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米中が報復関税の応酬となれば日本のGDPは1.9%低下

2018年06月19日

米中間での報復関税の応酬に

米政府は6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドル分の中国製品に、25%の追加関税を課すと発表した。これを受けて中国政府は、米国製品に同額の報復関税を課す考えをすぐさま表明した。これに対して米政府は18日に、中国が報復関税を実施すれば、中国からの輸入品2000億ドルに対して10%の追加関税を適用するとして、米通商代表部(USTR)にその対象商品を特定するように指示した。

さらに中国政府は、米国が2000億ドル相当の新たな関税リストを公表すれば、強力な報復措置をとると表明した。これに対して米政府は、中国からの輸入品2000億ドルの追加関税に対して中国政府が再び報復関税を実施する場合には、さらに2000億ドル相当の追加関税を実施するとした。事態は既に、両国間での報復関税の応酬合戦の様相となっている。




米国は中国からの全輸入品に平均10%の追加関税も

両国経済にとって打撃が大きい報復関税の応酬は、最終的には回避され、妥協点が見いだされるものと期待したいが、最悪の事態が生じた場合の両国、世界経済、あるいは日本経済への影響を考えておく必要も出てきたと考えられる。

2017年に米国が中国から輸入した財の総額は5,050億ドルである。このうち3月には、26億ドルの鉄鋼・アルミにそれぞれ25%、10%の追加関税が課せられた。また今回500億ドルの輸入品に25%の追加関税が課せられる方向だ。さらに最悪の場合、合計で4,000億ドルの輸入品に10%の追加関税が課せられる可能性も出てきた。対象となる中国からの輸入品は合計で4,526億ドルと、中国からの輸入品全体の89.6%とほぼ9割にも達する。残り1割には追加関税が課せられないとすれば、中国からの輸入品全体に対する追加関税率の平均は10.5%とほぼ10%となる。

ところで中国は、今まで米国による追加関税措置に対して、同額の米国からの輸入品に同率の追加関税率を適用する方針であった。ところが、米国からの輸入額は2017年で1,300億ドルに過ぎない。このうち500億ドル分については、米国がかける追加関税率25%、残りの800億ドルについては、10%の追加関税率が適用されるとすれば、米国からの輸入品全体に課せられる追加関税率は平均で16%程度となる。

米中欧での10%関税率引き上げは世界のGDPを1.4%押し下げる

経済協力開発機構(OECD)は、2016年11月の世界経済見通しのレポートの中で、米国、欧州、中国の3か国・地域で貿易財の関税率が10%引き上げられた場合の世界経済に与える影響を試算している。これは、2001年に世界貿易機構(WTO)のもとでドーハラウンドが始まって以降の、平均関税率の累積低下幅に相当するという。上記の計算も踏まえて、今回の米中間での報復関税の応酬がもたらす経済効果は、この試算から概算できるだろう。10%の関税引き上げは、WTOのもとで進められた関税率引き下げの取り組みを台無しにしてしまうことを意味する。

3か国・地域で関税率が10%引き上げられる場合、世界のGDPへの影響は-1.4%、米国は-2.2%、欧州は-1.8%、中国は-1.7%である。実は米国のGDPが最も大きな打撃を受けるのである。この点が米政府に理解されれば、より慎重な対応がとられるかもしれない。

日本のGDPは1.9%押し下げられる計算に

ところでこの試算で、世界の輸出、輸入はそれぞれ6%ずつ低下するという結果が示されている。世界の需要が6%低下する際に、日本の実質GDPは1年間で1.9%低下することが、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」で示されている。これは、当事者の米国と中国が受けるGDP押し下げ効果のちょうど中間である。その場合には、日本は景気腰折れとなろう。

このように最悪のケースの場合には、当事者ではないはずの日本経済もこれほど打撃を受けるのだとすれば、いずれは米中間で妥協点が見いだされるというシナリオをメインに据えつつも、両国の報復関税の応酬の行方に金融市場が非常に神経質となるのは当然のことであろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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