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米中貿易戦争のもとで高まるアップル社の憂鬱

2018年07月27日

米中貿易戦争はアップル社に大きな懸念

米国のアップル社は、カリフォルニアでiPhoneの開発を行い、中国で組み立て、また米国に逆輸入して販売している。貿易戦争の真っ只中にある米国と中国の2つの国に跨がるグローバル・バリューチェーンを持っており、貿易戦争による被害を非常に警戒している代表的な米国企業の一つが、このアップル社だ(注) 。こうしたグローバル・バリューチェーンが、今までは同社の競争力の源泉の一つであったが、米中貿易戦争が激化すれば、むしろ弱みに転じてしまうだろう。


iPhoneの生産・販売規制は中国にも打撃

中国は、iPhoneの販売先としては米国に次ぐ大きな市場である。貿易戦争が激化するなか、仮に中国当局がその生産や販売を制限する措置をとれば、アップル社にとっては大きな痛手となる。他方でそれは中国経済にも打撃となって跳ね返るのである。アップル社は中国で約1万人を雇用している。関連する雇用全体では3百万人程度にも及ぶという。また中国政府はiPhoneに16%の増値税(付加価値税)を課している。中国当局がiPhoneの生産、販売を制限する、あるいは不買運動を促せば、中国での雇用や税収にも損失が生じるのである。


スマートフォンもいずれ制裁関税の対象に

一方、米国が2017年に中国から輸入した品目で最も金額が大きかったのが、携帯電話の704億ドルだった。この中には中国で作られたiPhoneも含まれていることから、トランプ政権が中国への制裁関税対象を広げていけば、米国で販売されるiPhoneの価格も上昇し、米国消費者から不評を買うことになる。

こうした点に配慮して、中国への制裁関税を決めた500億ドルのうち、7月6日に実施された340億ドル分では、スマートフォンは関税対象から外された。また8月にも実施が見込まれる残り160億ドル分にも、スマートフォンは含まれていない。さらに7月10日に発表された2,000億ドルの制裁関税の対象リストにも、スマートフォンは含まれていなかった。

しかしトランプ政権は、中国側の出方次第では、5,000億ドルに及ぶ中国からの輸入品の全体を制裁関税の対象とする考えも示している。この場合には、iPhoneもその対象となり、米国市場での販売価格は上昇することになる。


米中への生産・販売拠点の集中が弱点に

アップル社のティム・クックCEO(最高経営責任者)は、4月にホワイトハウスを訪ね、トランプ政権の制裁関税政策は、貿易問題を解決する正しい手段ではないと主張したという。

米国と中国の2つの国に跨がるグローバル・バリューチェーンを持っている一方で、iPhoneの生産拠点と販売拠点が中国と米国に集中し、他地域への分散が十分に進んでいないアップル社にとって、米中貿易戦争の行方は大きな不安に満ちている。


(注)“Apple Is Vulnerable in U.S.-China Dispute”, Wall Street Journal, July 25, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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