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仮想通貨は有価証券ではない:SECが判断を示す

2018年06月21日

イーサリアムは有価証券でないとSECは判断

米証券取引委員会(SEC)の高官が、ICO(新規コイン公開:Initial Coin Offering)はSECの監視下に置かれ有価証券関連法によって規制されるが、仮想通貨で時価総額第2位のイーサリアムは有価証券ではなく、SECの規制が適用されないと発言した。これは仮想通貨市場にとっては久しぶりの好材料である。

こうした発言がでたのは、6月14日に米サンフランシスコで開催された「Yahoo All Markets Summit: Crypto」カンファレンスの場であり、発言したのはSECコーポレートファイナンス部門長のウィリアム・ヒンマン氏だ。

ヒンマン氏は私見と断りながら、時価総額第1位のビットコインも有価証券ではないとした。他の有価証券については言及を避けた。ビットコインは有価証券ではないが、イーサリアムについては不透明、というのが従来SEC関係者らの多数意見であった。今回ヒンマン氏がイーサリアムは有価証券でないという判断を示したことで、少なくとも時価総額第1位のビットコインと第2位のイーサリアムは有価証券でないという判断がSECから事実上示された、と言えるだろう。

中央集権的であるか否かが重要な判断基準

SECが仮想通貨を有価証券と見なすかどうかの判断で、最も重視していると見られているのが、特定の個人やグループがその仮想通貨の創設や取引、価値の向上に深く関わっているか否かであるようだ。株式であれば、特定企業が資金調達のために自社の株式を発行し、またその企業の業績などが、株式の価値に大きく影響する。また企業は自社の企業価値を高めることで、自社株の価格向上を目指す。

この点から、仮想通貨がどの程度、非中央集権的で分散型の仕組みの下で創設され、取引されているかが重要なのである。中央集権的技術(非分散型技術)のもとで取引される場合には、特定の個人やグループの利害が関わってくる。また、特定の個人やグループが、仮想通貨の保有者に何らかの便益を提供するという債務を負っているかどうかも重要だ。株式であれば配当、債券であれば利払いが約束されている。しかし通常の仮想通貨は誰の債務でもなく、その保有者には何の便益の提供も約束されていない。

多くのICOはSECの規制対象

こうした基準に照らせば、ICOで発行するトークンは仮想通貨とは異なる。ICOは特定企業が資金調達を行うための手段である。またその企業の活動が、トークンの価値にも影響を与える。さらにトークンの保有者に対しては、不明確ではあるが将来の企業の技術を利用する権利など、何らかの便益、見返りを提供している。この点から、SECは多くのICOは規制の対象と考えている。

ただしICOに関しても、ヒンマン氏はいくつかのトークンは、投資家がそれを投機目的ではなく私用のために購入する場合には、有価証券というより消費財に近いとし、このようなタイプはゴルフクラブ会員権への投資のようなもので、有価証券の取り扱いとは区別すべきとの認識も示している。

日本ではICOの規制はなお緩い

ところで日本では、金融庁が仮想通貨は証券ではない、との判断をいち早く下している。この点から、今回のSECの判断は金融庁の判断をなぞるものでもある。

ただし金融庁は、ICOで発行するトークンは仮想通貨との判断を示しており、この点がSECの判断と異なっている。それを金融証券取引法の対象としないのであれば、ICOを規制する新たな規制の体系を作る必要があるのだろう。しかし、日本ではICOに関わる詐欺事件が発生していないこともあり、規制強化の動きは明確には見られていない(業界の自主規制ルールはあるが)。

そうしたなか、岡山県西粟倉村は、ICOによる資金調達の実施を決めた。2021年度までの実施を目指しているが、実現すれば国内の自治体としては初めてのこととなる。同村は林業の6次産業化や移住起業支援など独自の地域活性化のために、ICOで調達した資金を活用しようとしている。同村は、まず民間事業体で構成する一般社団法人「西粟倉村トークンエコノミー協会」を設立し、同協会が発行する予定の独自トークン「Nishi Awakura Coin(NAC)」を、投資家は主要仮想通貨のイーサリアムで購入し、村は調達したイーサリウムを現金と交換する。

SECはICOに対する規制を強化する方向にあるが、日本の方がより緩い規制の状態が当面は維持されそうだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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