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いよいよ日米通商協議が始まる

2018年08月07日

交渉相手は対日強硬派

日米の新たな通商協議「FFR」の初会合が、8月9日にワシントンで始まる。交渉を担当するのは、日本側は茂木経済再生相、米国側は米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表だ。ライトハイザー代表は対中強硬派として知られているが、対日強硬派でもあり、日本は今後防戦を強いられる展開が避けられないだろう。

日本政府は、2017年年初のトランプ政権発足直後の日米首脳会談の際、麻生副総理とペンス米国副大統領の間の「日米経済対話」で、両国の貿易問題などを広く議論する枠組みを日本側から提案し、作った。保護主義的な傾向が強いトランプ大統領を直接の交渉相手から外し、やや不慣れなペンス米国副大統領を交渉相手とすることで、米国政府からの強い攻撃をかわし、時間を稼ぐことを日本側は目論んでいた。

しかし議論がかみ合わないまま、この枠組みは自然消滅し、今度は米政府側からの要請も受け入れる形で、新たな日米通商協議「FFR」の枠組みが作られた。形式的にはこれは、「日米経済対話」の下部組織という位置づけだ。交渉相手が対日強硬派のライトハイザー代表であることから、「日米経済対話」のような緩い交渉ではなくなる。


いずれ日米FTA交渉は避けられないか

今回日本側が米国側に要請するのは、①トランプ政権が現在検討している自動車及び自動車部品への25%の追加関税導入の翻意、②米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に復帰すること、の2つである。他方米国側からは、日米自由貿易協定(FTA)交渉を要求してくる可能性が高い。

日本側が米国にTPP復帰を呼び掛けるのは、米国を2国間から多国間の交渉に誘導し、日米FTA交渉の要求をかわす意図が強い。日本政府は、米国が脱退したTPPで合意した内容よりも悪い条件は受け入れられないとしている。しかし米国は、前政権が合意した内容よりも米国側にかなり有利な条件に修正されなければ復帰しない考えだ。

さらにTPP加盟国の中には、米国がTPPに参加しなかったことを喜んでいる国もある。他の加盟国への農産物輸出で米国よりも関税が低い分有利となるためだ。そうした国々が、米国が要求する条件で米国のTPP復帰を認めるとは思えない。加盟国全体が同意しないと新たな加盟は認められないルールであることを踏まえれば、米国のTPP復帰はおよそ現実的ではない。そのため、日本はいずれ米国からの日米FTA交渉の要求を受け入れざるを得なくなるだろう。


今回は、農産物で関税引き下げを求めてくるか

日米FTAを視野に入れて米国側が日本側への攻撃の標的とするのは、自動車と牛肉・農産物だ。自動車については、日本から米国への自動車輸出の自主規制と米国車の輸入拡大だろう。しかし米国の自動車及び部品輸入については、現在追加関税を検討している最中であるため、それが決着するまでは本格的な議論は始まらないのではないか。可能性としては、米国からの輸入拡大を阻んでいると米国側が考える、日本の認証制度などの非関税障壁が議論される可能性がある。

さらに米国側が日本の農産物、牛肉の関税引き下げを要求してくることも考えられるだろう。


日本は米国のインフラ投資に協力する姿勢

他方で日本政府は、トランプ政権が目指している米国内でのインフラ投資に協力する姿勢を見せて、米国からの攻撃をかわす戦略をとることも考えられる。8月3日の日本経済新聞が報じたところでは、日本政府は、主に米国を念頭に、海外でのインフラ整備などに投資をする新しい基金、政府系ファンドを作る検討に入ったという。これは米国側に歓迎される可能性は高いだろう。

いずれにしても、今回は初回の会合であり、具体的な議論はなされないかもしれないが、米国側がどの程度強い姿勢で日本との交渉に臨んでくるのか、感触をつかむことはできるだろう。それは今後長期化する可能性が高い、日米貿易問題の深刻度合いを測る、試金石ともなるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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