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アリペイらに100%の中銀準備預金を義務付け

2018年07月25日

アリペイなどへの規制強化

アリペイ、WeChatペイといった中国の第3者決済プラットフォーマーに対して中国人民銀行(中央銀行)は、そのサービスを利用するために顧客が持っている勘定の一定額を、民間銀行と同様に中銀準備預金に積んで置くおくことを義務付けている。

従来はその割合は顧客勘定の50%であったが、2019年1月14日までに100%まで引き上げるという新たな規制強化策が、このほど発表された。この措置によって、アリペイ、WeChatペイは10億ドル相当の利益を失うという。

顧客の余剰資金を運用できた

2017年の中国のモバイル決済は109兆人民元、16兆ドルに及んでいる。それを担っているのが、アリペイ、WeChatペイといった中国の第3者決済プラットフォーマーである。

アリペイの利用者の場合には、アリペイが指定する銀行に口座を持ち、さらにその銀行にアリペイの決済を利用できる特別な口座(アリペイ口座)を持って、銀行口座からそこに資金を移しておく(チャージ)ことで、アリペイの決済サービスを利用することができる。また口座の余剰資金を、投信の購入などに充てることもできる。

ところでアリペイは、顧客のアリペイ口座にある余剰資金を使って独自に資金運用をすることが可能であった。これは、銀行が顧客から預かった預金を基に、資産運用や貸出を行うのにも似ている。しかし銀行預金との大きな違いは、銀行は預金者に金利を支払うが、アリペイは利用者に対して金利を払わないことである。

利用者はアリペイが提供するほとんどの決済サービスを無料で受けられるが、その理由は、決済に伴う情報をアリペイが活用することを許しているためである。さらにこのアリペイ口座の運用も、無料サービスを支えてきたと見られる。

利用者保護の観点から100%の中銀準備預金を義務化へ

しかしそれでは、アリペイの経営が揺らいだ際には顧客資産が保全されない可能性が生じるため、主に利用者保護の観点から人民銀行は、民間銀行と同様にアリペイなど第3者決済プラットフォーマーに対しても、顧客がアリペイ口座に持つ資金の一部に相当する金額を中銀準備預金に積むことを求めたのである。2017年1月にその制度が導入され、第3者決済プラットフォーマーは顧客勘定の20%を無利子の中銀準備預金に積んで置くことを求められた。

そして今年4月には、その準備率は50%にまで引上げられ、さらに今回、2019年1月14日までに100%まで引き上げることが求められたのである。今まで第3者決済プラットフォーマーは顧客勘定を主に銀行預金で運用していた。WeChatペイを運営するテンセントの場合、2017年には顧客勘定の運用で39億人民元を稼いでいた。その運用利回りは1.7%程度であったという。

今回の規制強化に対してアリペイは、既に対応を終えたと説明しており、テンセントも対応を進めているという。

第三者決済プラットフォーマーに対する各国中央銀行の対応

銀行ではない企業が提供する決済サービスの拡大に対して、中央銀行がどのように関与していくべきかについては、中国に限らず各国中央銀行の共通の課題となっている。

第三者決済プラットフォーマーを通じた資金の動きは、中央銀行の決済システムを経由しないことから、マネー・ロンダリング(資金洗浄)に利用されても分からないといった問題点も、中央銀行の共通の関心事となっている。その上で、既に小口決済に大きな影響を与えているこうしたサービスに対しては、その決済の安定性確保という観点から、中央銀行が何をすべきかという議論が広くなされてきたのである。

イングランド銀行(BOE)は、2017年5月に公表した報告書で、非銀行の決済サービス業者に対して、中銀口座を保有すること、中銀決済システムに直接参加することを認める考えを示した。非銀行の決済サービス業者を既存の中央銀行の決済制度の中に取り込むことで、それに対する監視を強化するともに、決済の安定性を確保することを狙っているのである。

今回の中国人民銀行による規制強化の例もそうだが、決済を担う第三者プラットフォームも銀行と同じ制度、規制の枠組の中に取り込んでいくことで、利用者保護やマネー・ロンダリング対策などを強化していくという方向が、世界的に大きな潮流になってきたのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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