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中国からの海外住宅投資の拡大と規制

2018年06月12日

各国で相次ぐ中国を意識した海外からの住宅投資の抑制措置

内外での規制強化の動きにも関わらず、中国国民は海外不動産投資への強い関心を失っていない。従来、中国国民に最も人気があった投資先はオーストラリアとカナダだった。しかし、中国国民による不動産投資の拡大が当地での住宅価格の高騰をもたらし、その結果、繰り返し当局による規制強化を招いてきた(注1)。

近年では、シドニーがあるオーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州が2016年6月に、海外からの不動産投資に4%の課税を行い、またメルボルンがあるビクトリア州が同年7月に海外からの不動産投資への税率を3%から7%へ引上げた。

また2016年7月にはカナダのブリティッシュ・コロンビア州が、海外からの住宅投資に15%の高い課税を導入することを発表した。さらに2017年7月には、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州が税率を8%へと引き上げた。このように、カナダとオーストラリアが競うような形で、中国を意識した海外からの住宅投資の抑制措置が相次いでとられてきた。

ニュージーランドもターゲットに

そうした中、中国国民による新たな住宅投資のターゲットとなったのは、ニュージーランドの首都オークランドだった。オークランドは人口100万人強の比較的小規模な都市であるうえ、寛容な移民政策、海外からの不動産投資に対する緩い規制といった好条件が揃ったことから、中国からの住宅投資の増加を招くようになっていった。

しかし2017年には、中国からの住宅投資の増加の影響を受けた住宅価格の高騰が大きな政治問題へと発展した。住宅価格の高騰は、ニュージーランド人がオークランドで持ち家を所有することを難しくさせていったのである。ニュージーランドでの持ち家比率は40歳未満で約25%と、1951年以来最低水準に達した。同比率は1991年には約50%だった。

中道左派の労働党は、ニュージーランド人が持ち家を取得することを容易にするために、海外からの住宅投資を規制する考えを掲げ、さらに同党が2017年10月に政権に就くと、非居住者が国内の既存の住宅を購入することを禁じる考えを明らかにした。その直後には、規制導入前の駆け込み購入が広く発生した。

中国での海外投資抑制にも抜け道が

中国政府は、人民元安を促すとして、中国企業や国民の海外投資を抑制している。その結果、中国企業による海外不動産投資はかなり抑制されたが、個人については必ずしも強い効果を発揮していない。個人は、年間5万ドルまでしか人民元を外貨に交換できないが、実際には様々な抜け道を使って、海外の住宅を購入している。例えば、国内で超高級腕時計を幾つも購入し、それを海外で外貨に交換したうえで住宅を購入したり、海外に住んでいる親族の名義で住宅を購入したりしているという。

投資先はアジアに

UBSが約3400人の中国在住の中国住民を対象に行った調査によれば、オーストラリアの住宅不動産投資では、前払い金の高さや住宅価格が投資の妨げとなっているという。そのため、オーストラリアの不動産への投資活動は16年にピークを迎えた模様である。

中国国民の間では、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドといった北米、オセアニアの英連邦の国から、日本、タイ、マレーシア、ベトナムなどのアジアの国での不動産投資に次第に関心が移っている。

中国の海外不動産投資ポータルサイト「ジュワイ・ドット・コム」に掲載された物件検索ランキングで、タイは2016年の6位から、2017年上期には3位に浮上した。同社は、「タイの物件は高価でなく手が届きやすい。中国からの購入者は、タイで購入できる都市型マンションとリゾート物件の比較的低価格な贅沢を好む」としている。また「中国からの購入者は、タイでは魅力的な場所にある良い物件を購入でき、それを賃貸に出すこともできるし、将来の価値上昇も期待できると感じている」という。

アジアに比重を移しつつある感の中国国民の海外住宅投資先だが、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドで生じたような住宅価格高騰を各地で生じさせるのか、それを受けて抑制措置がアジア各国でも検討されていくのか、チャイナマネーの行方は、引き続き多くの関心を集めよう。


(注1)"Western Cities Try, and Fail, To Slow Chinese Home Buying", Wall Street Journal, June 7, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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