得て改正著作権法が正式に成立し、EU加盟国で施行される。

欧州委員会がEU改正著作権法の原案を提示したのが、ちょうど2年前の2016年9月だった。それは、2020年までに完成を目指す「デジタル単一市場」計画の一環だ。そこから賛成派、反対派の激しい論戦を経て、ようやく今回成立する見込みとなった。

米グーグルや米フェイスブックなど大手ネット企業を明らかに標的にしたこの改正案では、2つの点が注目されている。その第1は、グーグルニュースなどのニュースキュレーションサービスが、インターネット上で報道機関の記事にリンクを張る場合、報道機関がその対価を求めることができる、というものだ。これは通称「リンク税」とも呼ばれている。ただし、数語であれば無料で使用できる。米フェイスブックなどが音楽や映像作品などを流す場合にも、その著作権者に使用料の支払いが義務づけられる。


ネット企業が著作権侵害対策を求められる

第2は、「ユーチューブ」などを念頭に、著作権を侵害する違法ビデオなどの投稿については、投稿する利用者ではなく、サイトを運営するネット企業にそれを防ぐ責任があることを明示し、削除を義務付けている。ただし、小規模企業は免除される。

別途、欧州委員会は、ネット上でテロ行為をあおるような内容のコンテンツに関しても、当局の要請から1時間以内に削除することをネット企業に求める新規制を提案している。違反すれば、世界年間売り上げの最大4%を制裁金として課すとされる。

現在の規定のもとでは、「ユーチューブ」などの動画では、著作権侵害の訴えが著作者側からあった場合にのみ、その動画を削除することが運営者に求められている(ノーティス・アンド・テイクダウン方式)。他方、改正著作権法のもとでは、運営者が、利用者が投稿したすべての動画が著作権侵害していないかをチェックし、著作者から訴えられる前に動画を削除する自動機能をつけることが求められる。しかし、「ユーチューブ」が既に一部で実装しているこの機能のもとでは、問題のないホームビデオも削除されることがあり、批判を招いている。


大手ネット企業に負担も独占を強化させる可能性

改正著作権法については、IT企業やネット利用者らは、「表現の自由を脅かす」などと強く反対した。他方、通信社や音楽家などは、報道機関のサイトにただ乗りしてネット企業が巨利を得ている現状を「コンテンツと広告収入の収奪」と強く批判し、「ネット企業は著作者に利益を還元すべきだ」などと主張して、意見は大きく分かれていた。元ビートルズのポール・マッカートニー氏らも、音楽がネット上で無断配信され、アーティスト側の利益が奪われているとして、規制強化を求めていた。

改正著作権法が成立すれば、大手ネット企業には大きな負担が生じることが避けられない。しかし、そうした負担に耐えられる巨大企業だけがサービスを提供することができ、中小企業やスタートアップは市場に参入できないという構造的な格差が生まれ、イノベーションを阻害することにもつながる、との指摘もなされてきた。それに応えて、報道機関に対するコンテンツ使用料支払いについても、著作権を侵害する違法ビデオなどの投稿削除についても、小規模企業は免除されることになった。

それでもなお、こうした規制が、新規参入の障壁を高めることになる可能性は十分にあり、その場合、プラットフォーマーとも呼ばれる大手ネット企業の独占をより強化することに繋がる可能性もあるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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