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ECB次期総裁レースでワイトマン後退

2018年08月28日

ECB次期総裁にワイトマン就任の可能性が低下か

来年10月に8年の任期を終える欧州中央銀行(ECB)ドラギ総裁の後任として、ワイトマン・ドイツ連銀総裁が最有力と考えられてきたが、その可能性が低下しているようだ。ドイツ政府高官によればメルケル首相は、同じく来年秋に任期切れを迎えるユンケル欧州委員長の後任にドイツ人を充てることがより重要と考えているという。

タカ派として知られるワイトマン氏が指名されることには、フランスやイタリアは否定的だが、フランスに欧州委員長のポストを渡す一方、ドイツはECB総裁のポストを得るという駆け引きがなされるとの見方が従来からなされてきた。今年2月にECB副総裁にスペインのルイス・デギンドス経済相が決まり、南欧出身者が副総裁ポストを得たことで、ドラギ総裁の後任は北部欧州から選ばれるとの見方が強まった。その最有力候補とされたのが、ワイトマン・ドイツ連銀総裁だ。

ECB総裁は、初代がオランダのドイセンベルク氏、次がフランスのトリシェ氏で、3番目のドラギ氏はイタリア出身だ。欧州最大の経済大国ドイツがECB総裁職を未だ得ていないことも、ワイトマン氏の次期総裁就任に有利と考えられてきた理由の一つだ。

しかし報道されているように、メルケル首相が欧州委員長のポストをドイツが得ることを優先するならば、ワイトマン氏が総裁職を得る可能性は後退したと言えるだろう。


総裁人事がECBの政策に与える影響は当面大きくない

メルケル首相が欧州委員長のポストを重視する姿勢に転じたのだとすれば、その背景には、米国との貿易問題が深刻化するなか、欧州連合(EU)の貿易政策に大きな影響力を持つ欧州委員長のポストの重要性がにわかに高まったことが考えられるだろう。他方で、ECBの金融政策は既に正常化の方向に大きく舵が切られたことで、その金融政策運営に関するドイツの関心がやや低下している可能性も考えられる。また、タカ派のワイトマン氏の総裁就任に関して、フランスや南欧諸国の反対が依然として強いことから、メルケル首相が戦略を変えた可能性もあるかもしれない。

既に金融政策の方向転換は定まっていることから、ワイトマン氏が総裁職を得るか否かで当面の政策が大きく変わることもないだろう。そのため、今回の観測が金融市場に与える影響もそれほど大きなものではないのではないか。


EUは選挙の季節に

ドイツのハンデルスブラット紙は、メルケル首相の腹心で経済相のアルトマイアー氏が、新欧州委員長の候補と報じている。それ以外にも、ライエン国防相や欧州会議で最大議席を占める中道右派の党首ウェーバー氏も候補としている。

他方、ワイトマン氏に代わってECB総裁の候補として名が挙がっているのは、リーカネン前フィンランド中銀総裁、レーン現フィンランド中銀総裁、クノット・オランダ中銀総裁、ガロ・フランス中銀総裁、クーレECB理事、ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事などだ。ドイツとフランスが欧州委員会委員長とECB総裁のポストを分け合う形となるのであれば、最後のフランス人3人が有力候補となるのかもしれない。

来年末にはEU大統領(欧州理事会議長)も任期を終える。主要ポストが一斉に入れ替わることから、各国間での駆け引きが本格化する、いわゆる選挙の季節をEUは迎えている。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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