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激化する米中貿易摩擦と世界の覇権を巡る両国の争い

2018年06月18日

米中間の貿易摩擦が世界経済のリスクに

一度は沈静化に向かうかに見えた米中間での貿易摩擦が再燃している。米政府は6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した。7月6日に340億ドル分の制裁関税を課し、残りは中国側の出方を見て決める。他方中国政府は、米国製品に同額の報復関税を課すとすぐさま表明した。米国と中国の2大国の貿易摩擦が激化し、報復関税合戦から世界経済に打撃となるリスクが生じている。

問題の本質は世界の覇権を巡る両国の対立

米中間での貿易摩擦問題では、中国側が農産物やエネルギーの輸入拡大に前向きの姿勢を示すことで、妥協点を探る方向に向かっているかに見えた。しかし再び事態が悪化してきた背景には、米中間の対立が単なる貿易不均衡の問題ではなく、世界経済の覇権を巡る両国の対立であることがあろう。

ビッグデータの解析、人工知能(AI)の活用、ロボットなどの最先端分野で、中国が市場の支配を進めることに、米国政府は強い懸念を抱いている。これは、かつて日米間での貿易摩擦問題が、カラーテレビ、自動車、半導体など、その当時の先端分野の貿易財を中心に繰り広げられたのと似ているだろう。

米国政府が中国の先端技術に関して警戒心を強めるきっかけとなったのは、中国が2015年に策定した行動計画「中国製造2025」だった。ここでは、ITやロボットなど10分野を重点的に強化し、10年間で世界トップレベルの「製造強国」に並ぶことを目標としている。

米国は「中国製造2025」の大幅見直しを中国に迫っている。輸入の大幅拡大を通じた貿易不均衡是正については前向きの姿勢を見せている中国も、「中国製造2025」の大幅見直しには応じない姿勢だ。それは、中国を大国にするという中国政府の目標の修正にも関わるためであろう。

ただし中国が農産物に報復関税をかければ、米国から中国への農産物輸出に大きな打撃が及ぶ。中間選挙を睨めば、米政府も国内農家への配慮がより重要になってくる。こうした点を踏まえれば、7月6日までに米国側も態度をやや軟化させ、制裁関税の応酬はなんとか回避される可能性を見ておきたい。

金融市場への影響がより大きなリスクか

しかし米中間の貿間摩擦問題の本質が覇権を巡る両国の対立にあるとすれば、それはかなり長期化することを覚悟する必要があるだろう。両国間の対立が続く中で、中国が財務省証券投資を縮小させる、という脅しのカードを使うことが大きな懸念だ。それは、ドルの下落と共に米国の長期金利上昇を招く可能性がある。米国長期金利の上昇は、広範囲な金融資産価格の調整を引き起こすきっかけとなりかねない。

貿易摩擦問題は、それが直接的に世界経済に与える影響よりも、ドル安、米国長期金利上昇を通じて金融市場に調整をもたらすことを通じた経済への悪影響がより懸念される。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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